2007年06月23日

千島学説とその信奉者達

「確信というものは、知識のあるところよりも、知識のないところから生まれることが多い。あれこれの問題は科学では決して解明できないだろうなどと自信ありげに断言するのは、知識のある人ではなくて、無知な人々なのである。」
チャールズ・ダーウィン『人間の由来』


一月ぶりにMixiに行ったら、行き着けの疑似科学コミュに千島学説のトピが立ってました。
名前だけは以前目にした事があったのですが、今回改めて主張に目を通してみたところ、ステキに香ばしいのでエントリを立ててみることに。
 
 
 
公式ページによると千島学説とは…
『千島学説』は次の8大原理から構成されています。

第1原理 赤血球分化説  1932年発表 …畜産学粋…明文堂
(赤血球は凡ての体細胞の母体である)
第2原理 組織の可逆的分化説  1954年発表 …総合医学新書…医学書院
(飢餓・断食時には体細胞から赤血球へ逆戻りする)
第3原理 バクテリア・ウイルスの自然発生説  1954年発表 …岐阜大学新聞…
(バクテリア・ウイルスは一定条件下で自然発生する)
第4原理 細胞新生説 1950年発表 …科学…20巻10号
(細胞は分裂増殖しない。6つの形態で新生する)
第5原理 腸造血説  1954年発表 …骨髄造血学説の再検討…医学書院
(骨髄造血説は誤り。造血器官は小腸の絨毛である)
第6原理 遺伝学の盲点  1932年発表 …畜産学粋…明文堂
(生殖細胞は赤血球から。遺伝は環境を重視)
第7原理 進化論の盲点  1956年発表 …アカデミア…NO.32−34
(弱肉強食思想は行き過ぎ。進化の基盤は共存共栄である)
第8原理 生命弁証法  1959年発表 …アカデミア…NO.40
(生命現象を正しく観察するための科学方法論

『千島学説』は第1原理から第7原理まで、現代医学の「定説」を基盤から覆す超革新的理論です。
現代医学界が拒否反応を示したことは分からないではありません。しかし、余りにも盲点が多すぎる医学定説がこのまま信じ続けられるとき、人類自らが招いた環境破壊とあいまって、人類滅亡へのタイムリミットは一層短縮されることでしょう。
千島学説(新生命医学会)

前世紀の遺物であることを差し引いても、すばらしい電波具合にへそで茶が沸かせそうです。
ていうか21世紀の今ですら、この時代遅れのトンデモをまともに信じ込む人がいるから困ったものです。
どうも最近ホメオパ系あたりでまたじわじわと勢力拡大しているようなので、アラートを兼ねて取り上げておきますね。


この時代遅れのトンデモを宣伝しているのは、お茶の水クリニックの森下敬一医師ほか少数。
森下敬一(1928〜)自然医学会会長。医学博士。1950年東京医科大学卒業後、血液生理学を専攻。この過程で、千島喜久男の腸造血説の影響を受け、病気は食べものの乱れからくるという結論に達し、自然医学会を創設、自然医食による病気直し、臨床医学の道に入る。著書に、『血液とガン』、『血球の起源』、『自然医学の基礎』、『肉食亡国論』、『食事革命』、『水と生命』など多数。学術書としては、1960年に出版された『血球の起源』が主著である。
健康本の世界:森下敬一

まともな教養と神経の持ち主なら、
彼のサイトのこの文章を読んだら「決してこの病院には行きたくない」と思うこと請け合いです。


Wikipediaによると千島門下には少数ながら熱烈な信奉者がいたらしく、多分このあたりの人たちなんだと思いますが、ネットを検索すると他にも結構あちこちで引っ掛かるのでまとめてリンク。

千島学説(間違いだらけの医者たちより)
千島学説(間違いだらけの医者たちより)後半続き
千島門下のライターが書いた本の抜粋。素晴しい高出力電波で、これを読むだけでお腹一杯になれます。
治療ガイドラインは免罪符?
田辺薬品
薬剤師にすらこのトンデモにはまっている人がいる始末。一体大学で何を勉強してきたのやら?
粘る稀なガン患者: 毎日新聞もここまで落ちたか・・・
性懲りもなく毎日新聞が釣られているのはお約束と言うべきでしょうか?
相変わらず疑似科学が大好きなようで。
ガンの秘密を解き明かし、医学界から排斥されてしまった革新の生命医学理論『千島学説』
阿修羅にも何か湧いてますが、あそこが電波の掃き溜めなのは常識です。
よみがえれ!千島学説
ししゃ科も研の高尾センセがはまっているのはなんか納得。
「ありがとう」で元素変換という、「生体内で元素変換」と似たネタを持つだけあって"波長"が合ったんでしょう、きっと。


検索してみるとまともに信じ込んでいる人が結構いる模様。
どこがどうトンデモなのか、じっくり解説した方がいいでしょうか?

<2008/2/17 追記>
具体的なツッコミを書きました。
◆千島学説に対するツッコミ
幻影随想: 千島学説に突っ込んでみる1
この記事へのコメント
  1. ↓の管理人も信者
    http://www.creative.co.jp
    Posted by 仔鹿 at 2007年06月24日 17:19
  2.  最近、πウォーターにはまった人が、そりゃもう熱烈かつ熱心に私に効果と理論を納得させようとメールを送ってこられたのですが、そのときの内容が「πウォーターの効果は千島学説で説明できる」ってしろものでした。
    トンデモはトンデモを呼ぶようです。
    Posted by apj at 2007年06月25日 21:32
  3. >仔鹿さん
    確かに。
    Google検索で上位に出てくるのに載せ忘れてました。
    ご指摘ありがとうございます。

    >apjさん
    πウォーターって未だに生き残ってたんですか。
    既に絶滅したものと思ってました。
    それにしても水商売系統のトンデモは何でも節操無く取り込みますねえ。
    Posted by 黒影 at 2007年06月26日 00:28
  4. 批判の概要というか、これほど批判をするなら、一つくらいは批判の根拠を示してほしいものです。
    Posted by cgls at 2007年10月15日 03:28
  5. 独り言 
    擁護してる立場の人は、ある意味で飯の種というか。
    某宗教の教義みたいに商売やら金儲けに使ってい
    る感じがする。
    Posted by : at 2008年02月06日 23:13
  6. 千島学説がトンデモ学説であると言う文献を示していただけませんか?
    Posted by 名無し at 2008年02月11日 13:45
  7. >上の名無しさんとcglsさん
    了解。
    千島学説がどれだけアホらしい代物か、一つ解説エントリを書いてみることにします。
    Posted by 黒影 at 2008年02月11日 17:20
  8. 森下敬一氏と酒向猛氏は千島学説を追試実験して千島学説が正しいことを示したと言っています。
    こうなってくると、トンデモとは言えない気がいたします。
    Posted by 名無し at 2008年02月11日 17:47
  9. >名無しさん
    >森下敬一氏と酒向猛氏は千島学説を追試実験して千島学説が正しいことを示したと言っています。
    「言っている」だけでは何の根拠にもなりません。
    追試実験したのであれば、必ずそれを第三者が検証可能な形で提示する必要があります。
    私は寡聞にして彼らがそのような論文をどこかのジャーナルに投稿したという話を聞かないのですが、名無しさんは彼らが千島学説を証明したという論文をご存じでしょうか?
    もしご存知ならぜひ教えていただけたらと思います。
    Posted by 黒影 at 2008年02月11日 18:46
  10. 『癌を克服するために』(著者:酒向猛)に、
    森下氏と酒向氏が千島学説の追試実験を行った、
    という記述があります。
    Posted by 名無し at 2008年02月11日 21:49
  11. >名無しさん
    本に書いてあること、彼らがそう主張しているのは知ってます。
    しかし問題は、追試実験を行ったというそのデータがどこに公開されているのかという点です。
    本人たちがそう言っているだけの、第三者が検証できない主張など、それが本当なのかどうか確かめようがありません。
    第三者が確かめようもない根拠を元に「千島学説は正しい」と主張すれば、それは疑似科学です。

    Posted by 黒影 at 2008年02月11日 23:09
  12. 酒向氏の論文が日本癌治療学会雑誌に掲載されたとのこと。
    Posted by 名無し at 2008年02月12日 01:27
  13. >名無しさん
    日本癌治療学会誌の、何号の、何というタイトルの論文ですか?
    >掲載されたとのこと。
    という伝聞情報だけでは本当にあるのかどうかすら分かりません。
    あるかどうかすら定かでない物を探すのはごめんです。

    ちなみに私が現時点で把握している酒向氏の千島理論関係の論文は

    http://aeam.umin.ac.jp/zassi/backno/page.htm
    漢方の臨床2001年5月号(第48巻・第5号)東洋医学の古典にみる造血理論の検討
    http://www.minori-kyoto.com/book-mf01.html
    書籍(密教福祉Vol.1)東洋哲学と千島学説

    の二本だけですね。
    どちらも千島理論の追試じゃないというか科学の論文ではありませんが。
    Posted by 黒影 at 2008年02月12日 03:09
  14. 便乗いたします。

    >名無し様
    日本癌治療学会誌ってInternational Journal of Clinical Oncologyですよね。同誌のサイトでもPubMedでも酒向(SakouでもSakoでも)と言う名前が含まれている論文は見つからないのですが。

    せめていつ頃の論文であるかという情報くらいはありませんか?
    Posted by mobanama at 2008年02月12日 07:10
  15. 『癌を克服するために』に、以下の記述があります。
    「日本癌治療学会雑誌に投稿すると、受理され論文が雑誌に掲載される運びになりました。」
    具体的に雑誌の名前までは不明です。お役に立てずにすみません。
    Posted by 名無し at 2008年02月12日 07:55
  16. >名無しさん
    そうですか。情報提供ありがとうございます。
    少なくとも『癌を克服するために』刊行の時点で論文は出ていなかったと分かるので、これはこれで一つの有意義な情報です。
    出版からずいぶん経った現在でもその論文の存在の真偽すら明らかになっていないという点も合わせてですが。

    なお、「千島学説がトンデモ学説であると言う文献」は、現在私が文献集めやまとめにあまり時間を取れないため、週末あたりまでお待ち下さい。


    >mobanamaさん
    いや、そっちじゃなくて日本癌治療学会は"Japan Society of Clinical Oncology"の方だと思います。
    日本癌治療学会 - Wikipedia
    http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E7%99%8C%E6%B2%BB%E7%99%82%E5%AD%A6%E4%BC%9A
    日本癌治療学会
    http://jsco.umin.ac.jp/index-j.html

    会員以外は論文検索すら出来ないので、ブログで呼び掛けて誰か会員のお医者さん有志でも募りますかね。
    大学図書館にでも行けば多分置いてあると思いますが、最低限ある程度範囲を絞り込めないと探す気すら起きません。
    Posted by 黒影 at 2008年02月12日 21:57
  17. 見つけました。

    赤血球の細胞増殖促進作用についての研究(癌性貧血との関係より)(原著論文/抄録あり),
    Author:酒向猛(名古屋大学 第2外科), 市橋秀仁, 中尾昭公, 他,
    Source:日本癌治療学会誌(0021-4671)22巻6号 Page1217-1224(1987.07)

    内容も読んでみましたが、案の定、ぜんぜん千島学説を追試している内容じゃありません。そもそも、タイトルからして「細胞増殖」とあります。千島学説では細胞が増殖することは否定しています。近いうちブログでネタにします。
    Posted by NATROM at 2008年02月20日 23:01
  18. NATROMさんGJ!

    ところでJSCOのサイトhttp://jsco.umin.ac.jp/index-j.html
    にも「IJCO誌について」というところに「これまでIJCOに掲載されたすべての論文を検索できます」とあり、wikipediaにも機関紙として「International Journal of Clinical Oncology」とあるんですが、それ以外にも日本語の学会誌か何かがあったんでしょうか?参考までに。(まだ何か勘違いしている?)
    Posted by mobanama at 2008年02月21日 14:09
  19. ごめんなさい自己レス。

    上記サイトから検索を改めて辿ると、要はIJCO誌になった(?)のが1996年5月号(Vol.1, No.1)からなのですね。

    1987年当時の記事が引っかかってこないはずです。納得しました。
    Posted by mobanama at 2008年02月21日 14:14
  20. >NATROMさん
    おお、医中誌で見つかりましたか。
    おかげで探す手間が省けました。
    どうもありがとうございます。
    Posted by 黒影 at 2008年02月21日 20:53
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