2007年04月27日

ホット・ゾーン ― 恐怖!致死性ウイルスを追え!

「現実に勝るホラーはない」という事で、
今回は現代社会に忍び寄るリスクの一つアウトブレイクネタを。
少し前にapjさんのところで話に出てきたので、思わず衝動買いしてしまいました。
昔はハードカバーだったのが、今は文庫も出てたんですね。


Amazon.co.jp: ホット・ゾーン―恐怖!致死性ウイルスを追え!


私の好きな映画の一つにアウトブレイクがあります。
致死的な伝染病、致死率90%以上といわれるエボラ・ウイルスを扱ったスリラーサスペンスの傑作だと私は思ってますが、あの映画のモデルになった事件が実際に起こっていたというのはあまり知られていません。

本書はアメリカで実際に起こりかけたエボラ・ウイルスのアウトブレイクに関するドキュメンタリーです。
 
 
 
エボラやマールブルグといった致死的な病原体について詳しく学んだ事がある人間なら、一度は思い浮かべ、そして恐怖に身を震わせながらも「そんな事あるわけないさ」と振り払うイメージがあります。

それは…

ある日、街角で、電車の中で、あるいは学校で

目を真っ赤に充血させ、虚ろな顔をして具合が悪そうにしている者が

自分の目の前で突如として

穴という穴から血を垂れ流し、

この致死的なウイルスをまき散らして"炸裂"する


というもの。


これは決して荒唐無稽な想像では無く、
少なくともアメリカではエボラウイルスと"2度にわたって"ニアミスを起こしています。
幸いな事に、このときのエボラはヒトに対しては無害なウイルス(ただしサルに対しては恐ろしいほどの致命性を示しましたが)だったために危うく事なきを得ました。
しかし、もしこのウイルスがヒトに対してもサル同様病原性を示していたならば、大惨事を引き起こしていたことは間違いありません。
なにせこれまでに発見されていたものとは違い、このときのエボラウイルスは空気感染を起こすタイプのものでしたから。


本書の舞台はアメリカの首都ワシントンの郊外にあるレストンという住宅街。
1989年10月、レストンの片隅にあるモンキー・ハウスで、サルに奇妙な病気が蔓延し始めます。
謎の病気により次々と死んでいくサル達。
一向に治まらない奇病に困り果てた業者は、11月になってついに陸軍の研究所に調査を依頼する事に。


依頼を受けた研究者達は、自分の出した鑑定結果に思わず目を疑い、何度も再確認を行ったはずです。
そして間違い無いと分かったときには、こめかみに銃口を突きつけられているような、まるで胃に鉛でも呑んだような気分になったに違いありません。

「エボラだと?!そんな馬鹿なことがあるか!」
「ワシントンでエボラのアウトブレイクだと?冗談じゃない!」
「なんてこった!オレはエボラに、無防備なまま触れちまった!」
一体どれだけの悲鳴と怒号が飛び交った事でしょうか。

即座に厳戒態勢がしかれ、極秘裏にエボラの封殺を図る軍とCDC(疫病対策センター)。
このエボラが空気感染するらしいことが明らかになり、天を仰ぐ研究者達。
一時は最悪の事態すら考えられました。


念のために書いておきますが、これはフィクションではなく、実際にあった出来事です。
結局最終的に、このウイルスは人に対しては病原性を持たないと分かり、アンドロメダ病原体ばりの結末を迎えました。
しかし、もしこのウイルスがヒトに対する病原性を獲得する変異を起こしていたら、人類は恐るべき脅威に直面していたかもしれません。
現実のみが持つ"何か"に圧倒され、結末を知っているはずなのにぐいぐいと引き込まれて一気に読みきってしまいました。
並みのホラーよりもこういったノンフィクションのほうがよっぽど恐いです。

同じ著者の「デーモンズ・アイ」、「コブラの眼」なんかもお勧め。
こちらはエボラやマールブルグ、天然痘などを用いた生物兵器に関するドキュメンタリー(コブラの眼はフィクション)です。
posted by 黒影 at 02:48 | Comment(7) | TrackBack(0) | Books | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
  1. マジで?
    空気感染するエボラかよ!
    ヒィー(((゚Д゚)))ガタガタ
  2. Posted by yingze at 2007年04月27日 09:37
  3. 『そんな事あるわけないさ』と言われてもすごい怖いのですが、個人としてどう対処したら良い物なのですか。

    この前ノロウイルスと思われる腹痛と吐き気に襲われたときに、アウトブレイクを気にして学校を休んだのは正しかったのだろうか。
  4. Posted by COS at 2007年04月27日 12:58
  5. この話は専門上存じて居りました。

    潜伏期間はどのくらいでしたかねぇ?
    これが長いほどアウトブレイクの危険性は高まる訳で・・・。

    当時読んだ文章では、確かサルの死因究明の為に飼育施設から死体を運び出す際、普通のトラックタイプの車を使って、素手で運んでいたとか。
    全く無知とは怖いですねぇ。
  6. Posted by ぴぐもん at 2007年04月27日 22:15
  7. 強毒型の新型インフルエンザの感染がヒトで発生したら、空気感染する猿エボラがヒトへの感染性を持ったのと似たり寄ったりの惨事が予想されると思うんですが。

    もちろんウイルスは全く別モノですが、(鳥の)全身の臓器に感染して出血を示す上に致死率が高いことから、新型鳥インフルエンザは(見た目が)鳥エボラと言われているとのことです。
     なので、いずれやって来るであろう強毒性の新型インフルエンザについては、「冬に流行る風邪に似たアレね」ってな認識じゃなく「エボラが街にやってきた」と思って対処してちょうど良い位ではないかと。ガクブルモノですが。
  8. Posted by apj at 2007年04月28日 00:38
  9. それはそうと日本人てなんでしんどいのに仕事休まないんですかね?会社もオマエ来るとこっちが迷惑だから休め、って言うべきだと思いました。

    いやほんとエボラとか強インフルエンザだと業務上過失致死なんじゃないかと。
  10. Posted by SLEEP at 2007年04月29日 10:50
  11. >yingzeさん
    マジです。
    ただしこの空気感染するエボラ・レストンは、人に対する病原性はありませんでしたけど。

    >COSさん
    こんな場面に出くわしてしまった場合ですか?
    とりあえず救急車と警察を呼んで、危険な伝染病である可能性を伝えます。
    次に居合わせた人に感染の可能性と、可及的速やかに病院へ向かう必要があることを説明。
    最後に、血で汚染された場所を消毒剤で入念に殺菌し、二次被害の危険を断ちます。
    後は自分が感染していない事を祈るのみですね。

    >ぴぐもんさん
    エボラの潜伏期間は1〜2週間なので、感染者が気付かずに移動するには十分過ぎますね。

    ちなみに、軍の研究施設に送られてきた病死したサルの検体は、無造作にアルミホイルで包まれていたそうですよ。
    それもろくに密封もされないままで。
    受け取って検査をした人間が真実を知ったときの恐怖は凄かったでしょうね。

    >apjさん
    かつてのスペイン風邪で致死率5〜10%でしたっけ?
    エボラに較べればまだ低い数字ですが、感染力が段違いな分広がると厄介でしょう。
    インフルエンザといえば、日本人はやたらとタミフルを乱用しまくった挙句、耐性ウイルスは出現させるわ副作用におびえて薬を拒絶するわと、中々に情けない事態になってますね。
    kikuchiさんの所の議論などを読んでいて、もしものときにこんなことで大丈夫だろうかと心配になりました。

    >SLEEPさん
    そんな状態で来られたら、むしろこっちが休みます。
  12. Posted by 黒影 at 2007年04月30日 01:29
  13. あ、そうそう。
    書き忘れてましたが、今は一応エボラのワクチンもあります。
    日本で手に入るかどうかは知りませんが。

    http://www.nedodcweb.org/wbw/week_2003_08_24.html
    >米国が速効性のエボラウィルスワクチンを開発
    >
    >国立衛生研究所(NIH)と米国陸軍感染症研究所(USAMRIID)の科学者達が、エボラウィルスに対するワクチンを共同開発し、サルを使った実験でその効能が証明された。この速効性ワクチンを1回接種されたサルが1ヵ月後にエボラウィルスに接触したところ、ワクチンによって完全に保護されたことが明らかとなった。サルにおけるワクチンの効能が確認された場合、通常ヒトにおいても同じような効能が見られることから、研究者達はこのワクチンのヒト臨床治験を来年には開始することを期待している。
    >
    >すべてが順調に進んだ場合、自然もしくは人為的なエボラウィルス感染の発生時に備えた連邦政府の防護対策として、早ければ2006年には大量のエボラウィルスワクチンが備蓄され、科学者達が予測していたよりも10年も早く備蓄が実現することになる。科学者達は、ワクチンの利用が可能になったとしても、大規模な予防接種計画が実現される可能性は低いと述べている。
    >
    >高度な遺伝子組み替え技術を使ってエボラワクチンを作製したこの新しい技法は、エイズウィルスや生物兵器物質などの細菌に対するワクチンの開発に利用できるかもしれない。

  14. Posted by 黒影 at 2007年04月30日 01:33
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