軌道エレベーターとは惑星表面から静止軌道の先まで伸びたエレベーターの事で、昔からSF作品に好んで使われた題材です。
軌道エレベーター Wiki
軌道エレベーターと聞いてバベルの塔のような構造物をイメージする人も多いと思いますが、
実はこれは間違いで、実際の軌道エレベーターは静止軌道から吊り下げるように構築されていくことになります。
こちらのページのイメージ図が分かりやすいでしょう。
軌道エレベーターはあくまでも「静止衛星」であり、静止軌道にしか設置することが出来ません。
必ずしもその先端が地上に達している必要は無く、軌道エレベーター構想を発展させた宇宙空間に宙吊りにされた巨大な建造物の計画もあるほどです。
◆軌道エレベーターの歴史
軌道エレベーター構想をはじめて着想したのは「宇宙旅行の父」と呼ばれるロシアのロケット科学者コンスタンチン・E・ツィオルコフスキーです。
1895年に彼は自著の中で赤道上から塔を伸ばしていくと次第に遠心力が強まり、ある段階(静止軌道半径)で遠心力と重力が釣り合うことを示しました。
しかしこの方法が実現不可能なことは当時から明らかであったため、同年、同じロシアの科学者ユーリ・アルツターノフが逆に静止軌道上から上下にケーブルを伸ばす形式の改良型軌道エレベータ構想を発表しました。
◆軌道エレベーターの難点
軌道エレベーターを建造する際に最大の問題となるのが、静止軌道まで36000Km以上伸ばしたケーブルが自重によって切れてしまうのを防ぐことです。
1975年にジェームス・ピアソンによって行われた試算によれば、軌道エレベーターの構築に必要な素材の強度は
引っ張り強さ/密度(破断長)が4,960kmというとてつもないもの。
(一様な重力場で、一様な太さのケーブルを4,960km下に伸ばすまで切れないこと)
鋼鉄の破断長が50km、ケプラー材でも200kmほどであることを考えるとこの要求がいかにとてつもないものかが分かります。
これまでは建設に膨大な建造費がかかることに加え、この超ハイレベルのスペックを満たす素材が存在しなかったため軌道エレベーター構想は夢物語でした。
しかし現在、カーボンナノチューブによってこの壁が突破できるかもしれないという希望が見えてきました。
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◆軌道エレベーターの実現に向けて
多少希望が見えてきたといっても、地上4万kmもの巨大な建造物を作るのは金銭面でも素材面でもまだまだ困難です。
そこで軌道エレベーター構想に改良を加えた様々な計画が存在します。
その中で現在一番実現に近いと考えられるのが「極超音速スカイフック」というプランです。
これは地球周回軌道に小型の軌道エレベータを置き、超音速で周回させる計画です。
静止軌道まで物資を持ち上げるわけではないので大幅に建造コストを減らすことが出来、
さらに軌道エレベーターに比べ小規模なので材料の強度はケブラー材程度で十分だといわれています。
欠点として下端が地上100kmとかなりの高度に存在するためアクセスには大気圏外超音速機が必要になりますが、現在ではもっとも実現可能性が高いと考えられています。
(少なくとも資金さえあればすぐにでも開始可能な計画です)
まず極超音速スカイフックを作り、そこから静止軌道へと構造物を伸ばしていって
同時に軌道リングシステム(ORS)も並行して構築し、最終的に地上にも接続して軌道エレベーターへと到達する―
というのが最もありえそうな筋書きでしょうか?
◆参考書籍

軌道エレベータ―宇宙へ架ける橋
◆参考サイト
・軌道エレベータ - Wikipedia
・電車で宇宙へ行く方法
・アトラス開発研究機構:軌道エレベーター