ライアル・ワトソンが著書「生命潮流」の中で取り上げた、
「瀬戸内のある小島で一匹のサルがイモを洗う習慣を身に付け、それが集団内に広まっていくと
ある閾値を超えた次の日には群れ全体がイモを洗うようになっていた。」
「さらにはまったく交流がないはずの他の島までこの文化が伝播した。」
といういかにもあれげな主張だ。
当然ながらこの話は真実どころかデタラメもいいところなのだが
ニューエイジ的な夢を見る人には堪らない主張だったらしく、一時は一世を風靡した感がある。
さて、それではまずこのリンク先の文章を読んで頂こう。
幸島でサルの研究を行ってきた京都大学霊長類研究所所長の河合教授のコメントが載っている。
僕のおしゃべり 01.05.15 Vol.19 百匹目のサル
「あれはライアル・ワトソンの作り話。そんな話は聞いたことがなかった」
「彼が百匹目のサルというテレパシー的な現象があるというから注目を集めたんですよ。そこが彼のカリスマ的なところでしょう。その話が面白いから他の人も使いたがる。百人の人が信じたら世界は変わるって言ったら宗教家はみんなその話したがるでしょうなぁ。世界同時革命とイモ洗いはおんなじ。ある閾値を越えたらみんなパーッて変わるって言ったらカッコいいですしなぁ」(笑)
まあ結論からいうとライアルの作り話、真っ赤な嘘だったと言うことだ。
これだけでは「この河合教授が自分に都合の悪い事実をなかったことにしているのだ」と主張する人が現れかねないので、ライアル本人が既に作り話を認めているということをさらに追記しておく必要があるだろう。
Amazon.co.jp: ついに 【百匹目のサル】 の真相が判った!!
このリンク先で紹介されている本にライアルの言い訳が載っている。
英語ができるなら11、12辺りを、ダメでも10を読めばいい。
(それでも信じるんだというカルトの域に達しちゃった人も多いようだが)
つまりは事実無根の与太だったと。
結局人は自分が信じたい物を信じるということなのだろう。
「ある閾値を超えて何かが広まればそれは地球をも動かす」という夢はそれだけ魅力的らしい。
この100匹目のサルの話を信じるメンタリティというのは
前エントリで取り上げた「水からの伝言」を信じるメンタリティと非常に近い。
そしてそれは容易に疑似科学詐欺にひっかかるメンタリティだ。
(というかこの問題教師100匹目のサルもまともに信じてる_| ̄|○)
義務教育の教師も含めて教育界の科学リテラシーがもうちょっと何とかならんかと思う今日この頃。
◆続き
・思わず苦笑した話
・100匹目のサルの町・続報
【疑似科学・ニセ科学・オカルト・トンデモの最新記事】
100匹目のサル、竹内久美子、波動、TOSS、水商売などの底を流れる似非ながらも科学を信奉する態度はどこかで断ち切らないと、とんでもないところまで行ってしまいそうで恐ろしく思います。
TBありがとうございます。
「疑似科学をいかに見抜き、排除するか」というテーマはサイエンスライター講座でも大きなポイントになりそうですね。
関連情報のあるサイトを一つメモ
ライアルが捏造の下敷きにした河合氏の論文名が書いてあります。
http://www.geocities.jp/wakashimu/yota/saru.html
>それにしても100サルについては引用文献を明らかにしているのはどうしたことだろう。結果として、実際に一次文献にあたった者達により、ワトソンは事実をアレンジしまくって捏造しているとばれてしまったのだ。まさか一次文献をあたる者がいるはずない。などとたかをくくったか、もしくはこれほど話題になるはずないなどとでも思ったのであろうか。
http://d.hatena.ne.jp/lovelovedog/20040421#p1
タイミングよく?安斎育郎氏が岩波新書で「だます心だまされる心」って出してますね。
問題教師に是非すすめたいですねえ。
おお、愛・蔵太さんもこれに関する記事を書かれていたんですね。
さすがによく情報がまとまっていてとてもわかりやすいです。
教えてくださってどうもありがとうございます。
騙されていたのね!
騙されていたのね!
っていうのも、与太話なんですか?
http://www.geocities.jp/wakashimu/yota/guriserin.html