2007年08月24日

不作為と疑似科学が南アフリカ国民のAIDS事情を悪化させる

疑似科学は人を殺す。
忘却からの帰還より。
時間に余裕のある方は、ぜひリンク先の一連のエントリをご覧ください。

忘却からの帰還: ニセ科学「AIDS再評価運動」とID理論
米国方面に「HIV(ヒト免疫不全ウイルス)はAIDS(後天性免疫不全症候群)の原因ではない」と主張するAIDS reappraisal movement(AIDS再評価運動)あるいはAIDS dissident movement(AIDS反体制運動)あるいはAIDS denialism (AIDS否定主義)と呼ばれるニセ科学がある[wikipedia: AID reappraisal]。他の医学系のニセ科学と同じく、このAIDS再評価運動も、「本来受けるべき治療を忌避することで死なずに済んだかもしれない人が死にいたる」という被害を出している。

忘却からの帰還: ニセ科学「AIDS再評価運動」〜南アフリカの場合〜
Panda's Thumbの執筆者のひとりDr. Tara C Smithが、2007年8月13日に個人ブログAetiologyで、ニセ科学「AIDS再評価運動」に絡んで、南アフリカ共和国の副厚生相解任のニュースを取り上げた。

今日はそのエントリをたどってみることにする。

主要な登場人物は3名:


Thabo Mbeki 南アフリカ共和国大統領[1999〜]
HIVはAIDSの原因ではないというAIDS再評価運動を擁護する

Manto Tshabalala-Msimang 南アフリカ共和国厚生相
抗レトロウィルス剤によるAIDS対策に消極的で、レモン・ガーリック・テービルビートの効用を主張する。

Matthias Rath, MD
ガンやAIDSに関するニセ医学を広めている。Dr. Rath Foundation South Africaは抗レトロウィルス剤を有害だと宣伝

忘却からの帰還: HIVはAIDSの原因ではないという南アフリカ大統領は一歩も引かない
南アフリカの不幸は、アパルトヘイト撤廃の頃にHIV/AIDSの流行が拡大したこと。撤廃と和解という課題をかかえた最後の白人政権de Klerk大統領[1989-1994]と最初の黒人政権Nelson Mandela大統領[1994-1999]はAIDS対策に気が回らず、妊娠女性のHIV感染率は25%を上回ってしまった。

さらに、不幸だったことは、現政権Thabo Mbeki大統領[1999-]が、HIVはAIDSの原因ではないというAIDS再評価運動な考えを信じていること。そしてMbeki大統領は政権発足時に、ガーリックやレモンでAIDSが防げるのだと主張するDr Manto Tshabalala-Msimangを厚生相に任命したこと。

そのためAIDS対策は遅滞し、その結果が、国民のHIV感染率は10%を超え、妊娠女性の感染率30%になるという事態だった。


この記事へのコメント
  1. 追加

    HIV否定論者たちがオンラインで誤報をひろめている−影響は致命的である
    http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20070821#p3

    ニンニクはARVs(抗レトロウイルス薬)の代わりにはならない
    http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20070823#p9
  2. Posted by 黒影 at 2007年08月24日 18:08
  3. こんにちは
    この問題については科学者の間ではずっと問題になっていたのですが。

    2000年の時点で私が書いたものは以下です。
    http://hw001.gate01.com/uneyama/aids.html

    疑似科学は放置してよいものとは思いません。
    マスコミの不勉強はもちろん科学者の不作為も非倫理的だと思います。
  4. Posted by uneyama at 2007年08月26日 10:19
  5. 以前NHKで、欧米の製薬会社が暴利をむさぼるからHIVの薬が途上国に行き渡らない、とかツツ大主教が言ってて、コピー薬はたくさんの命を救うから合法だとNHKは言いたいんでしょうけど、それをやったら誰もHIV薬なんか開発しなくなるってば、と思ってたら大統領はもっと電波だったと言う展開だったのですね。
    それと、なんで途上国でHIV患者が多いかと言えば、治安が絶望的に悪くてそもそも強姦で性病が蔓延しやすいという、そういう視点がないのは不思議というか。
  6. Posted by SLEEP at 2007年08月26日 12:56
  7. >uneyamaさん
    こんにちは。

    私もこの問題については数年前から知っていたのですが、最近のKumicitさんの一連のエントリを読んで、改めてシャレにならないと思い自分のブログでも紹介することにしました。
    私は医療に関わる人間じゃありませんが、情報伝播のハブになるくらいはできますしね。

    >SLEEPさん
    おまけに教育が十分でないので、感染症や予防・治療に関する知識がない人が多いですしね。
    だから「処女とSEXするとAIDSが治る」なんていう迷信が払拭されない。
    南アフリカ:処女を巡る神話とHIV/AIDS
    http://www.ajf.gr.jp/lang_ja/db-infection/2002042401.html

    医療制度が十分でなく貧困層も多いので、感染しても治療ができない人が多いというのも問題悪化の一因でしょうか。
  8. Posted by 黒影 at 2007年08月26日 16:08
  9. Kumicitも医療関係者ではありませんので、統計値くらしか言及できませんが...

    その統計値から見て、今や、医療施設がHIV感染者数/AIDS死亡者数によって対処しきれなくなっているように見えます。

    南アフリカの健康関連統計値は
    http://www.nationmaster.com/red/country/sf-south-africa/hea-health&all=1
    HIV AIDS > People living with HIV AIDS 5,300,000
    HIV AIDS > Deaths (2003est) 370,000
    http://www.nationmaster.com/red/country/sf-south-africa/peo-people&all=1
    Death rate 22.45 deaths/1,000 population
    http://www.nationmaster.com/red/country/sf-south-africa/peo-people&all=1
    African countries by population density > population 43,647,658

    以上から、年間死亡数100万人程度のうち37万人がHIV/AIDSによるもの。死者数に比例して医療施設の負担が大きくなると仮定すれば、HIV/AIDSによって負担が1.5倍になっていることになります。

    また、そのことが、報道された病院の惨状を招いていたかもしれません。
    Why Frere’s babies die
    http://www.dispatch.co.za/2007/07/12/Easterncape/aalead.html

  10. Posted by Kumicit at 2007年08月28日 02:52
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