人類学者ならずとも誰しも一度は抱いたことのある疑問ではないだろうか?
人類の起源と移動経路を巡る謎はその多くが明らかになったとはいえ
まだ分からない部分がたくさんある。
現在アメリカのナショナルジオグラフィック協会はIBMと提携してジェノグラフィック・プロジェクトという世界最大規模のヒトDNAのデータベース構築計画を進めている。
しかし計画は早速暗礁に乗り上げてしまっているようだ。
Wired News - 世界最大のヒトDNAデータベース構築計画に批判の声 - : Hotwired
世界各地の人々から採取した血液を使って、古代人類の移動の軌跡を追跡するという壮大な遺伝学的プロジェクト『ジェノグラフィック・プロジェクト』が今月13日(米国時間)にスタートした。しかし、このプロジェクトは開始早々から論議を呼んでおり、反対や非協力の動きに直面することになりそうだ。
このようなプロジェクトを進める以上、古い血をそのまま保つ先住民の協力を得ることは
人類がどのように移動していったかを解明するためにも必要不可欠だ。
しかしながら、先住民を騙すような形で第三世界の遺伝子資源を収奪していった不届き者が多数いたため
彼らの遺伝子産業に対する心象は最悪。
そのあおりを食らってこの計画も反対運動に直面する羽目になっている。
まず先住民との信頼関係の構築から始めなければいけない有様なのである。
計画が抱える問題は置いておいて、人類がどのように世界に広がっていったかは実は今でもかなりのことが分かっている。
(ジェノグラフィックプロジェクトの人類の旅の地図より)
現生人類の祖先がアフリカのエチオピア辺りで生きていたことはほぼ確定事項だ。
紀元前6万年頃までにはアフリカ全域に広がりだし、紀元前5万5千年頃には北アフリカに進出したグループがアラビア半島にも到達。

次の5千年の間に人類は一気に生息範囲を広げる。
アラビア半島に渡ったグループが海岸沿いにインドを経由して一気にオーストラリアまで到達。
また、北アフリカにいたグループが別経路でエジプトを経由してトルコ方面に広がる。
(黄色の矢印はミトコンドリアDNAで見た人類の移動、青い矢印はY染色体DNAで見た人類の移動図を示している)

次の5千年期にはトルコやパキスタン方面にいたグループが中央アジア一体に広まり
また東南アジアにいたグループが一気に北上して日本や中国にまで達している。
この時期までに人類が進出した場所はどこも大抵文明の発祥地になっている。

少なくとも5万年前には日本列島に人類が生活していたわけだ。
考古学的な証拠とも大体一致する。
古い歴史の教科書では日本人は北から入ってきたモンゴロイドということになっていたが
それ以前から南方系のモンゴロイドが暮らしており現在まで南方系の文化習慣が残り続けたことから見るに、
両者が混じって現代日本人の原型になったというのが妥当かな?
加えて大陸から2〜3系統の血が入ってきているという感じか。
遺伝学的に見ても日本人というのはかなり古い血を引いていることになるな。
学術的に非常に面白いので、いいデータを集めて正確が結果を出せるといいのだが。
ちなみにこのプロジェクトは誰でも参加可能で、1万円ほどの費用を払って調査に参加すれば
自分の遺伝子型を調べてルーツを探ることが可能だ。
自分のルーツを知りたい人は試してみてはいかがだろう?
個人的には、日本人の由来はもちろんですが、中華文明の発生とかも興味があります。
どうも、これだけ見ると、大野晋先生が喜びそうな感じがするなあw。
http://www.china-news.co.jp/culture/2005/04/cul05041603.htm
中国では以上のような動きが出ているようですよ。
この図は暫定図であってこれで確定というわけで無いのですが面白いでしょ。
研究が進めばさらに詳細が明らかになるだろうし
私も日本人のルーツなんかにはすごく興味があります。
大野先生じゃありませんが南回りのルートを辿った民族の中には日本語と近い言語を使う民族がいくつも存在するので今後の研究が楽しみですね。
>中華文明の発生とかも興味があります。
中国も日本と同じで南から来た民族と北から来た民族の混成民族なので、文明の起源を考えると面白いですね。
>久遠さん
チャイナネットの記事はともかく中国通信社の方はヨタ記事といわざるを得ませんね。
多地域連続進化説はDNAを使った研究でほぼ否定されており、
ミトコンドリアやY染色体DNAから現生人類と別系統のパターンが見つからない限り単一起源説には太刀打ちできないかと。
この研究者は多分イデオロギーに染まっちゃった人なんでしょう。
レスありがとうございます。
むう、やはり中国通信社で述べている研究者の発言はヨタですか。事情に詳しくないので、怪しいとは思いつつも否定できなかったのです。