槍玉に挙げられた県教委は、特定の宗教表現を含んでいるということすら意識していなかったのだと思うよ。
道徳教育:県立高校のテキスト「宗教教育に当たる」 県高教組が是正要求 /茨城(毎日新聞) - Yahoo!ニュース
県教委が作成した県立高校の道徳テキストに特定の宗教教育に当たる部分があるとして、県高校教職員組合は21日、必要な是正措置を求めて県教委に申し入れた。
県高教組が指摘したのは、道徳テキスト「ともに歩む」に取り上げられた「生命はゼロからつくれない」。遺伝子の世界を扱った内容で、村上和雄筑波大名誉教授の著書「生命のバカ力」(講談社プラスアルファ新書)から引用している。
テキストの文中に「奇跡的な現実を前にしたら、どうしてもサムシング・グレートのような存在を想定しないわけにはいかなくなります」との表現がある。県高教組は村上名誉教授が天理教道友社から出した著作で「サムシング・グレート」を「親神様のこと」などと説明していると指摘し、道徳のテキストを用いることは憲法の信教の自由や教育基本法に違反するとしている。
県教委高校教育課は「テキスト作成委員会や道徳教育推進委員会で、どういう経緯で作品が選ばれたのか事実関係を調べる」としている。
おそらく県教委の中の人に、村上氏のファンがいたのだろう。
前にも書いたことだが、村上氏の「ポエム」はロジックよりもフィーリングを重視する人にとってはすこぶる受けが良い。
「理解を超えたもの=超越者の介入によるもの」という論理は、このブログでもID論関係の記事で再三取り上げてきた"God of the gaps"(隙間の神)理論であり、こんなものは何も語らずに思考停止しているに等しいのだが、彼らはそれに気がつかないのだなあ。
宗教云々以前の問題として、道徳の根拠に思考停止の論理を使うのは色んな意味でまずいと思う。
ちなみに「生命はゼロからつくれない」というのは氏の宗教的信念から来る持論であり、
彼の著書はもちろんのことながら、新聞のコラムなどでも再三に渡り主張している。
一例としてこのブログでかつて批判したID論翼賛記事などが挙げられるだろうか。
幻影随想: インテリジェント・デザイン論(ID論)にはまっちゃった?筑波大名誉教授
あるいはこんなものもあったな。
「いのち」はなぜ尊いのか
これまた当ブログでかねてよりフォローしているネタだが、生命の人工合成というテーマは合成生物学という分野で今まさに成し遂げられようとしているものであり、おそらく後数か月もすれば、ベンター博士らのチームによって人工合成されたゲノムを持つ微生物のニュースが発表されるであろうと目されている。
時代は村上氏のポエムの数世代先を進んでいるのである。
分子生物学者の肩書でモノを語るなら、せめてこの程度はフォローしておいて貰いたいものだと思う。
<2/25追記>
Via 北斗の拳で教える思いやり - NATROMの日記
道徳教育から浸食する疑似科学:Apes! Not Monkeys! より
千葉県高校教職員組合の会報で、問題の部分を引用して批判している。
http://www.mito.ne.jp/~iba-kou/kikanshi/970.pdf
新聞記事には詳細が無いが、かなりきっちりと批判しているので未読の人はぜひ。
産経のID論翼賛記事と同レベルの内容を無批判に(おまけに都合の悪い部分は隠匿して)載せちゃっているというのが分かる。
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