2010年03月19日

鍼治療でB型肝炎感染

今日こんなニュースを見た。
鍼治療が感染症を広げる - テレグラフ(Acupuncture 'spreading disease' - Telegraph)

以前取り上げた血液サラサラ詐欺によるB型肝炎感染の話と同根の問題である。
幻影随想: 血液サラサラ詐欺の被害者にウイルス性肝炎感染の恐れあり
今日は多少余裕があるので軽く取り上げておこうと思う。
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2010年03月13日

アトピー患者が素人判断でステロイド治療を止めマコモ風呂を始めた場合の最悪のケース

仕事疲れで爆睡して昼過ぎに目を覚ましたら、ツイッターでマコモ風呂の記事が微妙に話題になっていた模様。
良い機会なので、補足エントリを上げておくことにする。

幻影随想: 恐怖のマコモ風呂

私は以前上の記事でこのように書いた。
正常な免疫系を持つ人間ならいざ知らず、免疫力が十分発達していない乳幼児や、免疫力の弱った人間、免疫系に問題を抱えた人間がこんなことをしたら、感染症を引き起こして病院に担ぎ込まれるのがオチである。

そして後日その事例を一つ別の記事で取り上げた。
幻影随想: サギとヤブ医とアトピービジネス
2歳1ヶ月の女児、アトピー性皮膚炎に対しステロイド概要による治療を受けていたが、2ヶ月前から中止、マコモの内服治療を始めたが、2,3日後に顔面と下肢に腫脹をきたし内服を中止した。その後、マコモの入浴剤と軟膏・リンスの外用を続けたが皮疹はさらに増悪し皮膚科を受診した。ほぼ全身に著しい落屑、苔癬を伴う紅斑を認め、紅皮症状態を呈していた。ステロイドの外用を主体とする治療で3週間でほぼ治癒した。マコモ(真菰)Zizania latifoliaは湖沼などの水辺に群生するイネ科の大型多年草で、乾燥し砕断加工したものを内用・外用・入浴剤として使うが、一時刺激性が極めて強くアトピー性皮膚炎に使用するのは疑問である。内服で皮疹の増悪を見ているので中毒疹の可能性もある。
(竹原和彦 他, 民間療法をどう考えるか?, 皮膚臨床 1998;40(6)特:988-92)


今日はもう一例、マコモ風呂を実際に実践している自由診療のクリニックが警告として取り上げている事例を紹介しておこうと思う。
批判者からだけでなく実践者からも同じように警告が出ていることを知れば、自覚無きロシアンルーレッターも少しは減るかもしれないので。
アトピー治療でステロイド離脱、マコモ入浴を自宅で行なう場合の注意 - ナチュラルクリニック21院長ブログ(cache)
※ステロイド離脱 マコモ入浴を自宅で行なう場合の注意

強いステロイド外用を長年使用した方がステロイド外用をやめると急激にアレルギー性の皮膚炎が悪化し、表皮剥離 滲出性変化が生じます。 強いそう痒で不眠 イライラも生じさらにアレルギーが悪化します。その際にマコモ風呂を始めると余計に炎症が強くなりコントロールができなくなる事があります。

また 皮膚炎を爪破する為 強いばい菌感染やヘルペスウイルス感染(カポジー水痘様発疹)が生じ、ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群と呼ばれる重篤な状態に陥る事があり生命に関わってきます

その際には速やかな医学的治療が必要になります。理解のある医師の下でステロイド離脱を行なった方が安心です

まこも風呂を試す時は ステロイド外用をやめることができて皮膚が比較的安定した状態で行なってください。皮膚炎が悪化したらしばらく休んでください。

強調は原文ママ。
こういう警告文が出されるということが、どういう意味かは分かるよな?
実際にここで書かれているような結果になった患者が複数存在するということだ。
元エントリにはそうなった患者の写真も載っているが、なかなかに強烈だぞ。(グロ注意)
 
 

2010年03月10日

サイエンス系ニュースサイトリンク集

ニュースサイトのリンクを更新しました。
以前の分は魚拓をとっているので、差分を知りたい方はどうぞ。
(2010/03/10cache) 幻影随想: サイエンス系ニュースサイトリンク集

最近もっぱらニセ科学批判者としての名前ばかり売れていますが、
私は一応このブログが科学系ニュースブログであると自認しています。
このブログで取り上げたりはてブでブックマークしたりする記事も、基本的には科学ニュース関係の物であり、
このエントリでは私が主な巡回先にしている科学系ニュースサイト群について取り上げます。
特徴は、海外のニュースサイトが大半を占める点ですね。
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posted by 黒影 at 23:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | リンク集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年03月03日

O-リングテストのトリック これであなたも自由自在

結構前の話になるが、以前友人とニセ科学の話をしていたときに、O-リングテストの話になったことがある。
その友人はそういうものは全く信じていないんだが、実際に目の前で見たことがあり、どういう仕組みなのか教えろと聞いてきたのだ。

オーリングテストには幾つか流派があるので全てに当てはまる訳ではないのだけれど、確かにあれにはトリックというか、コツが存在する。
基本的にあれのメカニズムは心理的なものとテクニック的なものの複合的なものなんだが、ぶっちゃけオーリングテストには「必勝法」ともいえるコツがあり、実はそのテクニックさえ知っていれば、誰でも自由自在に外したり外せなくしたり出来る。

それを説明して実際に友人の目の前でやって見せたらえらく感心された。
最近オーリング診療なんてことをやっている問題医師が増えているようなので、ちょっとトリック暴きがてら紹介してみようと思う。
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2010年02月28日

ホメオパシーがようやく英国から追放されそうな件について

ここ2週間ほど忙しくて取り上げている暇が無かったのだが、英国の公的保険からいよいよホメオパシーが完全に追放されることが確定した。

英国議会は「NHSでホメオパシーはもう扱わない」と言う - 食品安全情報blog
http://news.sciencemag.org/scienceinsider/2010/02/-end-homeopathy-on-nhs-say-briti.html?etoc
英国下院科学技術委員会は本日発表した報告書で、ホメオパシーはただのプラセボであり、NHSで提供されるべきではない、と結論した。1948年からNHSでホメオパシーを扱っている。さらに委員会は医薬品安全性担当機関であるMHRAに対し、無作為対照化試験で有効性が示されていないホメオパシー医薬品の薬局での販売承認を中止すべきであると助言した。
この結論は驚くべきことではない。委員会はさらに「ホメオパシーは十分な試験が行われており、ホメオパシーには効果がないというたくさんの根拠がある」と結論してさらなる研究の要請も否定した。

ホメオパシーの効果を否定する証拠は既に山のように積み上がっていたので、この決定はむしろ遅すぎるくらいのものだった。
しかし何もしないよりははるかに良い。英議会GJ。
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2010年02月13日

BioInformaticianを目指す人の為に〜4.今年のバイオインフォマティクス業界の景気状況について〜

少し前に現在就活中の学生さんから、
2007年3〜7月に「BioInformaticianを目指す人の為に」と題して、日本の主要バイオインフォマティクス企業や、バイオインフォマティクスを活かせる企業で働く事の厳しさなどについて記事をお書きになっていましたが、第2、第3世代のシークエンサーが発達していく中で、業界の動向の変化などはございますでしょうか?
もしよろしければ、分かる範囲でお答えいただけると助かります。

とコメントをもらいました。
確かに私が一連の記事を書いたのはもう3年近く前のことになるので、色々と状況は変わってきています。
そこで現在の周辺状況などについて書いてみます。
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posted by 黒影 at 21:46 | Comment(6) | TrackBack(0) | バイオインフォマティクス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年01月26日

かずさアカデミアパークが破綻したらしい

昼休みにニュースを見ていて驚いた。
バイオ研究の拠点、千葉の3セクが再生法申請 : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
かずさアカデミアパーク:民事再生法を申請 バブル期の計画、甘さ露呈 /千葉 - 毎日jp(毎日新聞)
 学術研究と産業育成の一大拠点として県が積極的に誘致を進めてきた「かずさアカデミアパーク」事業で、ホテルなど中核施設を経営する同名の第三セクターが25日、破綻(はたん)した。91年の設立当時からの借金体質を克服できず、ここ数年は県からの貸し付けでどうにかしのいできた。バブル期に立てた県の事業計画の見通しの甘さが今後、県議会などで問われるのは必至だ。【森有正、倉田陶子、斎藤有香】

 県などが出資する第三セクター「かずさアカデミアパーク」の相原茂雄社長は25日、千葉市中央区の県弁護士会館で会見し、「県が来年度以降貸し付けを行わないことになり、民事再生に至った。関係する皆様には誠に申し訳ない」と頭を下げた。民事再生手続き申し立て後もホテルやスポーツ施設の営業を通常通り続け、今後は入札方式でスポンサーを募り、再建を進める。

かずさDNA研究所をはじめとする研究機関に影響が無いのかどうか気にかかる。
posted by 黒影 at 21:46 | Comment(1) | TrackBack(1) | バイオニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年01月25日

血液サラサラ詐欺の被害者にウイルス性肝炎感染の恐れあり

先日apjさんのところで気になる話を取り上げていたので、このブログでも取り上げておこうと思う。
何年か前に話題になっていた血液サラサラ詐欺に関連して、健康被害の可能性を指摘するエントリだ。
【注意喚起】血液サラサラの写真撮影を病院以外でされちゃった方へ :: Archives
最近になって気がかりな話が伝わってきた。血液サラサラの写真を撮るためには、針などでわずかに傷をつくって(耳たぶや指など)血液を採取するといったことをするのだけど、この採血の器具を使い回ししていた業者が居たという話でである。ごくわずかの傷であっても、他人の血液に触れた器具を使うと、感染症の危険、例えばポピュラーなところでは、C型肝炎に感染する危険がある。

 マイナスイオングッズ、及びその他の健康グッズの売り込みを受けた際に、業者に勧められて、医療機関以外で血液サラサラの写真を撮ってもらった覚えのある方は、医師の診断を受けることをお薦めする。
 針等の使い回しをしていた業者が中には混じっていて、「マイナスイオンで健康に」などと言っている間に、C型肝炎に感染させられている可能性が否定できない。C型は放っておくと命に関わるので、早めに発見して手を打たなければならない。他の感染症についても同様である。

一応念のために言っておくと、まだ具体的に犠牲者の存在が判明しているわけではなく、危険性が指摘された段階である。
しかし私の個人的な予測としては、この恐れが現実に起こっている可能性はかなり高いとみている。
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2010年01月22日

インフルエンザのユニバーサルワクチンの開発状況を調べてみた

先日インフルエンザ関連のトンデモを切ったので、そういえばユニバーサルインフルエンザワクチンの開発状況はどうなっているだろうかと気になって調べてみました。

各所で結構話題になっていたから知っている人も多いと思うのですが、ユニバーサルワクチンとは、ウイルスの型によらず一定の効果を見込むことが可能なワクチンで、インフルエンザのような変化の早いウイルスに対しても、一種のワクチンで恒常的な免疫を得ることが期待されます。
このワクチンが実用化されれば、公衆衛生担当者も毎年今年はどの型が流行るだろうかと頭を悩ませずに済みますし、我々も一度のワクチン接種でインフルエンザとおさらば出来ます。
英国でユニバーサル・インフルエンザ・ワクチンのテストが始まった(インフルエンザ) / 科学ニュースあらかると - 新型インフルエンザ,ユニバーサル・ワクチン
ユニバーサルなフル・ワクチン “ACAM-FLU-A”  - 感染症診療の原則

現在複数の企業・機関がこのユニバーサルワクチンの開発を行っており、有力な候補と見られていたのが、
上に紹介した二つの記事で取り上げられているAcambis社とオックスフォード大学のワクチンでした。
・Acambis社のACAM-FLU-A(2008年にphase 2開始)
・オックスフォード大学のユニバーサルワクチン(2008年にphase 1開始)
Universal ‘flu vaccine enters clinical trials | Blog | Futurismic

ここで『でした』と過去形で書いたのは、さっきGoogleNewsで調べてみたら、
この二つを追い抜いて既に新薬出願まで行ったユニバーサルワクチンがあるからです。
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posted by 黒影 at 00:05 | Comment(2) | TrackBack(0) | バイオニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年01月21日

若手研究者の会リンク集

もう結構前の話になるが、事業仕分けのニュースが世間を騒がせていたころに、各地の若手研究者の会が共同声明を出した。
25の若手の会による共同声明 ―知の継承と未来への投資― (若手の会共同声明)

私も生化若手の会にかつて所属していたのでこの動きは応援していたのだが、このサイトの作りで一つ不満がある。
せっかく多数の若手研究者の会をまとめておきながら、このサイトにはリンクの一つもないのだ。
なんてもったいない。

というわけで、勝手ながら名前の挙がっている若手の会のリンク集を作成することにした。
なお、サイト持ちで無いところや団体ではない有志の集まりについては申し訳ないが省かせていただき、
ついでにウェブを検索してめぼしい若手の会をさらに追加して、物化生地のジャンルに分けてみた。
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タグ:サイエンス
posted by 黒影 at 06:00 | Comment(2) | TrackBack(0) | リンク集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする