2007年04月24日

微生物を追う人々

先日は21世紀にもなって未だに微生物の自然発生説を唱える困ったさんを紹介したので、
今日は口直しにこの本を紹介。

Microbe Hunters
本書は生物学史、医学史に名を残した微生物ハンターの活躍を描いた名ドキュメンタリーです。
原著が出版されたのが1926年と随分古い本なのですが、瞬く間に100万部を売り上げました。
そして今でも各国語に翻訳され何度も版を重ねているという、科学書としては異例のベストセラーでもあります。
洋書ですが、一般向けに書かれている本なので難しい言葉は余り出て来ません。4年制大学受験レベルの英語力があれば問題なく読めるでしょう。

あいにく絶版になっていますが、邦訳もあるので一応紹介しておきますね。
微生物を追う人々
こちらは1991年に出版された、中高生を対象にした科学入門書です。
多分ある程度の大きさの図書館になら置いてあるはずなので、日本語の方がいいという人は探してみてください。
先日私も近くの図書館で借りて読んでみたのですが、大人でも十分楽しめる良書だと思います。
 
 
 
原著では13人の微生物ハンターを取りあげていますが、『微生物を追う人々』ではその中の前半4人を大胆にピックアップしていますので、私もこれにならいます。

初めて実用レベルの顕微鏡を作成し、微生物の発見者となったレーウェンフック
巧みな実験により微生物の自然発生説を否定したスパランツァーニ
酵母を発見して醸造学の創始者となり、狂犬病のワクチンを作り上げるなど微生物学に多大なる貢献をしたパスツール
微生物の単離法を確立し、炭疽病やコレラの根絶に貢献したコッホ
いずれも微生物学の発展にひとかたならぬ寄与を行った人物であり、中学高校の教科書にも出てくるような人物です。
彼等の行った発見を読むだけでも十二分にワクワク出来るのですが、本書の魅力はそれだけではありません。

自作の顕微鏡を片手に、いい年をして常に観察するものを探してうろつき回る変人レーウェンフック。子供のような所のある彼は、大事な宝物である顕微鏡を人の手に渡す事は決してありません。
いつだって自身満々に論敵をやっつけていくスパランツァーニ。彼の容赦ない一撃は自然発生説の信奉者を木っ端微塵にしました。
才能もあるのですがそれ以上に自己顕示欲が強いパスツールは、常に周囲を敵だらけにしていました。気分屋の幸運の女神が今少し彼から目を離していたなら、あるいは彼の成功はなかったかもしれません。
マジメなドイツ人を絵に描いたようなコッホには、スパランツァーニやパスツールのような俳優・弁論家としての才能はありませんが、代わりに彼は黙って完璧な証拠を差し出します。論敵がぐうの音も出ないほどの見事なものを。
本書は単に彼らの偉大な成果を取り上げるだけでなく、彼らの人間臭さを実に生き生きと描写しています。
ベストセラーとなった理由の一つに、この辺の躍動感が読者を楽しませたからというのが間違いなくあるでしょう。


あと、邦訳は板倉氏の書く最後の解説が非常に素晴しかったので、一部抜粋して紹介します。
 日本では、科学者の話というと、どうも奇麗ごとにすます傾向が強いようです。しかし、この本に描かれている科学者は違います。どの人も人間性にあふれています。あまりに人間くさく描かれているので「あまり好きになれない」と思った人もいるかも知れません。しかし、その反面「科学の研究というのは楽しそうだなあ」と気にいった人も少なくないと思います。そうです。私は、「科学というのは、研究にその人間性全体をかけてきた科学者がいてはじめて本格的に発展することが可能になる」といって間違いないと思うのです。
<中略>
 私は、この本によって、科学というものの人間くささが少しでも伝わればいいと思います。そして、「頭のいい人が大科学者になる」というものではなくて、「個性的な人々がいてはじめて大発見が行われる」ということが分かってもらえれば、いいと思います。



原本だけでなく、邦訳の「微生物を追う人々」も手元に置いておきたいんですが、どこかの会社で復刊してくれないものでしょうか。
とりあえず古本屋で探してみますか。
posted by 黒影 at 23:17 | Comment(0) | TrackBack(0) | Books | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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