2007年07月14日

中国産食品問題でNYTの酷い中国擁護記事を見た

最近流行の中国産食品問題。
Yahooにも「中国産食品・薬品の安全性」トピックスが立っているので、毎日ニュースを追いながら唖然としていたのだが、昨日NYTがあまりに酷い擁護記事を出してきたので別の意味で呆然とした。

China Not Sole Source of Dubious Food - New York Times
時事通信が要約を出しているので、英語がダメな人はこちらからどうぞ。
Yahoo!ニュース - 時事通信 - 汚染食品、中国産に限らず=世界各地から続々−米当局調査
 【ニューヨーク12日時事】中国産食品の安全性について世界的に不安が強まる中、12日付のニューヨーク・タイムズ(電子版)は、2006年に禁止薬剤の検出などで米国への食品輸入が差し止められた回数は、中国産よりもドミニカ共和国やデンマーク産の方が多かったと報じた。汚染食品のグローバル化は明らかで、消費者は常に危険にさらされていると言えそうだ。
 食品医薬品局(FDA)は先月、米国で養殖魚への投与を禁じている抗菌剤が使用されているとして、中国産の養殖ウナギ、ナマズ、エビなどの輸入規制を決めた。しかし、同紙によると、FDAの統計では、昨年中の中国産魚介類の輸入差し止めは計391回で、ドミニカ共和国産食品の817回、デンマーク産キャンディーの520回を下回った。
 このほか、サルモネラ菌に汚染されたインド産香辛料や、食用にできないほど不潔なメキシコ産のカニ肉、唐辛子なども見つかったという。元FDA職員は同紙に対して「(汚染食品は)一国の問題ではない。まさに地球規模に拡大している」と話している。

時事の記者はちゃんと元記事読むように。
NYT記者の言葉のトリックにあっさり引っ掛けられやがって。
まあある意味NYTの言いたい事はうまくまとまっているわけだが。
昔から中国シンパで有名なNYTだが、ここまで酷い記事は久しぶりに見た。
以下解説。
 
 
◆まえおき
さて、このNYTの記事の酷さを説明する上で重要なのが、記事に付けられた一枚の表である。(下図参照)
FoodRefused.gif
表を翻訳テキスト化
国境で輸入拒否された食品
F.D.Aによって過去一年間に輸入拒否された食品の分析は、違反の種類の多さと広がりを示す。
F.D.A.の輸入拒否を受けた上位国
2006/07〜2007/06
輸入拒否回数
2006/07〜2007/06
最も多い食品違反と回数
2006/07〜2007/06
食品輸入総額
2006
インド1763サルモネラ(スパイス、種、エビ)25612億ドル
メキシコ1480不衛生(キャンディ、唐辛子、ジュース、魚介類、チーズ)38598億ドル
中国1368不衛生(農作物、魚介類、豆腐、麺類)28738億ドル
ドミニカ828農薬(農作物)7893億ドル
デンマーク543栄養性分表示の問題(キャンディ)854億ドル
ベトナム533サルモネラ(魚介類、黒コショウ)11811億ドル
日本508書類の不備(清涼飲料水、スープ、豆)1435億ドル
イタリア482書類の不備(豆、瓶詰め食品)13829億ドル
インドネシア460不衛生(魚介類、クラッカー、キャンディ)12215億ドル


良くまとまっていて分かりやすい内容の表だが、困った事に記事中に出てくる数字と見事に一致しない。
それどころか記者は、記事中で表の数字を無視してデタラメぶっこいている。
素敵な数字のごまかしが散りばめられていて、読んでいると笑えてくるほどだ。
米国内でも相当批判されてるんじゃないか、この記事?


◆ダウト1:全体と部分の無意味な比較
さて、この記事内で使われているトリックその1は、全体と部分の比較を行ってどちらが大きいか錯覚させる数字のごまかしだ。
具体的にはこの下り。
China has had much-publicized problems with contaminated seafood — including a temporary ban late last month on imports of five species of farm-raised seafood from China — but federal inspectors refused produce from the Dominican Republic and candy from Denmark more often.

For instance, produce from the Dominican Republic was stopped 817 times last year, usually for containing traces of illegal pesticides. Candy from Denmark was impounded 520 times.

By comparison, Chinese seafood was stopped at the border 391 times during the last year.

意訳するとこんな感じか。
『中国は良く汚染された海産物の記事で問題視されるけど、ドミニカやデンマークの方が、農作物とかキャンディとかもっと差し止められているんだよ。だから中国産だけが問題なんじゃないよ』

…ドミニカ産食品の差し止め回数(全体)と中国産食品差し止め数(魚介類だけ)を比較してどうするよ?
これはデンマークに関しても同じ。キャンディと魚介類を比較してもなあ。
せっかくインドやベトナムにも魚介類が出てくるのに、どうして同種比較せずに都合のいい数字だけを取り上げるのか。
無論読者をミスリードするためである。

そもそも表と本文中で数字が全然あっていない。
デンマーク産キャンディの差し止め件数は、表では85件、本文中では520件とえらい違いなんだが。
一体どちらの数字を信じたらいいのかな?
何より差し止め理由は表によると栄養成分表示の不備とあって、汚染魚介類と比較してどうすんだという感じだ。
表と不一致な数字は記事全編に渡っているというか数字の扱い方が酷すぎるので、記事自体信憑性の無いものと考えていい。
「中国産だけが問題じゃない」という部分だけは同意するが。


時事は釣られてこんな事を書いているが、全体の数字と部分の数字を勘違いして見事に踊らされている。
これ書いた記者は逝って良し。
 【ニューヨーク12日時事】中国産食品の安全性について世界的に不安が強まる中、12日付のニューヨーク・タイムズ(電子版)は、2006年に禁止薬剤の検出などで米国への食品輸入が差し止められた回数は、中国産よりもドミニカ共和国やデンマーク産の方が多かったと報じた。汚染食品のグローバル化は明らかで、消費者は常に危険にさらされていると言えそうだ。



◆ダウト2:ご都合主義で持ち出される、ことごとく表と合わない数字
訳の分からない事に、表に出てくる数字は本文中には一度も出てこない。
一体何のための図表だ。
その代わりといっては何だが、随所で微妙に違う数字が出現する。
The F.D.A. inspects foreign shipments of food, drugs, cosmetics, medical devices, animal drugs and some electronic devices.

From July 2006 through June of this year, agency inspectors stopped 2,723 shipments of all such items from China, followed closely by India, 2,620; Mexico, 1,876; and the Dominican Republic, 887.

食品だけでなく医薬品や化粧品、動物用薬品を含めた摘発件数らしい。
こっちの数字なら中国は2006〜2007年度のF.D.A.の摘発件数トップだな。おめでとう。
この結果には誰もが納得だろう。
余談だが中国やインドからはアメリカ向けに代替医療の薬物(漢方、アーユルヴェーダetc.)の輸出があり、結構問題を起こしていたりする。
#この辺の話は以前紹介した健康食品・中毒百科に詳しい。
食品の話のはずがどうしてこんな数字を出してくるのかさっぱり分からんが。

続く部分ではまた弁解が始まる。これがまた酷い。


◆ダウト3:関係ない数字で印象操作
But China sends more products into the United States than any of those countries, at least in terms of the dollar value. In 2006, for instance, China shipped $288 billion in merchandise to the United States, compared with $198 billion from Mexico; $22 billion from India; and $5.3 billion from the Dominican Republic, records show.

ここで弁解のために持ち出された数字は、米国の各国からの2006年度『総輸入額』だ。
その内訳は食品だけでなく工業製品やら何やら全て含まれている。
無論こんな数字を食品の安全性の議論に持ち出す意味はまったく無い。

おそらく言いたい事は、『これだけ輸出しているんだからちょっとくらいはおかしなものも混ざるよ。許してね』という事なんだろう。
表に食品輸入総額が載っているにも関わらず、わざわざ関係の無い数字を引っ張り出してまで印象操作とは恐れ入る。


◆総評
食品に限らず最近日米で中国製品が問題になっているのは、金のためにはルール違反も辞さず、それどころか人の命すら何とも思わないかのような違法行為を繰り返す業者が中国には相当数存在する事が広く知られるようになって来たからだ。
そしてその背景にある中国社会の腐敗っぷりも含めて世界から注目を集めているわけで、このNYTの記事は言い訳にしても酷すぎる上に的を外していると思った。
とりあえず表と本文中の数字が一つも合っていないのは酷すぎ。


◆関連記事
幻影随想: 捏造記事の書き方講座
そのうちこれもバージョンアップしようか。
posted by 黒影 at 00:34 | Comment(10) | TrackBack(0) | 時事問題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
  1. 時事通信、共同通信等が中国様な記事を書くのは、知っている人の間では有名です。
    今回の記事に関しても、時事の記者は元記事をちゃんと読んで知っていたと思います。

    この本がオススメです。
    「反日マスコミ」の真実
    http://www.amazon.co.jp/gp/product/4775508385

    日本のマスコミが中国様な報道をする理由とその歴史的背景がわかります。
    朝日や毎日、TBSはもちろん、NHKが中国にべったりな理由も書いてあります。
    NHKは総合とBS1が保守で、教育とBS2が共産派だったけど、海老沢会長の退陣で共産派が強くなり、この数年のNHKの偏向報道ひどくなったことも。
    2chでは「また朝日か」「またTBSか」とよく言われ、朝日やTBSの偏向報道のひどさを知っている人は非常に多いですが、その背景を知っている人はまだまだ少ないと思います。
    この本を読むと日本のマスコミの本当の怖さがわかります。
  2. Posted by 台風 at 2007年07月14日 19:31
  3. 多分元ネタはこれだと思うのですが。
    http://www.fda.gov/ora/oasis/ora_ref_cntry.html

    これを根拠に安全性がどうこうという議論をするのは全く意味無いんですよ。
    日本もそうですが、基準値そのものが安全性とは関係のないものがたくさんあるので。
    それぞれの国で、輸出入の多い組み合わせと違反の多い組み合わせがある、というだけのことです。
    物流も情報も世界中に広がるので問題が大きくなっているのですが、無闇に騒ぐのもどうかと思います。
  4. Posted by uneyama at 2007年07月15日 17:59
  5. NYタイムズとワシントン・ポストは中国びいきで有名ですね。アメリカの朝日新聞、毎日新聞みたいなかんじでしょうか
  6. Posted by イチロー at 2007年07月17日 01:29
  7. >台風さん
    はじめまして。
    >時事通信、共同通信等が中国様な記事を書くのは、知っている人の間では有名です。
    >今回の記事に関しても、時事の記者は元記事をちゃんと読んで知っていたと思います。
    最近すっかり足が遠のきましたが、一応私もねらーなのでその手の話はよく聞き及んでおります。
    このブログは一応科学がメインなので、あまり深入りするつもりはありませんが。

    そういえば以前こんな事を書いたのを思い出しました。
    http://kurokage.seesaa.net/article/8504990.html

    > uneyamaさん
    >これを根拠に安全性がどうこうという議論をするのは全く意味無いんですよ。
    >日本もそうですが、基準値そのものが安全性とは関係のないものがたくさんあるので。
    そうですね。
    NYTは一体何がしたかったんでしょうか。

    >イチローさん
    NYTはともかく、ワシントンポストは保守系で中国には批判的だったと思います。
  8. Posted by 黒影 at 2007年07月18日 22:00
  9. 中国批判してる人は何がしたいんですか?
    批判してその先何をしたいのかそこが
    重要だと思うんですけどね。

    それからマスコミの偏向なんてものは
    産経も読売も含めて全部でしょ?
    違いますか?

    また反日の定義はどこにあるんですか?
    これはかなり難しいと思うんですけどね。




  10. Posted by FX at 2007年07月24日 18:28
  11. >FXさん
    とりあえず落ち着いてください。
    このエントリもコメント欄も、「マスコミ批判」ではあっても「中国批判」ではありませんよ。
    #中国に対する揶揄はありますけどねw

    それと私が批判しているのは「捏造」です。
    そこのところ勘違いしないでください。
    反日親日というベクトルには正直言ってあまり興味ないです。
  12. Posted by 黒影 at 2007年07月24日 22:29
  13. このNYタイムズの記事って、ノリミツ大西記者ですか?

    >Posted by FX at 2007年07月24日 18:28

    少し・・・頭冷やそうか・・・
  14. Posted by JSF at 2007年07月25日 19:42
  15. 表自体は面白いのにねえ。
    日本とイタリアが仲良く書類の不備ってのが笑えるし。英語苦手だから?w
    1位のインドはサルモネラでは仕方ないし、メキシコの2位は順当、じゃあ中国はって、突っ込めるのに惜しいですよね。
  16. Posted by SLEEP at 2007年07月26日 13:25
  17. 中国産の批判はその通りだと思いますよ。というか、批判するべきは批判するべきです。

    この手の話題で一番問題なのは、「だから中国や中国人は劣っている」という見方をする人です。これらの問題を民族、人間的な劣等性と結びつける嫌中がいやなんと多いことか。すべては発展、発達の度合いの問題で、しかも日本やその他の国々にも共通していた、または今でも共通する問題にもかかわらず、それを無視する人が多い。

    批判する側、擁護する側双方に、自己の心象にとって都合の良い事象、問題、論拠を持ってくることに最大の問題があると思います。つまり、日本での中国産論議は結構かみ合ってない部分が多いと思う。
  18. Posted by とおりすがり at 2007年08月12日 15:08
  19. >とおりすがりさん
    おっしゃられるとおりで民族や人間性は問題じゃないでしょう。本当の問題は平気で嘘をつき、しかもだれも責任を取らない共産主義というシステムです。
    かつてソ連や東欧がいかにめちゃくちゃをやりながらもそれを外部に隠蔽していたか我々は知っています、でもなぜか中国はそうじゃないと思ってる人が多いのは不思議ですね。
  20. Posted by SLEEP at 2007年08月13日 00:58
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