「毒性学」という学問がある。
あらゆる物質の毒性を調べる学問だ。
毒性学の定義に従うと、あらゆる物質は毒である。
例えば水。
人は水無しでは生きていけない。
しかし毒性学の立場から見ると、水ですら人体への毒性を持っている。
水に毒が溶けているという意味ではない。
純粋な水でさえ毒であるということだ。
もっとも、水を飲む時に「これが毒なんだ」と悩む必要は無い。
水の「致死量」は体重65〜70キロの成人男性で約10リットル。
普通に暮らしていて、10リットルも水をがぶ飲みする機会などありえない。
無理に飲もうとしたところで、救急車の世話になるのが落ちだ。
これはいささか極端過ぎるので
身の回りの物質でもう少し例を挙げてみよう。
砂糖:1kg
塩 :200g
コーヒー:100杯
醤油:600〜800ml
ウイスキー:500ml(個人差有り)
個人差もあるが、これだけの量を一気に摂取すると人は死ぬ。
余談だが、アルコールの致死量は結構低い。
しかも個人差が大きいため、くれぐれも飲みすぎにはご注意を。
話を戻そう。
これらをみても、「摂り過ぎは何でも体に悪いという当たり前のことだ」
と思う人も多いだろう。(副作用は「死」だが)
普段当たり前に食べている物だから、「毒」と言われてもピンと来ないと思う。
「毒」というものは、ある量を超えた瞬間から「毒性」を発揮する。
この「毒性」が現れる限界量のことを「閾(しきい)値」と言う。
閾値を超えるまでは、毒性は現れない。
そして、ここが何よりも肝心なところだが
”どんな食品にも「閾値」が存在する”のだ。
それゆえに毒性学では「あらゆる物質が毒である」と定義する。
大抵の物質は閾値が非常に高く、生活上問題にならないのだが
閾値が非常に低い物も存在する。
つまり、少量で死に至るモノ。
これが一般に認識されている「毒」だ。
一方、常識的に考えてありえない量を摂取しないと死なない物。
これは一般には無害な物だと考えられている。
しかしトリカブトやジキタリスのような毒草も
昔は薬として使われていた程で、適量用いれば毒も薬となる。
摂取量が毒かそうでないかを決める訳だ。閾値についてもう少し詳しく書いておこう。
閾値には個人差があると先程書いたが
個人差以上に種族間の差が大きい。
ある生き物には何とも無い食べ物、何とも無い量でも
別の生き物には猛毒となる場合がある。
ペットを飼っている人なら知っていると思うが
「ペットに食べさせてはいけない食べ物」というのがあることをご存知だろうか?
代表例がタマネギだ。
タマネギ(ネギ類)に含まれる有機チオ硫酸化合物を
イヌやネコが食べると赤血球が破壊され、貧血を起こす。
調理済みであっても毒性は消えないので
ハンバーグのような食品を誤って与える事の無いよう注意が必要だ。
(注:ニンニクもダメ)
他にもチョコレートも(与える人はいないと思うが)イヌにとっては有害だ。
お茶やコーヒーなどカフェインを含んだ食品も与えてはいけない。
人にとっては健康食品でも、他の動物にとっては有害というものはかなりある。
何でもかんでも動物に与えないよう注意が必要だ。
以上のように、ある物質が生き物に与える影響は種ごとに異なる。
蚊取り線香が人には効かないのも似たような理屈だ。
今回の話をまとめると
1.あらゆる物には毒性がある。
2.毒性は、閾値を超えたときに現れる。
3.閾値は生物によって違い、ある生き物にとっては普通に食べられる物も
別の生き物にとっては毒になる事がある。
次は普段食べている食事に含まれている「毒」の話をしようと思う。
毒の話2 ―食物の中の毒―
<2006/11/07追記>
水の致死量関連で勘違いをしている部分があったので別エントリにて訂正。
・毒の話1.5―水の致死量10リットルのネタ元を調べる―
2004年10月26日
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ありがとうございます。
コメントありがとうございます。
毒の話は後2、3回続く予定なので
またのぞいてみてください。
アカデミックなネタが大好きです。
続編も期待します。
気付くのが遅くなって申し訳ありませんm(_ _)m
>続編も期待します。
そういっていただけると張り合いがあります。
いい記事を書けるよう頑張りますね。
毒をどうしたいのかによって多少変わってきますが、やはり薬学部の方がいいと思いますよ。
チョコレートの致死量より、食べ過ぎで鉛中毒が
恐いとか、本当なのかな?
一日に500g以上の摂取は危険とか・・・・
本当なのかな?