2007年07月01日

合成生物学 ―生命を理解し、分解し、再構築する―

ちょっと前にID論ネタで産経新聞がトンデモ記事を書いた時に、
こんな事を書いたのですが…
幻影随想: インテリジェント・デザイン論(ID論)にはまっちゃった?筑波大名誉教授
「合成生物学」という文字通り人工生命の合成を研究する学問領域がある。
ここ10年ほどで成立した新しい学問分野だが、既に細胞様の構造物の合成に成功したり、代謝を行わせたりすることに成功している。今は自己増殖というところでつまっているらしいが、おそらくあと10年もすれば微生物のパーツからの再構成が可能となり、生物の1からのデザインが可能となっているだろう。
今はまだ小さい領域で人も金も足りていないから、「世界中のお金を集めて世界中の科学者を総動員」なんてやったら
案外あっさりと人工生命体が誕生するかも知れない。

合成生物学 - Wikipedia

最近こんなニュースが相次いで出されました。
 
 
 
WIRED VISION / Wired Science / 米国の研究所、合成生命体に関する特許を申請
米国のJ. Craig Venter Instituteの研究者たちが、細菌の最小ゲノムの構築に関して、米国特許を申請している。特許申請書によると、申請されたのは「タンパク質をコードする遺伝子の最小セットで、細菌の富栄養培地で自由生活性の有機体を複製するために必要な情報を備えている」という。

asahi.com: 細菌ゲノム完全入れ替え 人工生命へ一歩? 米チーム - サイエンス
 細菌の全遺伝情報(ゲノム)を別の種類の細菌のゲノムとそっくり入れ替えることに、米研究チームが成功した。有用物質を作る遺伝子などを持つゲノムを合成し、それを組み込んだ役立つ「人工生命」を作る技術に道を開く可能性があるという。28日付の米科学誌サイエンス電子版に論文が掲載される。

 ゲノムの入れ替えに成功したのは、ヒトゲノム解読の先駆者であるクレイグ・ベンター博士が代表を務める研究所のチーム。

Breakthrough Could Lead to Artificial Life Forms - Yahoo! News
Biologists hoping to one day whip up life from scratch say they are one step closer to their goal following the successful transplant of genetic material from one microbe species into the cellular body of another.

Outwardly, the new bacterium looks like its fellow microbes, but inside it carries foreign DNA and proteins.

“It’s equivalent to converting a Macintosh computer to a PC by inserting a new piece of software,” said study team member J. Craig Venter, who leads the J. Craig Venter Institute in Maryland where the research was conducted. Venter is known as the man who set up his own company and raced a government effort to fully sequence the first human genome.


生命科学はmolecular biologyからGenome、Proteome、そしてSystems Biologyと進歩して来て、生命現象の理解や生命のパーツへの還元(分解)が進みました。
こうなると次は生命を再構築して本当に現在の理解が正しいか確かめてみよう、さらにそれを利用してDesigned Creatureを作ってみようとなるのは当然の流れで、その最先端の分野が合成生物学"Synthetic biology"です。

そしてここ2週間程の間に出たこれらのニュースは、合成生物学の今後を考える上で結構大きな意味を持つのです。
ベンター率いるチームが、合成微生物の研究でかなりの成果を挙げているというのがまず一つ。
そして、合成生物学"Synthetic Biology"がポストシステム生物学"Systems Biology"となることがほぼ確定し、実験の上でのガイドラインだとか倫理基準だとかを作ろうという動きが本格化しつつあるというのが二つ目。
バイオ分野のビッグネーム、J. Craig Venterが関わっているとはいえ、こうもあっさり壁を乗り越えてくるとなにやら感慨深いものがあります。
あと5年もすれば最初の合成微生物が出来ているかもしれません。



合成生物学というのはこれまでのGemoneやProteomeと同じく、将来的には生命科学の基礎となるであろう分野なので、若手生化学者の人は今のうちからきっちりとフォローしておいたほうがいいと思います。
バイオインフォマティクス分野でも、合成生物学の生物設計に利用するソフトなんかがいずれ必要になってくるので、私もまた勉強しておかないと。

幻影随想: 合成生物学 フリー論文集


posted by 黒影 at 23:51 | Comment(0) | TrackBack(0) | バイオニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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