2010年01月26日

かずさアカデミアパークが破綻したらしい

昼休みにニュースを見ていて驚いた。
バイオ研究の拠点、千葉の3セクが再生法申請 : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
かずさアカデミアパーク:民事再生法を申請 バブル期の計画、甘さ露呈 /千葉 - 毎日jp(毎日新聞)
 学術研究と産業育成の一大拠点として県が積極的に誘致を進めてきた「かずさアカデミアパーク」事業で、ホテルなど中核施設を経営する同名の第三セクターが25日、破綻(はたん)した。91年の設立当時からの借金体質を克服できず、ここ数年は県からの貸し付けでどうにかしのいできた。バブル期に立てた県の事業計画の見通しの甘さが今後、県議会などで問われるのは必至だ。【森有正、倉田陶子、斎藤有香】

 県などが出資する第三セクター「かずさアカデミアパーク」の相原茂雄社長は25日、千葉市中央区の県弁護士会館で会見し、「県が来年度以降貸し付けを行わないことになり、民事再生に至った。関係する皆様には誠に申し訳ない」と頭を下げた。民事再生手続き申し立て後もホテルやスポーツ施設の営業を通常通り続け、今後は入札方式でスポンサーを募り、再建を進める。

かずさDNA研究所をはじめとする研究機関に影響が無いのかどうか気にかかる。
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2010年01月22日

インフルエンザのユニバーサルワクチンの開発状況を調べてみた

先日インフルエンザ関連のトンデモを切ったので、そういえばユニバーサルインフルエンザワクチンの開発状況はどうなっているだろうかと気になって調べてみました。

各所で結構話題になっていたから知っている人も多いと思うのですが、ユニバーサルワクチンとは、ウイルスの型によらず一定の効果を見込むことが可能なワクチンで、インフルエンザのような変化の早いウイルスに対しても、一種のワクチンで恒常的な免疫を得ることが期待されます。
このワクチンが実用化されれば、公衆衛生担当者も毎年今年はどの型が流行るだろうかと頭を悩ませずに済みますし、我々も一度のワクチン接種でインフルエンザとおさらば出来ます。
英国でユニバーサル・インフルエンザ・ワクチンのテストが始まった(インフルエンザ) / 科学ニュースあらかると - 新型インフルエンザ,ユニバーサル・ワクチン
ユニバーサルなフル・ワクチン “ACAM-FLU-A”  - 感染症診療の原則

現在複数の企業・機関がこのユニバーサルワクチンの開発を行っており、有力な候補と見られていたのが、
上に紹介した二つの記事で取り上げられているAcambis社とオックスフォード大学のワクチンでした。
・Acambis社のACAM-FLU-A(2008年にphase 2開始)
・オックスフォード大学のユニバーサルワクチン(2008年にphase 1開始)
Universal ‘flu vaccine enters clinical trials | Blog | Futurismic

ここで『でした』と過去形で書いたのは、さっきGoogleNewsで調べてみたら、
この二つを追い抜いて既に新薬出願まで行ったユニバーサルワクチンがあるからです。
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2009年06月01日

とうとう遺伝子導入を必要としないiPS細胞が作られた

今日iPS細胞の関連記事でこんなのを読んだ
iPS細胞:「がん化防止」ヒトでも 米国チーム、遺伝子なしで作成 - 毎日jp(毎日新聞)
 さまざまな細胞に分化するヒトの人工多能性幹細胞(iPS細胞)を遺伝子やウイルスを使わず、たんぱく質だけで作ることに、米ハーバード大などのチームが成功した。マウスでは米独のチームが4月に初めて成功を報告しているが、ヒト細胞では世界初。遺伝子の影響などで起きる細胞のがん化を防ぎ、治療用に使える安全なiPS細胞の作成にまた一歩前進した。29日、米科学誌「セル・ステムセル」電子版で発表した。


このニュースを読んだときの私の感想は、
「もう出来たのか。予想はしていたが速いな」というものだった。
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2009年03月28日

壊滅的な小麦さび病Ug99に耐性を持つコムギ品種が開発された

NewScientistが先週ニュースを流していたのだが、既存のコムギ品種に対し壊滅的なダメージを与える病原菌、小麦さび病Ug99に対する強い耐性を持つ品種が作られたようだ。
Resistant wheat to tackle destructive fungus - environment - 20 March 2009 - New Scientist

日本ではそもそも小麦さび病Ug99についてほとんど知られていないので、まずはこの病原菌の説明から。
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2008年12月11日

ネアンデルタール人のゲノムがもうすぐ公開されます

最近バイオ分野では、ネアンデルタール人のゲノム解読に関するニュースが続いています。
例えばこんなのとか。

First Neanderthal genome completed - life - 07 August 2008 - New Scientist
 ネアンデルタール人のミトコンドリアゲノム解読
First Europeans shunned Neanderthal sex - life - 16 July 2008 - New Scientist
 クロマニヨン人のゲノム調査の結果、ネアンデルタール人との混血の痕跡は認められなかったというニュース。
Did we out-breed slow-maturing Neanderthals? - life - 08 September 2008 - New Scientist
 ネアンデルタール人は頭が大きいため難産だったらしい。
Did Neanderthal cells cook as the climate warmed? - life - 27 November 2008 - New Scientist
 ネアンデルタール人は暑さに弱く、氷河期後の急激な地球温暖化に絶えられなかったのが絶滅の原因ではないかという仮説。
PHOTO IN THE NEWS: DNA-Based Neanderthal Face Unveiled
DNAに基づいて作成されたネアンデルタール人の顔
Neanderthal genome already giving up its secrets - life - 09 December 2008 - New Scientist
 既にネアンデルタール人のゲノム解読は半分を超えており、今年中にドラフトゲノムが完成するだろうという記事


何年か前にクロアチアで発見された化石人骨は保存状態がよく、ゲノムDNAの抽出が可能でした。
勿論数万年のときを経てゲノムは大分分解していますし、バクテリアや発掘者のゲノムによる汚染もあるため、ゲノムの解読は容易なことではありません。
しかしそれでも部分的に判明したゲノムからだけでも多くの情報を読み取ることが出来ており、上に上げたような様々な研究成果が出されています。
現在急ピッチでネアンデルタール人のゲノム解読が進んでおり、次々に新しい知見が得られているからです。

中でも重要なのが、現代人との交雑の可能性がほぼ完全に消えたこと。
これまで両者の関係性については結構好き勝手なことがいわれていたのですが、ゲノムレベルでネアンデルタール人と現生人類を比較してみても、両者の間に交雑の痕跡は認められませんでした。
もしヨーロッパ人の先祖がネアンデルタール人と交配していれば、多少なりとも遺伝子にその痕跡が残るはずなのですが、そういったものはまるで見られなかったのです。

ネアンデルタール人の遺伝子に関する与太論文ってのは結構存在していて、以前もちょっとだけ触れましたが「欧米人は脳の進化の鍵となる脳容積を増やす遺伝子変異をネアンデルタール人から受け継いだ」という感じの内容の、失笑ものの論文がPNASに載っちゃってたりします。
ぶっちゃけ遺伝学でトッピングした白人至上主義の亜流に過ぎませんが。
Evidence that the adaptive allele of the brain size gene microcephalin introgressed into Homo sapiens from an archaic Homo lineage — PNAS

そのうちゲノム解読されたら大恥かくぞと生暖かい目で見てたんですが、案の定。
Nor do Neanderthals boast mutations in a gene called microcephalin, linked to bulging brains in humans. This might shoot down another controversial hypothesis contending that this version of microcephalin also evolved in Neanderthals then spread to humans through inbreeding.

あーあ、ご愁傷様w


まあこういうトンデモネタはともかく、ネアンデルタール人のゲノムの完全解読が済めば、人類の進化の道のりについて、さらに多くの情報が得られることでしょう。
ドラフト配列が決定されて現生人類との詳細な比較結果が発表されるのが楽しみです。


おまけ
ニュース - 古代の世界 - ネアンデルタール人と現生人類の交配はなかった - ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト
 ミトコンドリアゲノム解読の日本語記事。結構分かりやすい解説がついているので、手っ取り早く知りたい人はこれをどうぞ。
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2008年11月16日

合成生物学の国際コンペ iGEM2008 についてちょっと取り上げてみる

先日NationalGeographicでiGEM2008のニュースを取り上げていた。
New Biological "Machines" Fight Disease, Produce Power

残念ながら国内のメディアはまるで取り上げる気配がないのだが、
このコンテストは合成生物学分野の国際コンペとして、今後確実に大きなプレゼンスを持つことになる。
バイオ系ブロガーを自認する私としてはこのネタは外せないので、ちょっと紹介してみよう。続きを読む
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2008年10月02日

HIV/AIDSの出現時期が1880〜1920頃まで遡りそうだという話

今日NationalGeographicの記事を見ていて知ったんだが、
最近の研究成果から、"HIV-1"と呼ばれている、最初に発見されたヒト免疫不全ウイルス(HIV)の出現が、もっとも古い場合だと1880年代までさかのぼりそうな事が分かったらしい。
HIV/AIDS Emerged as Early as 1880s
The AIDS pandemic in humans originated at least three decades earlier than previously thought, and it may have been triggered by rapid urbanization in west-central Africa during the early 20th century, according to an international team of researchers.

国際的な研究チームによると、ヒトの間でのエイズの流行の起源が、これまでに考えられていたよりも少なくとも30年はさかのぼることが明らかとなった。そして、20世紀初頭のアフリカ中西部の急速な都市化がその引き金となったようだ。


HIVの元となったのは、野生のチンパンジーが保有しているSIVcpzという2年前に発見されたウイルスだと考えられている。
BBC NEWS | Health | HIV origin 'found in wild chimps'
これがいつどうやってヒトへの感染性を獲得したかはまだ明らかではないが、これまでHIVの起源は1930年ごろのカメルーンであると考えられていた。
HIV流行の最初の記録は、1960年ごろの中部アフリカ、コンゴ人民共和国のキンシャサである。
この頃既に欧米でAIDS様の症状を発症した人間が確認されていることや、AIDSの長い潜伏期間を考えると、1940〜50年ごろには既にある程度感染が広がっていたと考えられる。
後は皆さんご存知のとおり、HIVの存在が明らかになった1983年頃には既に制圧が不可能なほど感染が広がっており、以後世界中で猛威をふるうことになった。
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2008年09月13日

クジラの進化系統図に新たな一枚が追加された

クジラの先祖は構造生物学やゲノム比較の研究から、偶蹄類のシカやカバに近い動物であると考えられている。
(現存する動物のうちもっとも近縁なのはカバ)
化石やゲノムの研究からクジラ類と他の偶蹄類は約6000〜6500万年前頃に分岐し、約5000万年前に海洋進出を始めたと見られている。

大まかな系統図と登場年代を図にするとこんな感じになる。
cf.原クジラ亜目 - Wikipedia

|鯨偶蹄目Cetartiodactyla
├クジラ目 約6,500万年前〜
| ├パキケトゥス科 Pakicetidae (陸生クジラ類)約5,300万- 約5,000万年前
| └真鯨類
|   ├アンブロケトゥス科 Ambulocetidae 約5,000万- 約4,900万年前
|   └┬レミングトノケトゥス科 Remingtonocetidae  約4,900万- 約4,300万年前
|    └プロトケトゥス科 Protocetidae
|      ├ゲオルギアケトゥス(ジョージアケタス) Georgiacetus
|      ├プロトケトゥス Protocetus
|      └─バシロサウルス科 Basilosauridae 約4,100万- 約3,300万年前
|          └─現鯨類 Autoceta 約3,000万年前〜
|             ├ハクジラ亜目 Odontoceti
|             └ヒゲクジラ亜目 Mysticeti
└他の偶蹄目

例えば最近発見された化石の中では、4800万年前の地層から昨年発見されたIndohyusという半水棲の哺乳類などが昨年注目を集めた。
Whales Evolved From Tiny Deerlike Mammals, Study Says
BBC NEWS | Science/Nature | Whale 'missing link' discovered
クジラ達の先祖が見つかった(生態学と進化) / 科学ニュースあらかると - Indonyus,クジラの先祖

化石骨格からの予想図では、Indohyusはおそらくこんな姿をしていたと思われる。
071219-whales-evolved_big.jpg_44308972_indohyus_swim_203.jpg
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2008年07月30日

世界で最も熱い生き物の記録更新

先日「極限環境微生物と火星の生命」というエントリの中で、さまざまな極限環境細菌を紹介しました。
記事の中で私は超高熱細菌を取り上げて紹介し、今後さらに生育可能域が拡大されていくだろうと書いたのですが、早くも記録が更新されたようです。
実にタイムリー。

幻影随想: 極限環境微生物と火星の生命
実はこういった極限環境微生物の研究は実はまだ歴史が浅く、本格的に始まってまだ半世紀も経っていません。
つい最近まで研究者も人間の生育可能域(ハビタブルゾーン)の常識に囚われており、
こういった環境で生育する生命体の存在は想像の範疇外だったのです。

例えば古細菌(アーキア:Archaea)の一種で、
Pyrolobus fumarii Strain 121という菌がつい数年前に発見されたばかりなのですが、
この菌は121℃、2気圧のオートクレーブ(細菌を滅菌するために使われる装置)の中でさえ増殖し、温度を130℃に上げてもなお2時間は生存します。

#普通の微生物は121℃のオートクレーブ15分で死滅します。

Strain 121 -
Wikipedia

Extending the Upper Temperature Limit for Life -- Kashefi and
Lovley 301 (5635): 934 -- Science


だからこの生育可能範囲というのは「現在分かっているだけでもこれだけは」という条件であって、今後さらに拡大されていくことになると思います。

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2008年07月20日

大腸菌4万4千世代の進化―Evolution in Test Tube―

一月ほど前のことになりますが、進化生物学方面のエポックメイキングな論文が発表されました。
中々うまくまとめ切れなかったんですが、ようやく満足のいく記事に起こせたので紹介します。

Historical contingency and the evolution of a key innovation in an experimental population of Escherichia coli ? PNAS
この論文は大腸菌を4万4千世代にわたってひたすら培養し続け、どのような進化の過程をたどるのか観察するという、20年もの歳月をかけたものすごい実験の報告です。この進化の過程の中で、大腸菌はクエン酸を資化するCit+という本来存在しない機能を獲得しており、さらに重要なことには、500世代ごとに採取されていたフリーズストックを用いることで、この進化の過程は再現することも可能でした。これは複数の遺伝子変異の積み重ねによって生物が新たな機能を獲得する進化の過程を実験室レベルで直接観察し、再現することに成功した初めてのケースとなります。細菌は種間の遺伝子の水平移動が存在するため種の定義があいまいなのですが、表現型で分類をしていた昔の定義に従うならば、この大腸菌は大腸菌ではない新たな種になったといってもいいでしょう。
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2008年07月09日

ヒトゲノムWikiが出来ます

YahooNewsを読んでいて見つけたニュース。
現在アメリカの研究者達を中心に、ヒトゲノムWikiを作る計画が進行中らしいです。
Wikipedia opens online library on human genes - Yahoo! News
WASHINGTON (AFP) - A group of US researchers laid out the foundations Monday for a new online library on human genetics stored within the existing framework of open-access encyclopedia Wikipedia.

"There are about 25,000 genes in the humane genome. We have 9,000 articles," said Andrew Su, one of those behind the "Gene Wiki" project from the Genomics Institute at the Novartis Research Foundation in San Diego, California.

"Our goal is to provide a uniform starting point for all genes," he said, noting that afterwards it was up to other scientists to add information and keep it up to date, as happens now with Wikipedia entries.

ウィキペディアがヒトゲノムのオンライン図書館を開く
ワシントン(AFP) アメリカの研究者のグループは月曜、新しいオンライン図書館の基礎を積み上げた。このオンライン図書館は、すでに存在するウィキペディアのオープンアクセスなフレームワークの中に、人間の遺伝学情報を収めたものである。

「ヒトゲノム中には約25000の遺伝子が存在する。そして我々は9000の記事を持っている。」とアンドリュー・スーは言う。彼はこの"遺伝子Wiki"プロジェクトの後援者の一人で、カリフォルニア州サン・ディアゴ、ノバルティス研究財団の遺伝学研究所の一員だ。

「我々の目標は、すべての遺伝子に一貫した出発点を提供することだ」と彼は言う。彼はまた、現在Wikipediaの多くのエントリに起こっているように、GeneWikiに今後情報が追加され最新の情報に更新されていくかどうかは、他の科学者達にかかっているという指摘も行った。


遺伝子の情報をWikipediaに書き込むときに用いる、統一されたフォーマットと大まかな枠組みを用意するというのが、つまるところこのプロジェクトの目的です。
Wikipediaの生命科学関連の情報というのはかなり充実していますが、それでも現在は遺伝情報に関するエントリは少ないので、今後このフォーマットを基に、さらに情報が充実されていくのが楽しみです。
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2008年07月02日

鳥類の系統分類が大きく変わります

鳥類の系統分類が大きく書き換えられそうです。

先日Science誌に、鳥類の進化系統樹を19個の遺伝子の比較解析を元に描きなおした論文が出ました。
これが中々面白い内容なので、論文を落とせる人は是非ご一読あれ。

A Phylogenomic Study of Birds Reveals Their Evolutionary History -- Hackett et al. 320 (5884): 1763 -- Science
約170種もの鳥類の複数の遺伝子を一度に比較したこの研究は、鳥類をターゲットとした分子系統解析としては最大級のものであり、これまで考えられていた鳥類の系統関係が、随所で大きく変化しています。
系統樹が大きすぎるので詳しく見たい人はクリックして拡大してください。
bird-phylogenomictree.png

注目される大きな変更点としては、
ハヤブサがタカやワシとまったく関係のない完全に独立したグループを作り、最近縁種がオウムやインコであることや、
オウムやインコがスズメにかなり近いグループであること、
ヨタカとハチドリが近縁であること、
フラミンゴとカイツブリが近縁であること、
などなど。

個人的には
ペンギンがアホウドリの親戚であることや、
フクロウとワシ、カワセミという全然見た目も行動パターンも違う鳥が近縁関係にあることなどがちょっと驚きでした。
鳥類の分子系統樹は収斂進化や適応放散の見事な一例ですね。


この手の研究としては90年代にDNA - DNAハイブリに基づくデータで作られた「シブリー・アールキスト鳥類分類」という大規模な研究があって、今までスタンダードとなっていたのですが、またさらにあちこち分類が変わることになります。教科書や辞書も全部分類し直しだから大変です。
とりあえず系統樹の属名を日本語に直したリストを下に貼っておきますので、対応を見たい人は系統樹を見ながら適当に置き換えてください。

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2008年06月16日

インビトロジェンによるアプライド・バイオシステムズ買収、合意形成へ

最近疑似科学ネタばかり続いていて、いい加減バイオネタを取り上げておかないと自分がバイオブロガーであることを忘れそうなので、このニュースを取り上げてみる。
昼休みにYahooNewsを眺めていたらこんな記事を見つけて驚いた。
バイオ分野では久々に規模のでかいM&Aだな。
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posted by 黒影 at 22:14 | Comment(2) | TrackBack(0) | バイオニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年04月13日

廊下で遺伝子組み換え菌培養、実験後の微生物は滅菌せずに流しにポイ

「洒落になんねえぞオイ」と思わず頭を抱えたニュース。
あまりにも杜撰な内容に、頭痛すら覚える。
バイオ者は研究ジャンルに関わらず必読。
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2008年03月31日

LTTバイオファーマの件

先日の「バイオベンチャーのやばい話」の続き。
とうとう経済以外の大手紙でもこのネタが取り上げられるようになって、酔うぞさんが取り上げていた。
メモがてらリンクしておく。

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posted by 黒影 at 22:07 | Comment(0) | TrackBack(0) | バイオニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

三菱化学生命科学研究所が閉鎖されるそうな

三菱化学生命科学研究所が閉鎖されるそうな。
日経バイオのサイトでこのニュースを見たときの衝撃は大きかったね。
国内でも最古参の民間研究所が閉鎖とは…

Biotechnology Japan:三菱化学生命科学研究所、2010年3月末で解散、田辺三菱製薬誕生の副作用か?
 我が国で最初に創設された民間の分子生物学研究所である三菱化学生命科学研究所は、2010年3月末で解散することを、08年3月24日に発表した。田辺製薬と三菱ウェルファーマの合併の影響が、アカデミック志向の高い研究所の整理につながり、170人の研究所員の運命を変えることとなった。

1999年の三菱東京製薬誕生あたりから、生命科学研は三菱化学グループの中での位置付けがあいまいになっていたらしい。2004年には「疾病治療の進歩に役立つ基礎研究」と銘打ってかなり大きな組織改革を進めていたのだが、昨年度田辺製薬と三菱ウェルファーマが合併したことで、とうとう整理対象となってしまったようだ。

それにしても研究員職員合わせて170名がリストラか。
バイオ業界は最近どこも景気の悪いニュースばかりだ。

2008 | ニュースリリース | ニュース・メディア | 三菱化学株式会社
株式会社三菱化学生命科学研究所解散について
posted by 黒影 at 21:13 | Comment(3) | TrackBack(0) | バイオニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年03月27日

ゲノム解析のコストが6万ドルまで下がった

まだ高級外車が買えてしまうような値段がかかるが、それでも大分個人の手が届く価格までゲノム解析のコストが下がってきた。数年前のワトソン博士のゲノム解析に100万ドル、ヒトゲノムプロジェクトでは1億ドルを軽く超えるコストがかかっていたことを思えば劇的な価格破壊である。

Genome is a snip at $60,000 - being-human - 25 March 2008 - New Scientist
WHEN the cost of sequencing a human genome gets down to the price of a family car, then the era of personalised genomics will truly be upon us. This was the prediction from James Watson, co-discoverer of the structure of DNA, in an interview with New Scientist (20 October 2007, p 58) last year.

Well, it's getting close. Last week, Applied Biosystems of Foster City, California, announced that it had sequenced the genome of a Nigerian man at a cost of less than $60,000, excluding labour. "We are committed to pushing the limits of this technology," says Shaf Yousaf of Applied Biosystems. "These prices will come down further in the next year or two."

アプライドバイオシステムズは自社で次世代シーケンサを開発しているので、おそらくそれを用いて解析を行った結果だろう。数年後には更なる価格破壊が見込まれると書かれているし、何よりその時期には第三世代のシーケンサが出てきて根本的に前提条件が変わっているはず。テーラーメード医療の時代は近いな。

◆参考記事
幻影随想: 次世代ゲノムシーケンサの本命は?
幻影随想: 1時間で1000億塩基解読可能な次世代シーケンサー
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2008年03月24日

山中教授、iPS細胞講演全文

朝日新聞が山中教授のiPS細胞の講演をテキスト起こしして公開しているので、紹介してみる。
 山中伸弥・京都大教授(iPS細胞研究センター長)は、昨年11月、人間の体細胞から万能細胞を作成する手法を発表して世界的な注目を集め、2007年度朝日賞を「万能細胞作成に関する新手法の開発と実証」の業績で受賞した。この受賞記念講演会(朝日新聞文化財団、朝日新聞社主催)が3月21日、東京の有楽町朝日ホールで開かれた。「iPS細胞が作る新しい医学」と題して、山中教授が再生医学の基本からES細胞、iPS細胞の作成や今後の展望を満員の約650人の聴衆を前に約1時間半にわたってユーモアを交えて語った

asahi.com: 「iPS細胞が作る新しい医学」 山中教授講演全文(1) - サイエンス
asahi.com: ES細胞の可能性と課題 山中教授講演全文(2) - サイエンス
asahi.com: iPS細胞誕生までの足どり 山中教授講演全文(3) - サイエンス
asahi.com: iPS細胞の可能性 山中教授講演全文(4) - サイエンス
asahi.com: 今後の研究体制 山中教授講演全文(5) - サイエンス
asahi.com: 質疑応答 山中教授講演全文(6) - サイエンス

非常に良い内容なので、ぜひ一度ごらんあれ。
posted by 黒影 at 20:35 | Comment(0) | TrackBack(0) | バイオニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年03月22日

バイオテクノロジー戦略大綱の破綻

日経バイオのニュースで知ったんだが、先日バイオテクノロジー戦略大綱の中間報告が出たようだ。
さっそく読みに行ったんだが、思わず「なにこの大本営発表?」と言いたくなるその内容に正直愕然とした。
#中間報告の薄っぺらさ、内容の無さにも愕然としたが。
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posted by 黒影 at 02:01 | Comment(2) | TrackBack(2) | バイオニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年03月09日

オーラルセックスでHPV感染→口内ガン

ガンの発症メカニズムには様々な物が知られているが、その中にウイルス感染によって引き起こされるものがある。
一番有名なのは子宮頸ガンの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)だろうか。

HPVは主に性行為によって感染する。
STD・性行為感染症: ヒトパピローマウィルスHPVのワクチン(2007年日本性感染症学会レポート#1)
HPV罹患率は若年者で30%くらいですが、35歳以降に10%前後で推移して、それ以上下がりません。したがって、HPVは感染しても90%の方は自然治癒しますが、残り10%の方に感染が継続します。感染継続が10年ほどになると子宮頸癌の罹患率が上昇してきますから、【感染+感染期間】が子宮頸癌の発症と深く相関しているらしいというのです。
先ほどのスライドでも分かるように、20歳未満のHPV罹患率は30%と高いです。これには理由があり、女性の子宮頚部が思春期前だと扁平上皮に覆われていなく円柱上皮がむき出しに露出していて、HPVの感染が容易になるからです。
成人女性になると、子宮頚部が扁平上皮に覆われるので、HPV感染しにくくなります。

このように性感染症として知られており、特に女性に対してはガンの原因ともなる厄介なHPVだが、現代人のセックス様式の変化と共に感染ターゲットを広げ、最近は口内ガンの原因としても定着しつつあるらしい。
Oral sex-related cancer at 30-year high - health - 28 February 2008 - New Scientist
The incidence of oral cancer due to a virus transmitted during oral sex has increased steeply over the last 30 years, according to research in the US. And scientists relate this trend to changes in people's sexual behaviour.

The number of tongue, mouth and throat cancers due to the sexually transmitted human papilloma virus (HPV), which can also cause cervical cancer in women, rose by about a third from 1973 to 2004, say researchers.

Oral sex can cause throat cancer - 09 May 2007 - New Scientist
People who have had more than five oral-sex partners in their lifetime are 250% more likely to have throat cancer than those who do not have oral sex, a new study suggests.

The researchers believe this is because oral sex may transmit human papillomavirus (HPV), the virus implicated in the majority of cervical cancers.

記事を読んでもらえば分かるとおり、近年アメリカではHPVによる口内ガンが急増している。
HPVは性感染症なので、おそらくその原因は昔はマイナーだった性行為、すなわちオーラルセックス(フェラチオ)だろうという結論。
日本でもおそらくそんなに状況は変わらないと思うので、心配な奴は病院に行っとけという話。

HPVは別に不治の病じゃない。最初に引用したサイトの記事にあるように、ちゃんと治療法やワクチンも存在する。
#ただしワクチンは日本ではまだ認可されていない。
パートナーのいる人は男女の別なく一度は性病のチェックをうけておくべきかと。
性病は必ずしも性行為でだけ移るわけじゃなく母子感染その他の経路も存在するからな。


ちなみに、性病として有名な尖圭コンジローマと子宮頸ガンのウイルスは、同じHPVでも型が違い、コンジローマにかかった人が子宮頸ガンになる訳ではないらしい。
これは私も初めて知った。
STD・性行為感染症: ヒトパピローマウィルスHPVのワクチン(2007年日本性感染症学会レポート#1)
子宮頸癌のウィルスは16型・18型・50番台の型が主です。6型・11型のウィルスは尖圭コンジローマの原因であって、決して子宮頸癌の原因ではないということを知っておいてください。婦人科医の中には尖圭コンジローマ→子宮頸癌へ移行すると誤解している医師が存在します。患者さんの自衛策として注意が必要です。


ヒトパピローマウイルス - Wikipedia
タグ:医療 ガン
posted by 黒影 at 22:38 | Comment(0) | TrackBack(0) | バイオニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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