2006年10月15日

最小のゲノムを持つ細胞の中の異邦人

先日のニュースから。
我々の細胞内に存在するミトコンドリアや植物の葉緑体が、元は独立した微生物だったという事は大抵の人がご存知だろう。大昔、我ら真核生物のご先祖は他の微生物を食い散らかしながら、いつしかその一部と共生関係を確立するに至った。
そしてこのような共生関係は、今も自然界のあちらこちらで現在進行形で起こっている。
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2006年10月12日

ペットクローニング会社潰れる

ほぼ一月半ぶりの更新。
ちょっと仕事だ何だかんだと忙しくしてました。
今日取り上げるニュースはこれ。

Cat-cloning company to close its doors - Yahoo! News
このブログでも以前取り上げたことがあるペットクローニング請負会社、Genetic Saving & Cloning社が、見込んだほどには客が集まらず潰れることになったという話。
家畜のクローニングは既に商業ベースに乗っているから、あるいはペットもと思っていたんですが、どうもそうはいかなかった模様。
実利目当てのブリーディングならともかく、情に関わる問題である擬似的な家族の復活では商売にならなかったというところかな?
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2006年08月05日

ダーウィンフィンチの進化因子が特定される

そんな論文がNatureに出ていて、時事通信が記事にしていた。

ダーウィンの進化論を遺伝子分析で裏付け (時事通信) - goo ニュース
【パリ2日】英国の自然科学者チャールズ・ダーウィンが進化論のアイデアを抱くきっかけになったとされる、ガラパゴス諸島の小鳥ダーウィンフィンチ。英科学誌ネイチャーによると、米国の科学者らが遺伝子的な実験で、ダーウィンフィンチのくちばしの形状が異なる発展を遂げた原因となる物質を明らかにした。

面白いニュースだ。
カルシウムの取り込みに関わるタンパク質、カルモデュリンの発現量がくちばしの形を左右するのか。

ところでこの記事を翻訳した記者は科学用語に詳しくないようで、所々変な翻訳になっている。
さては自動翻訳を使ったな。

上記の引用部分にしたところで、「遺伝子的な実験」は「遺伝学的な実験」だろうし、「原因となる物質」というのは「原因となる因子」とか「原因となる遺伝子」でないと意味がおかしい。
引用はしていないが下のほうにはもっとあからさまな自動翻訳の痕跡がある。

×DNAミクロ配列分析⇒○DNAマイクロアレイ分析
Yahoo翻訳に"DNA micro array analysis"という文字列を放り込んでみよう)


バイオ者としてこういう珍訳はちょっと悲しい。
記事翻訳は正確にな〜

別に自動翻訳が悪いとは言わない(実際私もブログ書くときに良く使うし)
でもYahooやExciteの英和辞書は科学用語に関しては役立たずもいいところだから、
Web辞書を使うならALCLSD(Life science dictionary)あたりを使ってきちんと正確な訳語を把握しないと。
科学記事(それも生化学)の翻訳をするならこの二つは絶対に押さえておくべき。
posted by 黒影 at 03:28 | Comment(0) | TrackBack(1) | バイオニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月13日

イリーナ博士東京公演レポート

さて、先日予告したイリーナ博士の講演会の報告レポートです。
当初の予定よりだいぶ遅れて申し訳ありません。
正直に言うとサイエンスに関わる者としての私はまだ公演内容に怒り狂っているのですが、「怒りは視野を狭くする」ので今回は比較的まともな状態のトンデモウォッチャー的視点を中心に記事を書くことにします。
そんなわけで今回の記事は「トンデモを斬る」よりも「分析する」側面が強くなります。
無論ツッコミは通常運行ですが。
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posted by 黒影 at 03:39 | Comment(44) | TrackBack(3) | バイオニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月08日

目黒で電波浴

例の件で、時間の都合が付いたので目黒に行ってリアル電波浴をして参りました。
時間の関係上イリーナ氏の講演しか聞いていませんが、そりゃあもう凄かったです。

松永さんの記事で触れられた内容だけでも大概ええ加減にせえよという感じでしたが、やはり見ると聞くでは大違い。
あまりの高出力電波に可笑しいやら腹立たしいやら泣けてくるやら。
松永さんらの感じた怒りと絶望が良く分かる一日でした。
マジで洒落にならないレベルの内容だったので、後で詳細報告レポします。
あの毒電波に生協その他が染められることを考えると怖すぎる。

この週末中には記事をまとめますので、乞うご期待。


ちなみに、東京公演は会場での質問不可になってましたw
最初に「今日は質問は出来ません」とあらかじめ念押し。
15分くらい余ってちょっと早めにイリーナ氏の講演が終わったのですが、
とたんに慌てた司会が出てきて質問タイムはありませんと再度念押し。
そしてリリーフの河田センセが登場して時間潰し。
あれは私のような人間が入り込むことを相当に警戒してましたねw


それと…やはり毎日の記者、来てましたw(記者名までは分かりませんでしたが)
あと農業何とか新聞というのも来ていたようです。
明日あたりまた釣られてくれるのかも知れません。


◆関連記事
毎日新聞がまたやってくれちゃっている件について
毎日新聞、またしても遺伝子組み換え作物ネタに踊らされてガセを掴む
posted by 黒影 at 19:49 | Comment(5) | TrackBack(0) | バイオニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月07日

毎日新聞、またしても遺伝子組み換え作物ネタに踊らされてガセを掴む

先日イリーナ博士の来日公演の話を知って以来、毎日新聞ならきっとやってくれるだろうと期待していたわけですが、やはり期待に違わずやってくれました。
◆関連記事:毎日新聞がまたやってくれちゃっている件について

ちょっと調べたらすぐにガセと分かるネタ。
しかもこれを憂慮するまともなNPOが事前に問題点を説明するメディアセミナーまで各地で開くという親切振りだったのに、何でまだ引っかかるのかなぁ?
ILSI Japan バイテク情報普及会 緊急メディアセミナー
正直言うと、既に半年も前のネタで事前に十分な情報が供給されているのだから、さすがの毎日でも今回ばかりは駄目かもしれないと思ってたのに。
今度おごることを条件に友人から手に入れた問題のブツがこちら。
どうもWeb上には出ていないようです。
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posted by 黒影 at 02:42 | Comment(20) | TrackBack(2) | バイオニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月03日

さて、今日は例の記者発表があるわけですが

このネタね。
毎日新聞がまたやってくれちゃっている件について

毎日新聞ならきっと食いついてくれると期待している。
posted by 黒影 at 03:05 | Comment(3) | TrackBack(0) | バイオニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年06月28日

毎日新聞がまたやってくれちゃっている件について

毎日新聞は結構精力的に科学関連のニュースを記事にしており、朝日のように格調高くNatureScienceのネタをというのでなく、生活に即した視点から捉えた記事が多い点には好感が持てる。
しかしその一方でトンデモ科学を好意的に取り上げちゃった記事もまた多いのが困りもので、「ゲーム脳」をはじめとして最近では胎児記憶に関する与太や血管に野菜汁を注射するというトンデモ医療などなど、毎日新聞がやっちゃったトンデモ記事は枚挙に暇がない。
「ゲーム脳」を批判する記事と、その過去が繋ぐ「毎日新聞の記事」::マスコミ関係:不可視型探照灯
メモ:「ゲーム脳」記事を書いた毎日新聞記者の所感::マスコミ関係:不可視型探照灯
胎内記憶:NATROMの日記
ファイトケミカル〜野菜汁を注射して白血球を活性化しよう:NATROMの日記

よく言えば純真な人達が記者をやっているんだろうが、トンデモ科学に対する批判能力を持たない人間、クリティカル・シンキングを満足に出来ない人間が科学記者をやるのってどうなのよ?と思うわけだ。


さて、前置きはこのくらいにして本題に入る。
以前から何度もネタにしているが、「市民派」毎日新聞は遺伝子組み換え作物(GMO)問題においても「市民運動」と密接に連携して動いている。
しかし、やはりというか何というか、やっぱりこの「市民運動」もあんまりまともじゃないのだ。
前から与太記事書いているとは思っていたが、まさか一番トンデモ度の高い所と組んでいたとはなぁ。続きを読む
posted by 黒影 at 02:09 | Comment(16) | TrackBack(1) | バイオニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年06月27日

韓国幹細胞騒動のその後

久しぶりに韓国の幹細胞騒動の話。
今日になってこんなニュースが出ていた。

Yahoo!ニュース - YONHAP NEWS - 黄禹錫氏のES細胞研究、10カ国で特許申請へ
【ソウル27日聯合】黄禹錫(ファン・ウソク)元ソウル大学教授が2004年に科学雑誌サイエンスに論文掲載したヒト胚性幹細胞(ES細胞)研究に関連し、今月中に10カ国・地域で国際特許が申請される見通しだ。黄元教授は2004年と2005年のサイエンス論文をねつ造していたことが発覚し、ソウル大学の教授職を免職されている。
 ソウル大学は27日、「黄教授の後援会が1億2000万ウォン余りの経費を負担し、今月末までに特許出願手続きを終えることを決めた」と明らかにした。出願先は韓国と米国、日本、中国、欧州連合(EU)、豪州、カナダ、インド、ニュージーランド、ブラジルで、当初の計画より6カ国少ない。


二月の時点で既にカルトめいた雰囲気を醸し出していたファン教授の講演会だが、
こりゃ完全に川を渡っちゃったぽいな。
そんな無駄金があるんなら有望な若手研究者にでもくれてやれよ。
ただでさえ日米欧以上にスター研究者にばかり金が集まる構造になってるんだから。

◆関連記事
韓国幹細胞狂騒曲
posted by 黒影 at 21:32 | Comment(0) | TrackBack(1) | バイオニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年06月04日

ヒトとサルはいつ別れたか?

ちょっと前に面白いニュースがあったのだ。
ヒトとチンパンジーの祖先、いったん分岐して交雑? : 科学 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
 「人間の祖先とチンパンジーの祖先は交雑していた」とする研究結果を米ハーバード大などのチームが、18日付の英科学誌ネイチャー電子版で発表する。
 人間の祖先は650〜740万年前ごろ、比較的短期間でチンパンジーの祖先と分かれ、以後は現在の人間に続く道を進化していったというのが定説だ。
 しかし、人間とチンパンジーの全遺伝情報(ゲノム)を比べると、何度も分岐した可能性があり、最初の分岐から最終的に異なる種に分岐したとみられる時期に約400万年の開きがあった。
 このため研究チームは、いったん分岐した人間とチンパンジーの祖先が、長期間にわたり再び交雑、遺伝子の構成も変化したと推定。両者が最終的に異なる種に分岐したのは、定説より100万年以上も新しく、540万年前以降の可能性が高いとしている。

私にとっては別に意外でも何でもないが、チンパンジーの祖先とヒトの祖先がかなりの長期間にわたり交雑していたらしい。
当時はまだどっちも見分けがつかないような状態だったろうし、そりゃこういうことも起こり得るだろう。
最終的に生殖隔離が完全に成立したのが540万年前ということなのかな。

それにしても、「人とサルが共通祖先を持つ」ということにすらあれだけの拒絶反応を示すID論者がこのニュースを見たらどうなるのだろう?
…と、ちょっと意地の悪い興味を覚えてしまった(笑)
渡辺センセとかDIの面々とかはこのニュースをスルーしたのかな?

posted by 黒影 at 13:39 | Comment(6) | TrackBack(1) | バイオニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

第4のドメイン発見?

現在、地球上で発見された生物は大きく3つのグループに分類されている。
生物学では生物種のもっとも大きな区切りのことを「ドメイン(超界):Wiki」と呼ぶので、これ以降私もそれに習う。

・まず1つ目のドメインは我々人間も属する「真核生物:Wiki」のグループ。
 このグループは動物界、植物界、菌界、原生生物界の4つのグループにさらに分かれる。
 このグループの特徴は、核と呼ばれるDNAを収納する構造を細胞内に持っていることである。
・2つ目のドメインは大腸菌などの原核生物が属する「真性細菌:Wiki」というグループ。
 このグループは真核生物とは違いDNAを包む核を持たない。
・3つ目のグループは20年ほど前に発見された「古細菌(始原菌):Wiki」と呼ばれるグループ。
 このグループも真性細菌と同じ原核生物だが、生化学的な性質が大きく違い、100度を超える温泉や強酸性の湖などの極端な環境からの単離報告例が多い。


つい20年ほど前までは、地球上の全ての生物は細胞の核の有無から真核生物と原核生物に分かれると考えられていたわけだ。
しかし古細菌の発見はその固定観念を打ち砕いた。
古細菌の発見は、地球上にはまだまだ我々の知らない古い生物種が存在する可能性を示唆している。

そして今回の発見は、まさにその可能性を裏付けるものだ。
また新たなドメインが一つ追加されることになるかもしれない。

Yahoo!ニュース - 共同通信 - 未知の形態持つ微生物発見 従来の分類当てはまらず
 これまでに知られているどの生物の分類にも当てはまらない、不完全な「核膜」を持つ微生物を東京医大神経生理学講座の小塚芳道兼任講師らの研究グループが、伊豆諸島南方の深海底で31日までに発見した。
 現在すべての生物は、DNAを包んでいる核膜やミトコンドリアなどを細胞内に持つ「真核生物」と、これらを持たない原核生物の「古細菌」「真正細菌」の3つに分類されている。発見された微生物は原核、真核両者の中間的な特徴を持っており、原核生物から真核生物への進化の過程を明らかにするための重要な手掛かりになるという。
 微生物は、明神礁近くの深さ約1300メートルの海底で2000年に採取された泥の中から、ゴカイの仲間のウロコムシに付着している状態で見つかった。

ずっと微生物関係の研究をやってきたから、こういうニュースには胸が躍るね。
地球上にはまだまだ未知の存在が隠されている。
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2006年03月23日

35億年前のメタン生成菌

飛行機の中で日経新聞を読んでいたら隅のほうに小さく載っていたこのニュースが目に止まった。
あいにくとネット上の記事には公開されていないようなので読売の記事で代用させてもらおう。
Yahoo!ニュース - 読売新聞 - 35億年前の地球に生命体?従来より7億年さかのぼる
 最も古い生命体とされるメタン生成菌が約35億年前に存在していたことを示す証拠を、東京工業大学の上野雄一郎助手(地球科学)らが発見した。

 これまでの証拠より約7億年古い。

 メタンガスは、二酸化炭素の約20倍の温暖化効果があり、太古代(25億年以前)に地球の寒冷な気候を緩和し生物が暮らしやすい環境を作ることに貢献していたと考えられる。

 23日付の英科学誌ネイチャーに発表する。

 上野助手らは、西オーストラリア・ピルバラの約35億年前の古い地層で、石英に閉じ込められていた気泡の中に生物が作ったメタンがあることを突き止めた。

 この石英は、熱水が岩盤を上昇し海底に達した時に溶けていた成分が結晶化してできた。炭素には原子量が12と13の2種類があり、生物は軽い12を取り込みやすいため、炭素と水素でできているメタンの炭素を調べると生物が作ったものかどうかがわかる。メタンは海底の熱水中の菌が作ったらしい。

 生命の最も古い痕跡は約38億年前のグリーンランドの堆積(たいせき)岩のものだが、どのような生物が作ったのかわかっていない。上野助手は「昔の地球がどのような気候だったのか考える手がかりになる」と話している。

メタン生成細菌は古細菌(始原菌)と呼ばれる通常のバクテリアとは大きく異なる進化系統に属する生命だ。
古細菌は真核生物とバクテリアの中間的な形質を持っており、原始生命に近い性質を持っていると考えられている。
メタン生成菌は酸素発生型の光合成細菌以前に地球の支配的な地位を占めていた細菌であると予想されており、
温室効果ガスであるメタンの生成により太古の地球の冷却化阻止に寄与していた可能性が高い。続きを読む
posted by 黒影 at 23:00 | Comment(6) | TrackBack(0) | バイオニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年03月01日

韓国幹細胞狂騒曲

とりあえずしばらくはこれ関連の記事を目当てに来る人が多いだろうから、
まとめエントリを作って3月までTOPに上げておくことにする。

10分で分かる韓国の生命倫理問題11/19
 シャッテン博士の告発に始まる倫理問題に関する情報のまとめ(問題の発端)。
 
韓国の生命倫理問題に関する急展開について12/8
 MBCや韓国若手研究者等の告発によるデータ捏造疑惑の発覚。

黄教授による論文データ捏造確定12/10
 データ捏造確定。サイエンス論文上の捏造細胞写真に関するまとめ。
 
DNAフィンガープリントを眺める12/11
 異様なまでのピークの一致を示すDNAフィンガープリントの問題点。 

シャッテン教授逃走。いよいよ事態は最終段階を迎えたか。12/14
 シャッテン教授逃走〜ミズメディ慮理事長の捏造暴露。
 とうとう捏造を隠し切れなくなる。

泥沼の韓国幹細胞騒動12/18
 関係者の発言をつき合わせて捏造の全貌を探る試み。
 サイエンスの論文は2004年、2005年共に完全捏造と言う結論。

幹細胞ハブ落ちた
 中韓発表までの場つなぎ「ロンドン橋落ちた」の替え歌。

ソウル大の捏造認定来ました
 2005年論文が完全捏造だったことを公表するソウル大の公式発表。
 「泥沼の韓国幹細胞騒動」で書いたことと大差なし。

堕ちた韓国の幹細胞研究者1/16
 年明けからこちらのニュースの総まとめ。
 韓国幹細胞研究界は人外魔境に変貌したようです。


時系列でニュースを追うのであれば「EP: end-point 科学に佇む心と身体」さんのところがお勧め。
分かりやすくまとまってます。
韓国ES細胞スキャンダル [ EP: end-point 科学に佇む心と身体]

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2006年01月16日

堕ちた韓国の幹細胞研究者

昨年末には「これでソウル大の発表があって終わりだろう」くらいに気楽に考えていたというのに、
このジェットコースターみたいな急展開は何事?
どこまで落ちれば底につくのやら。

最近週刊化しつつあるこのブログだが、何とか余力のあるうちに年明けからの動きをまとめておく。

今回の目次
◆中間報告(12/28)〜最終報告(1/10)までの動き
 ○世界の反応
 ○執念の黄教授
 ○国家レベルにまで発展した問題
 ○一人で割を食って渋い顔のサイエンス
◆倫理問題の更なる展開
◆ソウル大の最終報告
 ○ソウル大の最終報告まとめ
 ○日本国内メディアの反応
 ○海外メディアの反応
 ○韓国内の反応
 ○捏造の主犯、実行犯
◆その後の展開
 ○最終報告書の詳細
 ○黄教授の反応
 ○人外魔境と化しつつある韓国幹細胞研究

年明けからの簡単な時系列を追うのであれば
EP: end-point 科学に佇む心と身体」さんのところのニュースまとめがお勧め。
『韓国ES細胞スキャンダル:韓流科学の夢の跡2』(12/28〜1/9のニュース)
韓国ES細胞スキャンダル:捏造騒ぎのあとしまつ(1/10〜のニュース)

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2006年01月07日

札幌バイオカフェのご案内

つい先日知ったんだが、北海道経済産業局主催でこんな催し物があるそうな。

バイオカフェ(今、流行のサイエンスカフェのバイオ版)のご案内〜コーヒーを飲みながら、気軽に科学を語り合いませんか〜
 日ごろ敬遠しがちなサイエンスを、コーヒーを飲みながら語り合う「サイエンスカフェ」が、北大をはじめ日本全国の大学、科学館を中心に広がっています。
 「バイオカフェ」とは、そのサイエンスカフェのバイオテクノロジー版です。初めにバイオリンやフルートなどの演奏を行い、生活に密着したバイオテクノロジーに関する話題について、スピーカーの方から30分程度お話をうかがった後、参加者みんなでワイワイガヤガヤと、コーヒーを飲みながら、質問、意見、感想などを言いあったり、話し合ったりします。「バイオカフェ」の主役は、参加者であるみなさんです。
 北海道経済産業局では、NPO法人くらしとバイオプラザ21、及び、NPO法人サッポロ・ビズカフェとの共催で、この「バイオカフェ」を札幌で初めて開催いたします。当日は心和むフルート演奏も行われますので、お気軽に参加ください。
 なお、事前の参加申し込みは不要です。また、出入りも自由で、ドリンク付き(無料)です。

【開催概要】
日時 : 平成18年1月12日(木)15:30〜18:30
場所 : 札幌ビズカフェ(札幌市北区北7条西4丁目5-1伊藤110ビル2階(仲通り入口))
参加対象 : 一般市民(参加費無料)
主催 : 北海道経済産業局NPO法人くらしとバイオプラザ21、NPO法人北海道バイオ産業振興協会NPO法人サッポロ・ビズカフェ
内容及びスケジュール:
◆第一部 15:30〜 フルート演奏、スピーチと話し合い
「酵素の巧妙さ、すごさ」
NPO法人くらしとバイオプラザ21 外山博視 さん
〜休憩〜
◆第二部 17:00〜 フルート演奏、スピーチと話し合い
「国の政策が決まる仕組み(バイオ政策の場合)
〜これを聞くと新聞がよくわかる!」
長崎大学経済学部 嶋野武志 さん


主催団体の一つくらしとバイオプラザ21は私も時々見に行くサイト。
公演内容自体には(一般向けだし)あまり興味がないのだが、どういう人が集まってくるのかに興味がある。
時間が出来たら行ってみようかと思っている。

ちなみに札幌だけではなく東京でも同じような活動をしているので、興味のある人はどうぞ。
バイオカフェ(サイエンスカフェのバイオ版)開催予定
posted by 黒影 at 14:16 | Comment(1) | TrackBack(1) | バイオニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年12月29日

ソウル大の捏造認定来ました

前回のまとめ記事から特に進展があったわけではないのだが、
ようやく公式に2005年の論文を完全捏造と認める報告が出たので記事にしておくことにする。

調査委「患者対応型ES細胞は存在しなかった」
【論文ねつ造】「2・3番幹細胞も患者対応型ではない」
これで2005年の論文で報告された11の幹細胞が全て捏造であった事が明らかにされたわけだ。
まだ公式報告は出ていないが、これは2004年の論文も黒と見て間違いなかろうね。
いよいよもって源泉技術とやらがまったく存在しない可能性が高まってきた。

それにしてもつい先日こんな飛ばし記事を出したばかりだと言うのにこの手の平の返しようといったら…
【論文ねつ造】「解凍培養中の細胞5個、患者のDNAと一致」(27日)

もう何度目かね?この問題でこの手の希望的観測を飛ばし記事にするのは。
偽りの希望に振り回され、そのつど絶望に突き戻される韓国民と難病患者がいと哀れ。

というか日本の技術をパクって独自技術と主張していたらしいね。
黄教授「箸の技術」91年に日ですでに発表

黄教授の凋落を見ていると、なんかイソップ童話を思い出したよ。
とりの王さまえらび」という話。
ある日神様が、鳥の王を決めようと思い立った。
そして鳥の中で一番美しいものを王にするというお触れを出した。
それを聞いた鳥達は競って自分の美しさに磨きをかけたが、
カラスだけは他の鳥たちの落した羽根を拾い集め、自らを飾り立てることで偽りの美しさを手に入れようとした。
そしていよいよ王様を決める日…

韓国の科学者の頂点に登りつめようとしたまさにそのとき、
これまで付いて来た嘘が徹底的に暴かれて地に落ちた彼の姿は、このカラスの姿に重なる。
posted by 黒影 at 14:48 | Comment(12) | TrackBack(2) | バイオニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年12月18日

泥沼の韓国幹細胞騒動

先日捏造仲間のミズメディ病院理事長に切り捨てられてとうとう捏造が白日の元に晒された黄教授。
さすがにこれで黄教授も観念しただろうと思ったのだが、かなり甘かったようだ。

16日から関係者全員で責任の擦り付け合いを始めたばかりか、
小学生のような言い訳まで始める始末。
断片化された情報のピースを丁寧に繋ぎ合わせていくと、
そこから見えてくる図は笑うしかない現実だ。

はっきり言ってもう見てられない。
祝祭日とかそんな能天気なことを言っている場合じゃない。
これ以上韓国科学界の名誉に泥を塗らないうちに誰かさっさと引導を渡してやったほうがいいぞ。
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posted by 黒影 at 07:33 | Comment(157) | TrackBack(4) | バイオニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年12月15日

黄教授捏造を認める−存在しなかったクローンES細胞−

さて、何から書くべきか。
結論から言えばファン教授が捏造を認めた。
結局クローンES細胞は存在しなかった。

というだけで済む話なのだが、他にも見過ごすわけには行かないニュースもあったのだ。

なんせ今日は一時間おきに新しい情報が入ってくるという
目まぐるしい事態の変化があったので、時系列に追って行こう。

ちなみに昨日までの流れはこうだ。
10分で分かる韓国の生命倫理問題
 倫理問題に関するまとめ(問題の発端) 11/19
韓国の生命倫理問題に関する急展開について
 データ捏造疑惑の発覚 12/8
黄教授による論文データ捏造確定
 データ捏造疑惑確定。細胞写真の重複について 12/10
DNAフィンガープリントを眺める
 異様なまでのピークの一致を示すDNAフィンガープリント 12/11
シャッテン教授逃走。いよいよ事態は最終段階を迎えたか。 12/14


今日の流れは予想通りといえば予想通りの展開。
しかしファン教授の捏造自白の陰に隠れて目立たない扱いとなっているが、
今日連鎖誘爆した論文はさらにやばいものを呼び起こすかも知れない。
ミズメディ病院他、ファン教授の周囲の研究者にも大きく疑惑の輪が広がることになるし、
韓国科学界、ひいては韓国社会そのものが疑惑の対象とされるだろう。

ついでにサイエンスもあまり宜しくない立場に追い込まれたし、
引いては世界の幹細胞研究自体がかなりの影響を受けることになる。
科学界のここ10年で最大のスキャンダルだな。続きを読む
posted by 黒影 at 22:10 | Comment(29) | TrackBack(17) | バイオニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年12月14日

シャッテン教授逃走。いよいよ事態は最終段階を迎えたか。

韓国の生命倫理問題に新たな動きが。
初見の人は以下のエントリから概要を把握してください。

10分で分かる韓国の生命倫理問題 倫理問題に関するまとめ(問題の発端)
韓国の生命倫理問題に関する急展開について データ捏造疑惑の発覚
黄教授による論文データ捏造確定 データ捏造疑惑確定。細胞写真の重複について。
DNAフィンガープリントを眺める 異様なまでのピークの一致を示すDNAフィンガープリント。

昨日一日妙に静かだとは思っていたが、まさかこういう展開が待っていようとは。
事態は常に想像の上を行く。
火曜から始まったニュースラッシュはもはやソウル大の検証などどうでも良いといわんばかりの動きだ。
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posted by 黒影 at 02:17 | Comment(10) | TrackBack(3) | バイオニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年12月11日

DNAフィンガープリントを眺める

韓国の幹細胞問題に関する一連のエントリの続き。
経緯は以下のエントリから。
10分で分かる韓国の生命倫理問題 倫理問題に関するまとめ(問題の発端)
韓国の生命倫理問題に関する急展開について データ捏造疑惑の発覚
黄教授による論文データ捏造確定 データ捏造疑惑確定。細胞写真の重複について。


問題のデータの解説の内、国内ではまだDNAフィンガープリントの問題を詳しく解説しているところが無いので書いてみた。
韓国では既に図入りで説明がなされている。
所長 科学者たち "'DNA 指紋分析 結果' 操作された"

簡単な説明用に自己引用。
DNAフィンガープリントとは、DNAをある特定の配列で切断したときにどのような大きさの断片が出来るかを見たものだ。
ヒトは一人一人DNA配列が異なる為、現れる断片のパターンを観察することで細胞の持ち主を特定する事が出来る。
最近では犯罪捜査などにも用いられている方法だ。

さて、問題は別々のサンプルから試料調整されたとは思えないほどのパターンの類似性だ。
ドナーから取った細胞でES細胞を作ったのだから現れるパターンが同じなのは当然なのだが、
この論文のデータはきれいに一致しすぎるのだ。

通常別々の細胞からDNAを採取して、それを制限酵素で切断して解析すると
同じ系統のサンプルであってもノイズや波形などに微妙な違いが出て来る。
それがこの論文のデータではピークの大きさや波形がドナー細胞とそこから造ったES細胞とで非常に似通っている。
物によってはパターンがドナーとESでノイズに至るまで一致とか。
(このあたりの説明は上記の韓国の掲示板で詳しく書いてある)
一つや二つのサンプルでの一致なら偶然で済むが、ほとんどがそうだとなると話は変わってくる。
それは確率的にありえないことだからだ。
幻影随想: 韓国の生命倫理問題に関する急展開について

以下図入りで説明。
続きを読む
posted by 黒影 at 16:26 | Comment(9) | TrackBack(1) | バイオニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする