組換え微生物を共生細菌として免疫防御に利用しようとする発想は非常に面白い。
BBC NEWS | Health | Bacteria modified to combat HIV
(via 日替わり科学news:エイズ撃退大腸菌 [ EP: end-point 科学に佇む心と身体])
HIV感染は多くの場合腸や生殖器の粘膜から起こる。
そして通常このような粘膜は共生細菌の層によって覆われている。
そこでこの研究では、腸内細菌の一種である大腸菌にHIVの感染を阻害するタンパク質を作らせることでHIV感染のリスクを減らそうとしている。
マウスによる実験では一応効果はあったようだ。
無論この方法に問題がないわけではない。
どんな予防法もそうではあるが、この方法もHIV感染のリスクを多少下げてくれるだけであり
完全にHIV感染を防げるわけではない。
性的接触による感染を防ぐためであればコンドームでも使った方がまだリスクは小さくなる。
しかしHIV感染を予防するタンパク質を混ぜ込んだゲルだのなんだのと予防手段はいろいろ出回っているが、
こういう毎回使用しないといけない予防法は面倒だからと忌避されがちな現実がある。
共生細菌を組み換えてHIV防御に使うのはあくまでも最後の防壁であり、万一のリスクを減らすためのものだ。
研究者等は、これは主にHIVが爆発的に広がっている発展途上国向けの予防法だと言っている。
こういった国々では貧困層が多く、知識の不足や社会制度の不備、風俗の問題もあって
そもそも感染予防対策がまともに取られていない。
またこうした人々は高価な治療薬を手に入れることもできない。
こういった悪循環を少しでも減らすためには、このような方法も役に立つだろう。
ところでこの方法、インフルエンザの予防なんかにも応用できないものだろうか?
喉の粘膜にも共生細菌はいるから原理的には可能だと思うのだが。
それとも感染阻害剤を混ぜたトローチとかの方がいいのかな?