2009年09月05日

新型インフルの重症例をリレンザの静脈注射で回復させた事例

新型インフルの重症例をリレンザの静脈注射で回復させた事例が昨日のニュースで結構大きく取り上げられていたので、うちでも取り上げてみる。
学校の夏休みが明けてこれから日本でも本格的な流行が予想されるので、重症化時にとりうる対処策が一つでも増えるのはありがたいことだ。

吸入薬リレンザを静脈注射、インフル重症患者が劇的に回復 国際ニュース : AFPBB News
【9月4日 AFP】新型インフルエンザA型(H1N1)に感染して入院していた英国のがん患者の女性(22)が、吸入用抗ウイルス薬リレンザ(Relenza)を静脈注射するという異例の方法で生命の危機から救われたとの報告が、4日の英医学専門誌「ランセット(Lancet)」に掲載された。

 女性はリンパ組織に悪性腫瘍(しゅよう)ができるホジキン病を患い、化学療法を受けていた。そのため免疫系が衰弱し、H1N1ウイルスに対する防御が弱まっていた。
 
 女性は7月、息切れと両肺に水がたまるという症状で英ロンドン(London)のロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ病院(University College Hospital)に入院。インフルエンザ治療薬タミフル(Tamiflu)も広域スペクトル抗生物質も全く効き目がなく、入院3日目には人工呼吸器が必要になった。

 医師団はリレンザを認可された吸入方式で投与したがやはり効き目がなく、その後の2週間で次第に病状は悪化した。

 生死の境目をさまよう女性に対し、医師団はリレンザ製造元の製薬大手グラクソ・スミスクライン(GlaxoSmithKline)の特別協力を得て、リレンザを静脈注射するという賭けに出た。すると女性の病状は劇的に改善し、48時間以内には人工呼吸器を外し、集中治療室から一般病棟に移れるほどに回復したという。(c)AFP


論文はこれ。
H1N1 pneumonitis treated with intravenous zanamivir : The Lancet
Dr I Michael Kidd FRCPath a , Jim Down FRCA b, Eleni Nastouli FRCPath a, Rob Shulman DHCPharm b, Paul R Grant PhD a, David CJ Howell MRCP b, Mervyn Singer FRCP b
On July 8, 2009, a 22-year-old woman, neutropenic after chemotherapy for Hodgkin's disease, was referred to ICU with 3 days’ (d) increasing dyspnoea, bilateral chest infiltrates, and laboratory-confirmed pandemic H1N1 2009 influenza virus infection not responding to oseltamivir 75 mg twice daily and broad-spectrum antimicrobials (meropenem, teicoplanin, and caspofungin). No other organisms were detected from blood or respiratory tract. Deterioration necessitated invasive ventilation from ICU d 3 ...

ニュースに対してはすでにあちこちで称賛の声が挙がっていて、もちろん医師はGoodJobなんだけれど、私はこのニュースをもう少し掘り下げてみようと思う。
実は新型インフルに世界で初めてこの治療法を試したのはこのロンドン大学病院のチームではなく、オーストラリア、メルボルンのオースティン病院である。
おそらくこの論文の著者らはそれを知っていたから、わざわざ認可前の静脈注射用リレンザを取り寄せて治療を行ったのだと思う。
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posted by 黒影 at 17:40 | Comment(7) | TrackBack(2) | サイエンスニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年02月08日

NHKがネアンデルタール人の番組でやらかしたらしい

一月にNHKが
ハイビジョン特集 フロンティア
ネアンデルタール人の謎
〜最新報告・ゲノム解読の試み〜

という番組を報道していたそうな。
私はテレビを見ない人間なので例によってこの番組もスルーしていたのだが、どうも伝え聞くところによると、以前の記事で書いた間違いをまんまやらかしたらしい。
「ネアンデルタール人の遺伝子の痕跡が現代人に」とやったようだ。
誰だ番組の監修をしたのは?そのネタは暫定ゲノムの報告でほぼ完全に否定されていたはずなんだが。

幻影随想: ネアンデルタール人のゲノムがもうすぐ公開されます
中でも重要なのが、現代人との交雑の可能性がほぼ完全に消えたこと。
これまで両者の関係性については結構好き勝手なことがいわれていたのですが、ゲノムレベルでネアンデルタール人と現生人類を比較してみても、両者の間に交雑の痕跡は認められませんでした。
もしヨーロッパ人の先祖がネアンデルタール人と交配していれば、多少なりとも遺伝子にその痕跡が残るはずなのですが、そういったものはまるで見られなかったのです。

ネアンデルタール人の遺伝子に関する与太論文ってのは結構存在していて、以前もちょっとだけ触れましたが「欧米人は脳の進化の鍵となる脳容積を増やす遺伝子変異をネアンデルタール人から受け継いだ」という感じの内容の、失笑ものの論文がPNASに載っちゃってたりします。
ぶっちゃけ遺伝学でトッピングした白人至上主義の亜流に過ぎませんが。


元々これまでに報告されている「ネアンデルタール人が現代人につながる遺伝的証拠を発見したと主張する論文」自体、どれもこれも眉唾物で、まともに相手するようなものじゃなかった。
番組内では赤毛、薄い体色、言語を操る遺伝子という三つのネタについて取り上げたようだが、言語遺伝子が現生人類に受け継がれた可能性は否定されているし、薄い体色も、赤毛遺伝子も、原生人類のそれとネアンデルタール人のそれが別物であることは既に確認されている。
その上にダメ押しで昨年の暫定報告があったというのに、NHKは何を今更血迷ったんだろう?と思っていたら、どうもこの番組はただの吹き替え放送らしい。
・原題:The Neanderthal Code
・制作年:2008年
・制作会社:Wall to Wall Media(イギリス)

ちょっと調べてみたら、私が昨年取り上げた暫定ゲノムの報告が出る前、すなわちまだネアンデルタール人のゲノムについて想像で好き勝手なことが言われていた頃に作られた番組らしい。
今更最新情報に基づいた番組への置き換えもできなかったのか、あるいは単に状況の変化を知らないままやってしまったのか。
誰か忠告してくれるような研究者に繋ぎは取ってなかったのかねえ。
posted by 黒影 at 00:38 | Comment(14) | TrackBack(0) | サイエンスニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年10月29日

博士ミーティングin東京のお知らせ(11月22日)

先日行われた博士ミーティングの第二回が、プレミーティングという形で11月22日に東京で行われるようです。
関東方面にお住まいの方で前回は行けなかったという人は、是非ご検討ください。

赤の女王とお茶を:お知らせ:11月22日お台場サイエンス・アゴラで博士プレ・ミーティング開催します!
ご無沙汰しております。

前回京都で開催した博士ネットワーク・ミーティングには多数の参加をいただきまして、誠にありがとうございました。

次は関東での開催を目論んでいるのですが、少々準備に時間が掛かりそうです。

しかしあまり間が空きすぎるのもどうかということで、ちょうど11月に開催される科学技術振興機構主催「サイエンス・アゴラ」の企画にお邪魔する形で「プレ・ミーティング」をやってしまいます。

現在の予定では、サイコムさんの企画
11月22日(土) 15:00〜17:30 会場:東京国際交流館 メディアホール

「本音で語る「研究問題」〜研究問題 メーリングリスト 10 周年に寄せて〜」

の後半にお時間をいただき、その後街にでも繰り出そうか、というノリになっております。

今回はプレということで、自己紹介シートの提出義務はなくし、関心のある方に広く参加していただこうと思っています。科学技術振興機構の主催ではありますが、イベント自体は非常に自由なふいんき*1ということで、一言いわせろ、こんなアイデアがあるぜ、という皆様の参加を心よりお待ちしております。

また別途、本ミーティングの企画も進んでおりまして、2月あたりにやや大きな形で開催できればなと考えております。

アイデアや企画をお持ちの方はぜひ
hakasenetworkあっとgmail.com

までよろしくお願いいたします。

私は友人と旅行に行く計画が重なってしまったので残念ながら参加できないのですが、何か面白い話があったらどなたかレポートしていただけたら嬉しいです。
posted by 黒影 at 20:37 | Comment(2) | TrackBack(0) | サイエンスニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年10月23日

Giant Cristal Cave

先日取り上げたクリスタルの洞窟の動画。
言葉は不要。





◆関連エントリ
幻影随想: National Geographic Channelがクリスタルの洞窟を放映するようです
幻影随想: クリスタルの洞窟
posted by 黒影 at 00:08 | Comment(2) | TrackBack(0) | サイエンスニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年10月12日

National Geographic Channelがクリスタルの洞窟を放映するようです

先の記事を書くに当たってNational Geographic Channelのサイトを見ていたら、以前取り上げた「クリスタルの洞窟」の放送を今日やることが判明して、今滅茶苦茶興奮している。
画面紹介の写真を貼り付けておくので、この大地の神秘に対する感動を共有してもらえると幸いだ。

Giant Crystal Cave | National Geographic Channel
3569_giant-crystal-cave-14_04700300.jpg
洞窟を埋め尽くす巨大な結晶群。

3569_giant-crystal-cave-5_04700300.jpg
結晶のサイズは最大で10メートル級。人だって乗れてしまう。

3569_giant-crystal-cave-4_04700300.jpg
同じアングルでもう一枚。

3569_giant-crystal-cave-2_04700300.jpg
もうため息しか出ない。一度でいいから行ってみたい。

写真だけでもお腹一杯なのだが、さらに興味深いのはこの番組の構成。
この番組内でこの洞窟を探索する目的は、大地の神秘を満喫するためじゃない。
今後人類が他の惑星に進出可能になったときにそこで生命の痕跡を探す技術を確立するために、クリスタルの中に閉じ込められているであろう過去の極限環境細菌を探しに行くのだ。
あまりにもピンポイントにツボを突いてくるものだから、完全にノックアウトされた。
絶対見よう。
posted by 黒影 at 17:13 | Comment(3) | TrackBack(0) | サイエンスニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年07月14日

極限環境微生物と火星の生命

このブログのプロフにも書いてありますが、私は大学時代微生物の研究をしていました。
ジャンルは環境微生物学なのですが、極限環境微生物にもちょっと手を出していて、これが結構面白かったので今でも勉強を続けています。

極限環境微生物というのは、読んで字のごとく、人間や他の高等動物には到底生存不可能な環境に生育する微生物のことです。
極限環境微生物 - Wikipedia
極限環境微生物(きょくげんかんきょうびせいぶつ)は、極限環境条件でのみ増殖できる微生物の総称。なお、ここで定義される極限環境とは、ヒトあるいは人間のよく知る一般的な動植物、微生物の生育環境から逸脱するものを指す。ヒトが極限環境と定義しても、本微生物らにとってはヒトの成育環境こそが「極限環境」となりうる可能性もある。


具体的に言うと、

-20℃の海中、
121℃の沸騰水中、
pH-0.06の強酸中、
pH12.5のアルカリ性溶液中、
飽和濃度の食塩水中、
水層と有機層が分離するほどの大量の有機溶媒存在下、
1000気圧を超える深海の底、
地下10Kmの岩盤の中、
高度10kmを超える高層大気中、
宇宙空間で直接さらされるレベルの強い放射線存在下

というような、人間ならあっという間に死んでしまうような過酷な環境下においても、
これらの環境に適応した細菌たちは平気で増殖します。

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posted by 黒影 at 00:37 | Comment(6) | TrackBack(0) | サイエンスニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年06月29日

ダーウィン展が関西に来ます

先日まで東京の国立科学博物館で開催されていたダーウィン展が、関西にやってきます。

ダーウィン展「進化」発見の旅へ!|大阪市立自然史博物館にて開催
このダーウィン展は、日英修好通商条約調印150周年の記念イベントであると共に、来年2009年の、ダーウィンの生誕200年、「種の起源」発表150周年を記念するイベントでもあります。
#今年から来年にかけて、世界各地でダーウィンにちなむイベントが目白押しですので、興味のある人は探してみてください。

展示内容は、ダーウィンの生涯や、彼のビーグル号での世界航海、進化論に到達するまでの軌跡などを取り上げたもので、中々見応えがあるので関西方面にお住まいの方はこの機会に是非どうぞ。

会場は大阪市立自然史博物館で、開催期間は7月19日(土)〜9月21日(日)。
入館料は、一般1,200(1,000)円、大学生1,000(800)円、高校生600(500)円です。
#()内は前売り券の値段。


ついでに、関連情報を探していて初めて知ったんですが、自然史博物館はイベント告知用のブログも持ってるんですね。
こういう独自アナウンスを行う博物館がもっと増えたら楽しいと思うので、紹介しておきます。
What's New: いよいよ7/19からダーウィン展
 大阪市立自然史博物館では、平成20年7月19日(土)から9月21日(日)まで、長居公園内の「花と緑と自然の情報センター」 2階ネイチャーホールにおいて、「ダーウィン展」を開催します。
 自然選択による進化論を見いだしたことで世界に知られる自然史学者ダーウィン。この展覧会では、昆虫少年だったダーウィンの生い立ちから、大抜擢を受けて22歳の若さで乗り組んだ5年に及ぶビーグル号での世界航海、「種の起源」を発表するまでの苦悩の日々を示す直筆の手紙などと共に、進化論が当時の世界に与えた影響を紹介します。
 会場内には、ビーグル号航海の模様を壮大なスケールで展示。そしてダーウィンが、貴重な生物の宝庫として有名なガラパゴス諸島で出会った珍しい生物を剥製や映像で紹介します。また、ダーウィンが実際に使用した道具などの資料も展示し、自然に対する思索に没頭したダーウィンの生涯をたどります。


ところで、残念ながら関西にはシーラカンスの標本が来ないみたいですね。
あの大きなシーラカンス標本は迫力あるので、できれば関西にも持って来て欲しかったんですが。
歯の生えたでかい口とか、とげだらけのうろことか、太い肉鰭とか、実に見応えがあるのに。
posted by 黒影 at 13:39 | Comment(6) | TrackBack(0) | サイエンスニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年06月26日

Science for All Japanese

このブログでは少し前に"Science for All Americans(すべてのアメリカ人のための科学)"の翻訳プロジェクトを行っていました。多くの方々の協力のおかげで翻訳自体は一月ほどで終わり、現在も細々と改訂を行っています。
この本の翻訳は文科省でも予算を組んで行っており、北原先生率いる"Science for all japanese"によって翻訳されたものも現在では公開されています。
そしてさらに、彼らは先日、この本を日本人向けにアレンジした報告書を出してきました。

Science Literacy for all Japanese|議事要録|総合報告書
Science Literacy for all Japanese|議事要録|専門部会報告書
via POLAR BEAR BLOG: 疑似科学に騙されない大人になるための教科書

今ちょっと忙しくてきちんと取り上げる暇がないのですが、いずれはこのブログでもきちんとした形で紹介したいと思います。
とりあえず今回は、こういうものが出ましたよというアナウンスです。
posted by 黒影 at 23:12 | Comment(0) | TrackBack(0) | サイエンスニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年06月23日

卵巣から卵子が生れ落ちる瞬間が撮影された

先日のNewScientist誌に載っていたニュース。
ヒトの卵子が卵巣から生れ落ちる瞬間が手術中に偶然写真に撮影されました。
Human egg makes accidental debut on camera - being-human - 11 June 2008 - New Scientist
mg19826604_200-2_567.jpg
Photo from New Scientist

卵巣から卵母細胞が生れ落ちる瞬間というのは、ヒトの生殖の重要なイベントです。
しかし観察するのが非常に難しい生命現象なので、今まではぼやけた写真しか存在しませんでした。
この写真は45歳の女性の子宮摘出手術の際に偶然撮影されたものだそうです。


ちなみに、何が映っているのかいまいち良く分かりませんでしたがビデオもあります。
Human ovulation captured on video - being-human - 17 June 2008 - New Scientist
posted by 黒影 at 21:48 | Comment(12) | TrackBack(2) | サイエンスニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年05月29日

産総研が観葉植物型太陽電池を開発

主要紙は取り上げていないみたいだけれど、先日こんなニュースが出ていたので紹介してみる。
産総研で開発された、観葉植物の葉っぱの形をした太陽電池だ。

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posted by 黒影 at 23:18 | Comment(0) | TrackBack(0) | サイエンスニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年04月18日

文科省訳Science For All Americansが公開されました

既にsivadさん他何人かの方が取り上げられていますが、
ScienceForAllJapanese版のSFAA翻訳物がとうとう公開されたようです。
コメント欄で教えてくださった近藤さんどうもありがとうございます。

【『すべてのアメリカ人のための科学』(日本語訳)がAAASのサイトにアップ】
 アメリカの科学技術リテラシーの報告書である『Science for All Americans』(American Association for the Advancement of Science:AAAS、1989)の日本語訳が、2005年に日米理数教育比較研究会によって『すべてのアメリカ人のための科学』(米国科学振興協会)として発刊されていました。今回、この日本語訳が、AAASのウェブサイトに掲載されました。アドレスは、下記の通りです。
http://www.project2061.org/publications/2061Connections/2008/2008-02a.htm
ぜひ、ご覧ください。

それにしてもこのタイミングの良さ。
どう見ても本プロジェクトに刺激された誰かがせっついた結果です。
誰か知りませんが本当にありがとうございました。

日本語版翻訳物はPDFで公開されており、以下のページからダウンロードできます。
PDFのダウンロードにやたらと時間がかかるので、ブラウザ上で直接開くときはご注意ください。
#一度ダウンロードしてから見ることをお勧めします。
AAAS - Project 2061 - Science for All Americans


◆業務連絡
文科省訳SFAAの冊子版をお申し込みいただいた方へ。
現在冊子の申し込みを終え、私の所にまとめて届くのを待っている状態です。
届き次第、申し込んでいただいた方それぞれに再発送しますので、もうしばらくお待ちください。
posted by 黒影 at 19:43 | Comment(2) | TrackBack(1) | サイエンスニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年02月27日

アクセスが集中しすぎて開始早々ダウンしたEncyclopedia of Life

昨日紹介したEncyclopedia of Lifeだが、やたらと重いと思ったら
数百万PV/hの状態が五時間以上に渡って続き、ついにはサーバーがダウンしてしまったらしい。
多分世界中で私のようなサイエンスニュースウォッチャーが取り上げて、天然DDoS状態が発生したのだろう。
そういえば何年か前にも似たような事があったなあ。
科学ニュースが注目を集めるのはいいけれど、こういう思いもよらぬ副次効果は困る。

Life encyclopedia: too popular to live - Yahoo! News
WASHINGTON - The concept of a comprehensive encyclopedia of life on the Internet proved too popular. Its computers were overwhelmed and couldn't keep it alive when it debuted Tuesday.

The encyclopedia, which eventually will have more than 1 million pages devoted to different species of life on Earth, quickly crashed on its first day of a public unveiling, organizers said.

Scientists at the Encyclopedia of Life sought help from experts at Wikipedia for keeping their fledgling Web site going despite massive — and anticipated — interest. The site went back up Tuesday afternoon, but with expectations of more problems, although only temporary ones.

"We've been overwhelmed by traffic," encyclopedia founding chairman Jesse Ausubel said. "We're thrilled."
The encyclopedia's Web site logged 11.5 million hits over 5 1/2 hours, including two hours of down time, according to organizers.

昨日私の記事を読んで見に行ったのに見れなかったという方には申し訳ありませんでした。
おそらくアクセス数が落ち着くであろう週末あたりに、再度アクセスすることをお勧めします。

◆関連記事
幻影随想: 生命百科事典の本格稼働のお知らせ
幻影随想: Encyclopedia of Life ―生命百科事典の編纂が開始される―
posted by 黒影 at 20:30 | Comment(0) | TrackBack(0) | サイエンスニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年02月19日

中華思想と「中国古人類連続進化説」

お隣の中国では最近10万年近く前の人骨が発見され、話題になっている。
「人類の起源」のカギ、「許昌人」が考古学の空白埋めるか―河南省許昌市(Record China) - Yahoo!ニュース
2008年1月27日、河南省許昌市で昨年12月に出土した「許昌人」と呼ばれる8万年〜10万年前の人間の頭骨の化石は、専門家から「人類の起源に直接つながる大発見」と大きな注目を集めている。「中国新聞ネット」が報じた。

出土したのは許昌市北西部にある霊井遺跡。昨年12月17日に頭頂部など16片が出土し、ほぼ完全な頭骨が復元された。保存状態も大変良好という。霊井遺跡は1965年に動物の化石や細石器が大量に出土し、考古学の世界では早くから重要視されていた。【 その他の写真 】

「許昌人」は出土後、北京の中国科学院古脊椎・古人類研究所に移送され、その後北京大学の都市と環境学部でOSLによる年代測定を実施。10数人の専門家による鑑定の結果、8万年〜10万年前の化石であると確認された。

この化石、おそらく旧人だと思われるが、もしこれが新人だったら原生人類の分布域拡大の歴史が大きく塗り替えられる。
もちろん旧人だとしても、旧人の化石はアジアでは少ないので貴重な考古学資料なのは変わらない。

しかしながら、なぜか中国の考古学界はこれを多地域進化説の証拠だと考えるおかしな方向に。
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posted by 黒影 at 21:42 | Comment(0) | TrackBack(0) | サイエンスニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年02月06日

科学技術ニュースに興味を持つ層が増えているそうだ

少し前に読売新聞が面白い記事を出していた。
読売は最近他紙に比べて科学ニュースの充実度がかなり上がっているのでうれしい。
科学技術ニュースなどに「関心がある」6割…内閣府調査 : 科学 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
 内閣府は2日、「科学技術と社会に関する世論調査」の結果を発表した。

 科学技術についてのニュースや話題に「関心がある」との回答が6割と過去最高だった。

 内閣府は「温暖化など地球規模の問題が話題を集めており、その解決に科学技術への期待感が高まっているためだろう」と分析している。

 調査は昨年11〜12月に、全国の20歳以上の男女3000人を対象に実施。1667人が回答した。

 科学技術についてのニュースや話題に「関心がある」と答えたのは61・1%で、前回調査(2004年)から8・4ポイントアップし、1981年に調査を始めてから最高を記録した。

 科学者や技術者の話しを「聞いてみたい」との回答も60・4%で、前回から9・7ポイント高まった。

 また、「社会の新たな問題は科学技術で解決される」と考えている人は62・1%で、前回の34・9%から大幅に増加。科学技術が貢献すべき分野は、「地球環境や自然環境の保全」(72・8%)、「資源・エネルギー開発やリサイクル」(71・4%)、「廃棄物の処理・処分」(48・5%)など、環境問題が上位を占めた。

自称科学ブロガーな黒影としては、科学技術の話題に興味関心を持つ層が増えているというのはありがたい。
今後も面白い科学ニュースを取り上げて、こういう層の増加に少しでも貢献できたらいいなあと思う。
タグ:サイエンス
posted by 黒影 at 21:43 | Comment(5) | TrackBack(0) | サイエンスニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月27日

過熱気味のiPS細胞報道を眺めるに

お久しぶりです。
年末進行に追われてすっかりブログから足が遠のいていた黒影です。
ブログ以前にそもそもウェブへのアクセス頻度が低下していたのでほとんど浦島状態なのですが、最近のビッグニュースと言えばやはりiPS細胞の事でしょうか?

京大iPS細胞が2位=今年の進歩ベスト10−米科学誌(時事通信) - Yahoo!ニュース
幹細胞研究領域にとっては久々のブレークスルーで、かなり将来性が期待できるニュースですが、生化学者の端くれとしては国内ニュースが取り上げているような上っ面よりも、こういう裏を掘り下げた話のほうが気になるのですよ。

京大の山中伸弥教授かっこよす - おこじょの日記
Urban Dirt - Times Online - WBLG: Is the synthetic stem cell Japan’s greatest ever invention?

ヒトの生殖細胞を使わず、皮膚の細胞から幹細胞を作り出した山中教授のグループの研究は大きく取り上げられています(ノーベル賞もん?)が、教授にインタビューしたTimes記者氏のブログに非常に興味深い内容がありやした。

なんと、教授の研究の原動力は日本政府の無能さに対する怒りなんだそうです。なぜ日本では生殖細胞の研究利用が認められているのに、あえてそれを使わずに研究してるのかを尋ねられた彼は・・・


続きは引用先を読んでもらうとして、こういう話をきっちり書ける国内メディアが現れないのが海外に比べ日本に足りない部分であると言えましょう。ぶっちゃけ最近の政府やメディアの過熱気味な姿を見ていると、数年前ファンウソクをちやほやしていた韓国政府やメディアの姿がオーバーラップするのですよ。

無論研究内容を見れば月とスッポンなわけですが、最近の報道を見ていると「あんたらちゃんと月とスッポンの見分けができてるの?」と意地悪な質問をしてみたくなったり。
posted by 黒影 at 00:15 | Comment(0) | TrackBack(0) | サイエンスニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年10月21日

ワトソン博士の問題発言について

かなり出遅れた感があるのだが、ワトソン博士の例の発言について。
原文はタイムズの記事で、英語がダメな人はCNNの記事が比較的分かりやすくまとまっている。
The elementary DNA of Dr Watson - Times Online
CNN.co.jp : 英博物館、DNA構造解明ワトソン博士の講演中止 差別発言で - サイエンス

国内の言及ブログをfinalventさんが一通りまとめているのでついでにリンク。
はてな村界隈に偏っているのが難点だけど。
ワトソンのこれなんだが - finalventの日記
もう一点、私が良いと思ったブログ記事をリンク
Podium 無駄口はつつしみたまえワトソン君

ワトソン博士は昔から人種差別も含む問題発言の多い人だからねえ。
私としてはもう「ああ、またか」くらいにしか思わない。
生化学者の発言が大きく取り上げられるのは、それだけ存在が社会に認められているということだが、こういう取り上げられ方は痛いな。
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posted by 黒影 at 20:41 | Comment(9) | TrackBack(0) | サイエンスニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月07日

Cellの表紙を荒木飛呂彦のイラストが飾った件について

昼休みにこのニュースを見かけたときは、思わず目を疑いました。
そしてマジだとわかって大笑い。
Cellも瀬藤先生も超グッジョブ!
それにしても行動力のある先生だなあ。

Yahoo!ニュース - 時事通信 - 人気漫画、米科学誌表紙に=日本人研究者論文、イメージ化−「ジョジョ」荒木さん
 人気漫画「ジョジョの奇妙な冒険」で知られる荒木飛呂彦さんのイラストが、7日付の米科学誌「セル」の表紙を飾った。同誌に掲載された日本人研究者の研究内容をイメージ化したもので、医学や生物学の分野で権威のある同誌の表紙を、日本人漫画家が描くのは異例だ。


ちなみに、ファンや野次馬が大挙して押し寄せたからかどうかは知りませんが、Cellのサイトは朝から落ちています。
幸い赤の女王とお茶をのsivadさんがWeb魚拓を取っておられたのでリンクを拝借。
(cache) Cell Online

これがそのイラスト。
cell.gif

やはり科学にもこういう洒落っ気は大事ですよね。

追記
posted by 黒影 at 21:25 | Comment(4) | TrackBack(0) | サイエンスニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月06日

振動を電気エネルギーに変換するデバイス

Micro-generator feeds on good vibrations - tech - 04 July 2007 - New Scientist Tech
中々面白い装置。
電磁誘導を利用して振動エネルギーを電気エネルギーに変えるらしい。
大きさは角砂糖サイズ(7mm×7mm×8.5mm)と非常に小さい。
無論生じる電力は大したことは無いが、ワイヤレスセンサーや医療用インプラント機器の電源への応用を検討中だとか。
動物に付ける発信機とかに利用できたら面白そうだな。
posted by 黒影 at 00:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | サイエンスニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月28日

実用間近のブレイン・マシン・デバイス

先週欧米方面で結構大きく取り上げられた日本発のニュース。
国内では昨年11月にニュースになっていたが、取り上げた記憶がないので紹介してみる。

Hitachi: Move the train with your brain - Yahoo! News
HATOYAMA, Japan - Forget the clicker: A new technology in Japan could let you control electronic devices without lifting a finger simply by reading brain activity.

The "brain-machine interface" developed by Hitachi Inc. analyzes slight changes in the brain's blood flow and translates brain motion into electric signals.

日立:脳波で電車模型を動かす
日本、鳩山の日立基礎研究所にて ― クリッカーのことは忘れよう
日本の新技術は、指を動かすことなく脳活動を読み取るだけで電子機器を制御する事を可能にした。

日立製作所が開発したブレイン・マシン・インターフェースは、脳内のわずかな血流の変化を読み取り、脳の動きを電気信号に変換する。


国内でこの手のインターフェースの研究をしているのは日立とホンダが中心で、今回紹介するのは日立の方。

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2007年05月17日

人機融合

Via Wired
news : 人間と機械の融合、その最前線(1)

Wiredはこの手の人機融合ネタには滅法強いのだ。

2を待って記事を完成させようかと思うので、とりあえず場所だけ確保。
posted by 黒影 at 03:40 | Comment(1) | TrackBack(0) | サイエンスニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする