「人類の起源」のカギ、「許昌人」が考古学の空白埋めるか―河南省許昌市(Record China) - Yahoo!ニュース
2008年1月27日、河南省許昌市で昨年12月に出土した「許昌人」と呼ばれる8万年〜10万年前の人間の頭骨の化石は、専門家から「人類の起源に直接つながる大発見」と大きな注目を集めている。「中国新聞ネット」が報じた。
出土したのは許昌市北西部にある霊井遺跡。昨年12月17日に頭頂部など16片が出土し、ほぼ完全な頭骨が復元された。保存状態も大変良好という。霊井遺跡は1965年に動物の化石や細石器が大量に出土し、考古学の世界では早くから重要視されていた。【 その他の写真 】
「許昌人」は出土後、北京の中国科学院古脊椎・古人類研究所に移送され、その後北京大学の都市と環境学部でOSLによる年代測定を実施。10数人の専門家による鑑定の結果、8万年〜10万年前の化石であると確認された。
この化石、おそらく旧人だと思われるが、もしこれが新人だったら原生人類の分布域拡大の歴史が大きく塗り替えられる。
もちろん旧人だとしても、旧人の化石はアジアでは少ないので貴重な考古学資料なのは変わらない。
しかしながら、なぜか中国の考古学界はこれを多地域進化説の証拠だと考えるおかしな方向に。
人類の起源に関しては現在、「アフリカ起源説」と「多地域進化説」の2通りが唱えられている。中国が唱える「中国古人類連続進化説」もこの「多地域進化説」に属しており、200万年前の「巫山人」、115万年前の「藍田人」、50万年前の「北京原人」、10万〜20万年前の「遼寧・金牛人」、1万〜4万年前の「北京・山頂洞人」がそれをほぼ実証していた。ところが5万〜10万年前の人類化石だけが唯一未発見のままだった。
「許昌人」はこの「空白期間」を埋めた大きな快挙とされ、15年前に南京で発見された直立原人「南京原人」に継ぐ重大発見として大きな注目を集めている。(翻訳・編集/NN)
いやいやいや、多地域進化説はゲノムの解析によってほぼ完全に否定されていますから。
現生人類とは別系統のミトコンドリアDNAなりY染色体なりを見つけないとお話になりませんって。
参照:暗礁に乗り上げるヒトDNAデータベース構築計画
「許昌人」続報 雑記帳/ウェブリブログ
じっさい、中国人研究者が主体となって、現生人類のアフリカ単一起源説を強力に支持する研究が提示されています(Yuehai Ke et al.,2001)。この研究は、163もの集団から12127人分のY染色体を採取し分析したもので、膨大な数の標本が用いられたということで、単一起源説をさらに確固たるものにするうえで、大きな役割を果たしました。
数年前に中国人研究者が発表した研究では、アジアオセアニア圏を中心に12000というものすごい数のY染色体を調べ、その全てが4〜9万年前にアフリカで出現した一つの変異(M168)に収束することを証明した。
おそらく全てのアジア人男性はこの「アダム」を祖としている訳で、多地域進化説は既に命脈を絶たれたといってもいい。
こんな記事が横行するほど「中国古人類連続進化説」が幅を利かせているようじゃ、向こうの遺伝学者は大変だろうなあ。
そんなのを取り上げるくらいなら、同朋のこの偉大な研究成果をもっと取り上げればいいのに。
日本でもこの論文取り上げるウェブサイトは全然ないので、ちょっと論文を紹介してみる。
人類史や進化人類学に興味がある人は是非お読みください。
・African Origin of Modern Humans in East Asia: A Tale of 12,000 Y Chromosomes -- Ke et al. 292 (5519): 1151 -- Science
・Human Y-chromosome DNA haplogroup - Wikipedia, the free encyclopedia
・Haplogroup CR (Y-DNA) - Wikipedia, the free encyclopedia M168のグループ