2008年03月06日

ヒトのメトセラ(長寿)変異発見される?

国内ではまだどこのメディアも取り上げていないっぽいが、先日ヒトの長寿変異遺伝子が特定され、欧米方面では結構話題になっていた。
ハエやマウスでは既に特定されている表現形だが、やはりヒトにも存在したようだ。
'Long-life' genes found in 100-year-old humans - being-human - 03 March 2008 - New Scientist
"Methuselah" Mutation Linked to Longer Life: Scientific American
A type of gene mutation long known to extend the lives of worms, flies and mice also turns up in long-lived humans. Researchers found that among Ashkenazi Jews, those who survived past age 95 were much more likely than their peers to possess one of two similar mutations in the gene for insulinlike growth factor 1 receptor (IGF1R).

The mutations seem to make cells less responsive than normal to insulinlike growth factor 1 (IGF1), a key growth hormone secreted by the liver. In past studies, IGF1 disruption increased the life span of mice by 30 to 40 percent and delayed the onset of age-related diseases in the animals.

記事によると、この長寿を司る変異はインシュリン様成長因子受容体IGF1Rに起こった変異であり、同様の変異を持つマウスは寿命が30〜40%長くなることで知られている。
ヒトでもこの変異を持つ人は、100歳前後まで長生きする場合が多いようで、おそらく長寿変異と見て間違いなかろうと。
寿命を決める遺伝子の探究という点から見ても、非常に興味深い研究成果だと思う。
タグ:サイエンス
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2008年02月27日

生命百科事典の本格稼働のお知らせ

先ほどメールボックスを確認したら、EoLからイベント通知メールが来ていた。
生命百科事典がとうとう本格的に稼働し始めたようだ。
関連記事:Encyclopedia of Life ―生命百科事典の編纂が開始される―

どうもアクセスが集中しているようでやたらと重いが、既にある程度の生物種を検索できるようになっている模様。
詳しい紹介は上記の関連記事を読んでもらうとして、この生命百科事典は、ゆくゆくは180万種の情報を網羅し、小学生から専門家まで幅広い層の人間に利用されることを目的として設計されている。
様々な生物の美麗な写真だけでも一見の価値があるので、興味のある人はぜひ。
私も今週末はEoLを使い倒すことに決めた。
Encyclopedia of Life

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2008年02月26日

1時間で1000億塩基解読可能な次世代シーケンサー

一時間で1000億塩基、ヒトゲノムならわずか4分で解読できるという冗談のようなシーケンサーが、2010年に製品化されるらしい。
記事を読んだ時は思わず自分の目を疑った。シーケンス技術の進歩速度はムーアの法則どころじゃないな。
1時間で1000億塩基読める、
米PacBio社が2010年製品化を発表したDNAシーケンサーが
2月19日のゲノムネットワークシンポでも話題に

 ヒトゲノム2倍体(60億塩基)の塩基配列解読に要する時間はわずか4分間、10倍読んでも1時間足らず──。米Pacific Biosciences社(PacBio社、カリフォルニア州Menlo Park)が、2010年に製品化する計画を表明した超高速1分子DNAシーケンサーが注目を集めている。1時間で1000億塩基という解読能力は、米Helicos BioSciences社が今月初受注したHeliScopeシステムに比べて100倍以上に相当する(関連記事1、関連記事2、BTJジャーナル07年12月号P.8-11)。BTJが先週金曜日(2月15日)夕方に発信した「BTJ /HEADLINE/NEWS 2008/02/15 THE PRIME MAIL 第1099号」にも記載した通り、PacBio社は1月末に成果を論文発表した(Proc Natl Acad Sci USA. 2008 Jan 29;105(4):1176-81.)。


先日紹介した次世代シーケンサーと比べても、解析能力がまさに桁違いだ。
まだきちんと見ていないが、さすがにまだ1000ドルゲノムとはいかないものの、
従来のシーケンサーと比べた場合コストパフォーマンスも段違いに高いようだ。
これはいよいよ「扉が開く」な。


扉が開けばインフォマティシャンも忙しくなる。
なんせ膨大なゲノム情報を自在に取り扱おうと思ったらペタバイト級のストレージ、
テラバイト級の主記憶装置とそれに見合った演算能力を持つ計算機がいるからな。
そこら中で解析システムの更新が始まる。
参考資料(Oracle OpenWorld San Francisco速報)ライフサイエンスを戦略的市場と位置付けるオラクル
ハイパフォーマンスコンピューティングのパワーを生かし、瞬く間にヒトゲノムを解読したセレラ・ジェノミックスは、コンパックコンピュータのAlphaServer上でOracleを走らせ、100テラバイトを超えるデータベースを構築しています。ストレージも提供しているコンパックでは、ゲノムのデータベースは6カ月から8カ月で2倍に膨れ上がると予測しており、これはムーアの法則の2倍にあたります。

セレラ社のベンター博士は、「ゲノムデータだけでも250テラバイト必要で、これが創薬に必要なプロテオーム(たんぱく質)のデータになるとペタバイト級になり、さらに個人のゲノム情報から薬を作ろうとするとエクサバイト級に膨れ上がるだろう」と話しています

無論解析ソフト、データベースやプラットフォームなんかの開発やSIも付いてくる。
おそらく2〜3年後くらいには大波が来る予感。
さあ、面白くなってきた。

◆関連記事
幻影随想: 次世代ゲノムシーケンサの本命は?
幻影随想: Genomic Era ―ゲノム情報の時代―
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2008年02月12日

BT毒素耐性害虫の出現

多分そのうち毎日新聞あたりが報じてくれると思うが、BT毒素に対する耐性を獲得した害虫が出現した。
耐性害虫が出現したのはBT綿花で、ワタキバガという名前通り綿花を食い荒らす害虫だ。
突然変異によりBT毒素に対する耐性を獲得した個体がモニタリングの網に引っ掛かったらしい。

First evidence emerges of pest resistance to GM crops: scientists - Yahoo! News
PARIS (AFP) - Scientists poring over a mass of studies into the response of pests to genetically-modified cotton say they have found the first confirmation that insects have developed resistance to transgenic crops.

University of Arizona entomologists looked at data from six experiments to monitor pests in fields sown with transgenic cotton and corn in Australia, China, Spain and the United States.

They found evidence of genetic mutation among bollworms (Helicoverpa zea) in a dozen cotton fields sown in Mississippi and Arkansas between 2003 and 2006.

現在はアメリカのミシシッピ州とアーカンソー州でしか見つかっていないようだが、今後はこの耐性害虫のコントロールが面倒なことになるだろう。
とりあえず必要となるのは、複数の作用機序の異なるGMをローテーションで栽培したり、既存の農薬と組み合わせて特定のGMに対する耐性害虫のパンデミックを防ぐ栽培マニュアルの浸透か。
地域単位で栽培する品種を揃えないと効果は薄いというのが難点だが、これはまあ農薬と同じ。
GMも農薬と同じで、単一品種で続けていたらこうなるのは当然の理だからな。
問題は、Bt毒素に対する耐性獲得は結構あっさりと起こるらしいという点で、BtコーンやBt大豆の耐性害虫出現も時間の問題だろう。
他の品種の作物でも、早く同じような体制を整えた方がいいな。

それにしても、ほんの10年でもう耐性害虫が出現するとは、何事も魔法の弾丸は無いと嘆息すべきなのか、それとも耐性を獲得する進化のメカニズムに驚嘆すべきなのか。

論文がNatureBiotechnologyから出ているのでリンク
Table of contents : Nature Biotechnology
昆虫のBt作物耐性:証拠と理論
Insect resistance to Bt crops: evidence versus theory - pp199 - 202

Bruce E Tabashnik, Aaron J Gassmann, David W Crowder & Yves Carriére

耐虫性組換え作物の非標的節足動物に対するリスク評価
Assessment of risk of insect-resistant transgenic crops to nontarget arthropods - pp203 - 208

Jörg Romeis, Detlef Bartsch, Franz Bigler, Marco P Candolfi, Marco M C Gielkens, Susan E Hartley, Richard L Hellmich, Joseph E Huesing, Paul C Jepson, Raymond Layton, Hector Quemada, Alan Raybould, Robyn I Rose, Joachim Schiemann, Mark K Sears, Anthony M Shelton, Jeremy Sweet, Zigfridas Vaituzis & Jeffrey D Wolt
posted by 黒影 at 01:54 | Comment(8) | TrackBack(0) | バイオニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年02月02日

1000ゲノムプロジェクト

先週のニュースクリップより。
国内では読売くらいしか取り上げていななかったが、
先週1000ゲノムプロジェクトという国際共同研究プロジェクトが始まった。
このプロジェクトは1000人のゲノムを解読してゲノムレベルの人種差、個人差を明らかにし、表現型との関連を調べてゆくゆくは遺伝病の研究やテーラーメード医療にも生かそうという、ヒトゲノムプロジェクト以来の大型プロジェクトだ。

英米中の研究グループ、ゲノム情報1000人分を解析へ : 科学 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
 同グループによると、1人ひとりの遺伝情報の違いを詳細に調べるのが目的。病気に関連する遺伝型の探索は従来、重い遺伝病を除くと、人口の1割以上に共通するものしか見つけにくかったが、1000人分のゲノムがそろえば、1%の頻度で現れる遺伝型まで発見できると期待している。

 解析には、DNAの一部の特徴に注目して、体質にかかわる違いを調べた「国際ハップマップ計画」の試料を活用する予定。日本人のDNAも含まれる。


この計画に参加した組織は次の3つ。
アメリカ:国立ヒトゲノム研究所(National Human Genome Research Institute
イギリス:サンガー研究所(The Wellcome Trust Sanger Institute
中国:北京ゲノム研究所(Beijing Genomics Institute

この3つの組織のうち前2者はヒトゲノムプロジェクトにおいても中心となって活躍した機関なので、バイオ系の人なら名前は知っているだろう。
しかし北京ゲノム研究所はゲノムプロジェクトに強い関心を持っている人でもない限り、初めて名前を聞いたという人が多いのではないかと思う。

北京ゲノム研究所は1999年に設立され、以来イネゲノム(長粒種)の解読、ニワトリゲノムの解読、中国人ゲノムの解読などかなりの成果を上げて、一躍ゲノム解読のトップチームに躍り出た研究機関である。
元々バラバラな体制でヒトゲノムに参加していたためにプロジェクト終了後はその成果や経験をうまく生かせていない感のある日本と違い、ヒト・モノ・カネの集中投資でゲノムセンターとして完全に基盤を固めたという印象だ。
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次世代ゲノムシーケンサの本命は?

先日の日経バイオビジネスの記事で、次世代ゲノムシーケンサの特集をやっていた。
数年前に実用化されたピロシーケンサ等のことで、一回のランで数千万〜数十億bpの塩基配列を解読可能という、ゲノム解読用のとんでもなく高性能なシーケンサだ。
私は既に実験屋では無くなったけれど、以前は毎日シーケンサに向かっていた時期があり、今の専門であるバイオインフォマティクスにおいてもシーケンサから得られるデータというのは非常に重要な意味を持つので、この分野に対する興味関心は強い。
ウェブを見渡したところあまり情報が無いようなので、ひとつ資料をまとめてみようかと思う。
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2008年01月22日

GMO2.0か

以前書いた以下の記事に関連して、新たなニュースが出ているのでクリップ
幻影随想: 遺伝子組換え作物の世代交代始まる
今現在主流となっているGM作物は、第一世代のGMOです。
第一世代のGM作物は、病害虫耐性や除草剤耐性など、農家側のメリットを主とした改良品種です。
手間=コスト削減による価格競争力はありますが、作物の品質としては従来のものと変わりません。
そして現在研究が進められているのが第二世代のGM作物。
これは味や形をよくしたり、栄養価を高めたりといったような
食品の高付加価値化を進めたGM作物の発展形です。
これから先数年のうちに、第一世代のGM作物は第二世代のGM作物に取って代わられて行くことになります。

大方の予測通り、順調に世代交代が進んでいますな。
2010年ごろにはそれなりのラインナップが揃っているだろう。

「カルシウム吸収41%up」のスーパーニンジン:『GMO 2.0』時代の先駆けか | WIRED VISION
テキサスA&M大学とベイラー医科大学の研究者チームが、遺伝子工学によって新種のニンジンを作り出した。これを30人の成人に摂取させたところ、少なくともこの被験者群においては、カルシウムの吸収率が、通常のニンジンを食べる場合よりも41%上昇したことが明らかになった。

この新しいニンジンの誕生は、遺伝子組み換え作物(GMO)の新時代、いわば『GMO 2.0』の到来を示唆するものかもしれない。これを踏まえ、米Monsanto社や米Syngenta社のようなアグリテック企業は、栄養価を重視する消費者をターゲットにした作物作りを目指している。

この記事を書いたWiredの記者となら、GMの可能性や今後どのような作物が出てくるかについて熱く語れそうだ。
私は「キラーアプリ」になりうる作物は芋か豆のどちらかじゃないかと予想してみる。
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2008年01月18日

バイオ市場二桁成長とは言うものの…

14日付の日経バイオテクに、国内バイオ市場の2007年度売上高が載っていた。記事によると07年度のバイオ関連市場の規模は2兆2992億円に及び、06年度に比べて10.8%の成長率だそうな。
この数字だけを見ると中々の成長ぶりに見えるが、中身をじっくり眺めるとおちおち喜んでもいられない。
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2008年01月17日

精液に含まれるタンパク質がHIVの感染力を劇的に高めるらしい

少し前にScientificAmericanに載っていた記事から。
ヒトの精液中に含まれているあるタンパク質が、HIVの感染力を最大で10万倍も高めるらしい。
Male Semen Makes HIV More Potent: Scientific American
More than 80 percent of human immunodeficiency virus (HIV) infections are transmitted via sexual intercourse. And researchers may have discovered at least one reason why. According to a new study published in Cell, a component of human semen may facilitate the spread of the virus by targeting immune system cells, in some cases making the pathogen up to 100,000 times more virulent.

本来感染力の低いHIVが、性接触を介した場合だけは感染しやすい理由がこれなのだろう。
研究が進んで作用メカニズムが判明すれば、それをターゲットに感染阻害剤の開発もできそうだな。
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2007年10月13日

中国でヒトゲノム解読

中国の研究者らが中国人ゲノムの解読を完了したらしい。

Scientists map Chinese genome, now look at pandas - Yahoo! Newsより
BEIJING (Reuters) - Chinese scientists have worked out the first complete map of the Chinese genome and are now turning their attention to a national treasure -- the giant panda, a Beijing newspaper reported on Friday.

The mapping of the human genome in 2000 opened the door to the detailed analysis of genes, but experts are trying to find out how they interact with lifestyle and environment to determine why some people become sick and others do not.

The Chinese map, drawn up by about 120 scientists in the southern boomtown of Shenzhen, was a "milestone" and a first for Asians, the Beijing News said.

アジア人から初のゲノム完全解読という意味で、結構価値のあるニュースだと思う。
ヒトが終わったので次はパンダだそうな。
まだRecordChinaだけだけど、日本語のニュースも出ているね。
中国人のヒトゲノムを100%解明、遺伝子地図が完成―広東省深セン市(Record China) - Yahoo!ニュース

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2007年10月12日

先日取り上げたゲノム合成のニュースは飛ばしだったらしい

先日取り上げたベンター博士らによる微生物ゲノム人工合成のニュース
幻影随想: Venter博士のチームが細菌ゲノムの人工合成に成功したらしい
についてですが、どうもガーディアン紙の勇み足だったっぽいです。
確かに予想より随分と早いとは思ってたんですが…

EP: end-point」のamasakiさんがカール・ジンマーのブログ記事を訳されているので紹介。
ニュースの件を除いても普通に面白い記事なので、バイオ系の人は必読です。

科学メモ:ベンターの生命合成報はフライング [ EP: end-point 科学に佇む心と身体Pt.2]
 どうもいぶかしいので、クレイグ・ベンターの代理人にメールで問い合わせてみたところ、
 「まだ合成には成功しておりません。数ヶ月はかかる見込みです。
  成功した暁にはしかるべき手続き(ピアレビュー)を経て学術誌に発表いたします」
との回答をもらった。
 デマがらみの情報を、大手のガーディアン誌が流してしまったことは痛い。この情報の真偽を確かめようとする記事を出したのは、知る限りフランスの報道機関一社だけであり、しかもデマを否定していないという…。
 この科学ジャーナリズムのていたらくは何なのだろう。
 来週のクレイグ・ベンターとの対談で、実際の進み具合について尋ねてみるつもりだ。

どうもどっかから漏れたガセネタにガーディアン紙が引っ掛かったようで、実際にはまだ数か月はかかる模様。
私もニュースを真に受けていた一人なので、とりあえずフォロー記事を書いておきます。

ついでに来週の続報に期待してamasakiさんのところにTB。
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2007年10月09日

Venter博士のチームが細菌ゲノムの人工合成に成功したらしい

米セレラ社のVenter博士らが微生物ゲノムの人工合成に成功したらしい。
多分週明けになれば詳しい情報が出てくると思うが、一応メモ。
最近忙しくてろくにニュース追ってなかったからな。
明日は一通りニュースをチェックしないと。
「人工生命体の作成」に成功 … したらしい[UPDATE](バイオテクノロジー) / 科学ニュースあらかると - 人工生命体,Craig・Venter

最近は数10Kbpくらいまでなら何とかDNAの人工合成も可能になっているが、一気にメガbp単位で人工合成か。
多分中身は既存の遺伝子の継ぎはぎなんだろうが、それでもすごいな。

このまま合成生物学分野でもVenter博士の一人勝ちになるんだろうか?

<10/12追記>
どうもこのニュースは飛ばし記事だった疑いが濃厚なようです。
幻影随想: 先日取り上げたゲノム合成のニュースは飛ばしだったらしい
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2007年07月25日

アフリカから来た現生人類

最近のゲノムを元にした研究でほぼ完全に否定された感のある人類の多地域平行進化説だが、解剖学的な証拠もまた積みあがっていっているようだ。
Modern Humans Came Out of Africa, "Definitive" Study Says
We are solely children of Africa—with no Neandertals or island-dwelling "hobbits" in our family tree, according to a new study.

Scientists who compared the skulls and DNA of human remains from around the world say their results point to modern humans (Homo sapiens) having a single origin in Africa.

私は遺伝子解析をやっていた事もあって、以前から単一起源で決まりだろと考えていたが、やはり研究範囲が広がっても他の人類の痕跡は見つからないか。この結論は現生人類が過去にネアンデルタール人あたりと混血児を儲けていた可能性を否定するものではないが、たとえしていたとしても、遺伝子の痕跡が歴史の波間に消え去る程度の規模だったという事だろう。


◆関連記事
幻影随想: 暗礁に乗り上げるヒトDNAデータベース構築計画
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2007年07月19日

人食いバクテリアの季節

夏休みを間近に控えてうきうきしている人に、本当にあった恐い話を一つ。
夏の海に潜む目に見えない殺し屋の話。
Texas man battles flesh-eating bacteria - Yahoo! News
HOUSTON - A Nacogdoches man was in critical but stable condition after three surgeries aimed at saving him from a flesh-eating bacteria that infected him during a swim off the coast of Galveston County.

Steve Gilpatrick, 58, was diagnosed with necrotizing fasciitis, a tissue-destroying disease caused by a bacterium called Vibrio vulnificus, when he took ill three days after swimming during a July 8 fishing trip at Crystal Beach.

Gilpatrick's physician, Dr. David Herndon, the chief of burn services and professor of surgery at the University of Texas Medical Branch in Galveston, said Tuesday the situation is life-threatening because the infection spread to Gilpatrick's blood. Gilpatrick is suffering from multiple organ failure and doctors are trying to save his leg.

テキサス州の男性が人食いバクテリアに感染
ガルベストン郡の海岸で海水浴中に人食いバクテリアに感染したナコドチェス市の男性は、彼の命を救うために行われた三度の手術によって依然危機的状況ながら安定な容体に落ち着いた。

58歳のスティーブ・ギルパトリック氏は、海水浴の三日後、クリスタルビーチでの釣り旅行中に、壊死性筋膜炎すなわちビブリオ・バルニフィカス(Vibrio vulnificus)と呼ばれる細菌が引き起こす組織破壊性疾患と診断された。
ギルパトリックの主治医、ガルヴェストン郡テキサス大学医学部外科の教授であり、火傷治療部門の部長であるデイビッド・ハーンドン博士は、火曜日に次のように述べた。「感染症がギルパトリック氏の血液にまで広がったため、状況は致命的です。ギルパトリック氏は現在多臓器不全で苦しんでおり、我々は何とか彼の足を保存しようとしています」

ビブリオ・バルニフィカスは夏場に活発に活動する海洋性細菌で、免疫系に問題を持つ人間に感染した場合、記事中にあるように壊死性筋膜炎や敗血症を起こしてかなりの確率で死亡する。仮に助かったとしても壊死した手足を切り落とす羽目になったり、深刻な後遺症が残ったりとかなり危険な病原菌だ。

もっとも危険な細菌が生息しているのは主にメキシコ湾岸部なので、日本ではそれほど神経質になる必要は無いし、免疫系の弱い人や肝機能障害を持つ人でなければここまでひどい症状になることも無い。
感染を避けるためには、
・不衛生な海で泳がない
・怪我をしたときは傷口を海水に浸けない
・体調が悪いときは海に入る事を控える
などの点に注意する必要がある。
海に行く方はご注意を。

ビブリオ・バルニフィカス感染症について
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2007年07月15日

氷漬けのマンモスから遺伝子解読を試みる

週末のニュースを忘れぬうちに取り上げておく。
非常に保存状態が良かったようなので、今度こそマンモスの遺伝子解読が可能になるかもしれない。
Yahoo!ニュース - ロイター - マンモスの赤ちゃん、遺伝子情報の解読に道開く
 [モスクワ 11日 ロイター] ロシアの研究者は11日、永久凍土から凍ったまま発見された生後約半年の雌のマンモスについて、氷河期に絶滅した同種の遺伝子情報解読に絶好の機会になるとの見方を示した。
 ロシア科学アカデミー動物学研究所のアレクセイ・チホノフ副所長は、ロイターの電話取材に対し、このマンモスの保存状態が完璧だったと説明。組織検体を調べることで、マンモスの最終的な遺伝子情報の解読につながる可能性があると語った。
 このマンモスは、ことし5月に同国ヤマル半島でトナカイの飼育者が発見。発見者の妻の名前を取って「リューバ」と名付けられた。
 「リューバ」は体重50キロ、体高85センチ、全長130センチと、大型犬とほぼ同じサイズ。チホノフ副所長によると、最長で4万年にわたって永久凍土の中で保存されていたという。

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2007年07月11日

干からびても水をやれば生き返る植物を作る?

以前チラッと言及していたネタが、とうとう実用化に向けて一歩前進したらしい。
めでたいことだ。
幻影随想: 植物の乾燥耐性遺伝子の実用化
また、生物の乾燥耐性機構としては他に、体内に多量の多糖類を貯えることで生体分子を保護する方法もある。
多糖によって細胞を乾燥から保護する生物は多く、ある種のユスリカの幼虫など、完全に乾燥し、ミイラ化した状態からでも水を与えれば再びよみがえるほどだ。


Yahoo!ニュース - 読売新聞 - 乾燥に強い作物に期待、保湿効果糖類を取り込む遺伝子発見
保湿効果などで注目される糖類「トレハロース」を細胞内に取り込む遺伝子を、農業生物資源研究所(茨城県つくば市)の黄川田(きかわだ)隆洋・主任研究員らが、世界で初めて発見した。

 トレハロースは細胞を乾燥から守る働きがあり、見つかった遺伝子を組み込むことで、切り花の花持ちをよくしたり乾燥に強い作物を作り出したりすることができると期待される。

 トレハロースは人間など哺乳(ほにゅう)類は合成できないが、昆虫やキノコ、酵母など幅広い生物が合成して利用している。例えばネムリユスリカという昆虫は、乾燥した状態になってもトレハロースの働きで生き延びることができる。


というわけで農業生物資源研究所のプレスリリースとPNASの論文をゲット。
農業生物資源研究所 - プレスリリース - 生物の極限耐性のメカニズムに重要な役割を担う遺伝子の単離に世界で初めて成功
農業生物資源研究所 - プレスリリース - 生物の極限耐性のメカニズムに重要な役割を担う遺伝子の単離に世界で初めて成功

Trehalose transporter 1, a facilitated and high-capacity trehalose transporter, allows exogenous trehalose uptake into cells -- Kikawada et al., 10.1073/pnas.0702538104 -- Proceedings of the National Academy of Sciences

やはり次はメダカなりシロイヌナズナなりにこの遺伝子を導入してクリプトビオシス(乾燥仮死)状態を取れるかどうか試すのだろうか。
最終的には作物の乾燥耐性に利用する方向に持っていくのだろうけれど、観葉植物のGMを作ったら、ずぼらで水遣りを忘れるタイプの人にいいかも知れない。
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植物の光合成効率を上げてやる

随分前から理論的な研究はされていたけど、実用化に成功したんだ。
Yahoo!ニュース - フジサンケイ ビジネスアイ - 日大、光合成を3割増強する手法開発 バイオエネ応用期待
 日本大学生物資源科学部(神奈川県藤沢市)の奥(おく)忠武教授らは9日、植物の光合成の能力を3割増強し、植物を大きく育てられる手法の開発に成功したと発表した。植物を効率よく栽培できるため、バイオマス(生物資源)エネルギーや食糧の増産、栄養分の高い作物の生産への応用が期待でき、二酸化炭素の吸収量拡大で地球温暖化の防止にもつながる。奥教授らは、“人工光合成”である太陽電池への応用などの可能性も期待できるとみている。

開発元は日本大学生物資源科学部の奥忠武教授のチーム。
研究室のHPはこちら>生物有機化学研究室

 奥教授らは、陸上植物が進化の過程で失った電子伝達分子「シトクロム」に着目。現在の植物は太陽光からATPを作る際、植物に残っている電子伝達物質「プラストシアニン」しか利用していない。下等植物の「すしのり」が持つシトクロムの遺伝子をシロイヌナズナに導入して電子伝達分子を2種類にすると、通常のものより背丈、重量、葉の面積、根の長さなどが3割程度増えた。光合成の明反応能力を示すATPの量も約2倍になった。

光合成効率が上がると植物の成長効率が上がり大型化するようだ。
作物の増収や弱光下の成長も可能となるかもな。
GMOへの応用にはまだしばらくかかりそうだが、いずれこの手のBoosted PlantsがGMOの主流になるのかな?
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2007年07月09日

キシリトールは犬に毒

Yahoo!ニュース - 産経新聞 - 要注意! キシリトール 犬には「毒」
 低カロリーで虫歯の原因になりにくいとされ、人間用の食品では砂糖の代わりに広く使われている甘味料のキシリトール。ところがアメリカ獣医学協会がキシリトールは犬には有害となる危険性を指摘した。日本のペットフードメーカーや小売店などはキシリトールを除いた製品を開発中だが、店頭には依然としてキシリトール含有のペット用菓子類が並ぶ。国内でも中毒症状が起きているとみられ、愛犬家は注意が必要だ。(記野重公)

キシリトールのガムは結構好きなんだが、犬を飼っている人は要注意らしい。
似たような例だと、カフェインやタマネギなんかも良く聞くな。
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2007年07月06日

コレラ毒素やリシンの阻害剤をスクリーニングする

New Scientistから
New antidotes may combat deadliest poisons - health - 04 July 2007 - New Scientist

どちらも似たような作用機序を持つ毒素で、おまけに毒性が強い毒物だ。
タンパク毒ってのは結構厄介なんだよね。
タイトルを見た時は抗毒素抗体でも作ったのかと思ったけど、どうも読んでみたら違ったようだ。
良く考えてみたらどの毒素も抗毒素抗体は既にある罠。
今回報告されている分子は毒素の取り込みを阻害するらしい。

低分子なら化学合成が可能で製薬化しやすいとはいえ、
14400分子のスクリーニングとは、製薬研究は大変だ。
しかしこれでO-157やコレラの犠牲者も少しは減るかな?

リシンやコレラ毒素の作用機序は下記リンクを確認のこと
リシン (毒物) - Wikipedia
コレラ毒素:コレラ菌 - Wikipedia


ところで記事中にはこうあるけれど、
Ricin, cholera toxin and shiga toxin, produced by deadly strains of E. coli, are the stuff of every poisoner's handbook - because there is no antidote.

志賀毒素(ベロ毒素)はともかくリシンは下記ワクチンがあるし、コレラ毒素もついこの前ワクチン米作ってなかったっけ?
なんかちょっと違和感を感じた。


リシンは昨年ワクチンの開発に成功した模様
抗体物語Blog ≫ 抗テロ抗体!?
米研究チーム、リシンのワクチンを開発…効果も確認:生物化学・遺伝子兵器 | 2006-2007
コレラワクチン米の開発はこっちを参照のこと
幻影随想: 遺伝子組換え作物の世代交代始まる
posted by 黒影 at 00:39 | Comment(0) | TrackBack(0) | バイオニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月05日

グリーンピースがGMOでまたマッチポンプをやろうとしている件について

via 食品安全情報blogさん
http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20070704#p5
グリーンピース
遺伝子組み換えトウモロコシMON863の即刻回収を!
グリーンピース食品安全委員会、厚生労働省、農林水産省に要求
2007年7月4日
http://www.greenpeace.or.jp/press/releases/pr20070704_html
よりによってEFSAの再評価の直後にこんな発表。
担当部署に相手にされなくて当然。
ただこれを見るとグリーンピースのやってることがはっきりする。
都合の悪いことは見て見ぬふりして、共同通信とマッチポンプをやってること。
まともな人から見たら、信用度を下げるだけだと思うのだけれど、最早そういう判断すらできないのだろうか?

イリーナおばさんのときにも色々やらかしていたのに、いい加減懲りないのでしょうか?
オオカミ少年メソッドは、使えば使うほど自分の首を絞めるというのに。
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posted by 黒影 at 01:40 | Comment(3) | TrackBack(1) | バイオニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする