しばらく家を空けていて、妙に検索ヒットが伸びていると思ったら、何やら微妙なネタ記事が人気を博しているではありませんか。
水も砂糖もみんな毒? 身近な食品の致死量を調べる | エキサイトニュース
前に書いた記事の影響で、「水 致死量」でググるとうちのブログがトップに来る。
だからこの記事の影響で流れてきたんだな、うん。
面白いからこのネタをちょっと探ってみた。
さて、微妙なネタ記事と書いたのは、記事のこの部分にズッコケたからだ。
まあ私もデータの勘違いをやらかしていた事に気が付いたわけだからあまり人のことは言えないが。
まずは日本毒性病理学会。理事長の白井智之先生(名古屋市立大学医学部第一病理学教授)によると、「致死量は分かりません。通常の毒物についてはそれなりの研究成果や事例(事故など)があり、致死量が推定されていますが、身近な食品の場合、どれだけ投与すると死亡するかをはかる事例がありません」とのこと。
さらに厚生労働省からは、「こちらでは分からないので食品安全委員会に訊いて欲しい」と言われ、食品安全委員会に問い合わせてみると、またも「水10リットル、砂糖1キロが致死量であるという根拠については、当方には情報がありません」との回答。
うーむ。水10リットル、砂糖1キロというのは、単なる俗説だったのだろうか……?
そりゃ無いでしょ。というのが正直な感想。
確かに身近な食品に対する「人の」致死量のデータは無いも同然で、動物実験の結果から類推しているに過ぎない。だから白井先生の言っていることは間違ってはいないのだが、もう少し致死量の意味を突っ込んで説明して欲しかったなと思う。ましてや食品安全委員会の返事になると「おいおい、大丈夫かよ」と突っ込まずにはいられない。
その程度、英語圏じゃ普通に情報が出回ってるぞ。
食品に限らず薬や化学物質の安全性試験は、動物実験によって行われる。
毒性や致死量を調べるのに人体実験を行うわけにはいかないからだ。
人間の正確な致死量データが残されているのは、毒薬、一部の化学兵器、天然の猛毒くらいのものだろう。
人間の致死量とは、不幸にしてこれらの原因で亡くなった人たちの屍から出来たデータなのだ。
ゆえに人体実験でもするなら別だが、普通の食品に対する人間の致死量データはアクシデンタルな物をのぞいてほとんど存在しない。
そして水10リットルを飲むだとか砂糖1キロを食べるだとかいうのは、常識的に考えれば事故としても起こりそうに無いレベルの話だ。私も寡聞にしてこのような死に方をした人間の話は聞いた事が無い。
それにも関わらず、これらの食品に対しても致死量は設定されている。
だから「どこからその数字は出てきたんだ」という疑問はもっともだ。
あっさり答えを示すなら「動物実験と死因データから」となる。
繰り返しになるが、人体実験を行うわけにいかない以上、毒性検査は通常動物実験で行われる。
ほとんどの毒物の「致死量」として表示されているものは、実は動物実験の結果から推定されたものだ。
だから正確には推定致死量といわなければならないのだが、これらの数字は決して無根拠なものではない。
これも以前書いたが、毒物に対する感受性の高さは種間で差があるものの、基本的にはヒトも実験動物も哺乳類同士似たような反応を示す。
ゆえに動物実験の致死量を暫定的に人の推定致死量として取り扱っているのである。
引用元の記事に載っているカフェインの致死量なんかも、本当は推定致死量である。
さて、前置きが長くなったが、問題の水と砂糖の致死量データをMSDSあたりから引用してみよう。
MSDSとは"Material Safety Data Sheets"の略で、試薬企業が化学物質の安全な取り扱いのために、様々な情報をまとめて提供するための資料だ。
当然致死性に関するデータも入っている。
まず水のデータだが、ラットに経口摂取で半致死量90ml/Kgという数値が出ている。
これを体重68キロの人間相当に換算するなら6.1Lとなる。
人をはじめ他の動物の致死量は後述するが、これよりもやや大きな数値になる。
しかし水は人に対してはほぼ無害であるので、致死データを載せていない企業の方が大半なようだ。
For Water: LD50 Oral Rat: >90 ml/Kg. Investigated as a mutagen.
MSDS - Water
次に砂糖の致死量を、砂糖の主成分であるショ糖で調べる。
Oral rat LD50: 29700 mg/kg; investigated as a mutagen, reproductive effector.
MSDS - SUCROSE
ショ糖をはじめ糖類の致死量は、水と違ってどの試薬メーカーのカタログにも普通に出てくる。
別のメーカーではマウスのデータも載せている。
ラット経口投与の半致死量を同様に68キロの人間相当量に換算するならちょうど2kg。
前回も今回も似たようなデータを見て記事を書いたはずなので、前回の記事を書いた時点では、私はマウス腹腔内注射の半致死量を経口投与のそれと勘違いしていた可能が高い。
14000mg/Kg × 68Kg = 0.95kg となり大体計算が合う。
ORL-RAT LD50 29700 mg kg-1
IPR-MUS LD50 14000 mg kg-1
<黒影註>ORL=経口、IPR=腹腔内注射、RAT=ラット、MUS=マウス
Safety (MSDS) data for sucrose
さて、最後に水の致死量データ(人間のそれを含む)を一挙公開。
探せばあるもんだねぇ。
海外では結構見かけるのに日本で見たことがないので、丸々コピペしてみる。
なんせデータが古いので、国会図書館や東大でも行かないと原本があるかどうかというのがややつらいが、誰か暇な人は元文献探してみては?
多分この辺にもありそうな…
TOXICITY DATA with REFERENCE
Oral-Infant TDLo: 333 g/kg: BAH,
Gastrointestinal tract effects
Archives of Disease in Childhood.
(British Medical Journal, 1172 Commonwealth Avenue, Boston, MA 02134)
V.1- 1926-ADCHAK 54,551,79
Oral-Man TDLo: 42.86 g/kg: BAH,
Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics.
(Williams & Wilkins Co., 428 E. Preston St., Baltimore, MD 21202)
V.1- 1909/10-JPETAB 29,135,26
Rectal-Woman LDLo: 180 g/kg/28H:
Eye effects,BAH,Gastrointestinal tract effects
JAMA, Journal of the American Medical Association.
(American Medical Association, 535 N. Dearborn St., Chicago, IL 60610)
V.1- 1883-JAMAAP 104,1569,35
Intraperitoneal-Mouse LD50: 190 g/kg
National Technical Information Service.
(Springfield, VA 22161)
(Formerly U.S. Clearinghouse for Scientific and Technical Information)
NTIS QD628-313
Intravenous-Mouse LD50: 25 g/kg
Microvascular Research.
(Academic Press, 111 Fifth Ave., New York, NY 10003)
V.1- 1968-MIVRA6 8,320,74
Oral-Dog, adult LDLo: 629 g/kg
Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics.
(Williams & Wilkins Co., 428 E. Preston St., Baltimore, MD 21202)
V.1- 1909/10-JPETAB 29,135,26
Oral-Cat, adult LDLo: 320 g/kg
Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics.
(Williams & Wilkins Co., 428 E. Preston St., Baltimore, MD 21202)
V.1- 1909/10-JPETAB 29,135,26
Oral-Rabbit, adult LDLo: 368 g/kg
Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics.
(Williams & Wilkins Co., 428 E. Preston St., Baltimore, MD 21202)
V.1- 1909/10-JPETAB 29,135,26
Intravenous-Rabbit, adult LDLo: 13 g/kg
Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics.
(Williams & Wilkins Co., 428 E. Preston St., Baltimore, MD 21202)
V.1- 1909/10-JPETAB 29,135,26
Rectal-Rabbit, adult LDLo: 450 g/kg
JAMA, Journal of the American Medical Association.
(American Medical Association, 535 N. Dearborn St., Chicago, IL 60610)
V.1- 1883-JAMAAP 104,1569,35
Oral-Guinea Pig, adult LDLo: 429 g/kg
Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics.
(Williams & Wilkins Co., 428 E. Preston St., Baltimore, MD 21202)
V.1- 1909/10-JPETAB 29,135,26
Intraperitoneal-Mouse LD50: 25 g/kg
Microvascular Research.
(Academic Press, 111 Fifth Ave., New York, NY 10003)
V.1- 1968-MIVRA6 8,320,74
Re: Measuring water in grams - is it scientifically acceptable?
まず乳児の経口摂取による最小中毒量(TDLo)、摂取量は333 g/kg。
いくら体の75%が水分とはいえ、乳児が自重の三分の一もどうやって飲んだんだろう?
次に男性の経口摂取による最小中毒量、42.86 g/kg。
つまり成人男性なら大体3リットル以上水をがぶ飲みすると中毒症状(低ナトリウム症)が現れだすという事か。
運動系クラブの中高生なら普通にやりそう。運動時はきちんと塩分を取らないと危険だ。
最後は女性の直腸経由摂取(つまり浣腸)による最小致死量(LDLo)。28時間で180g/kg。
経口じゃないけど、量的におそらくこれが10リットルで死亡の元じゃなかろうか?
どういう状況ならこんな恥ずかしい死に方になるのか気になるが。
他にも動物実験のデータが続くが、欧米圏で流れている情報の典型例が以下のような物なので、マウスの腹腔内注射以外はあまり関係が無さそう。
TOXICITY DATA
REC-WMN LDLO:180 GM/KG/28H JAMAAP 104,1569,35
IPR-MUS LD50:190 GM/KG NTIS** AD628-313
IVN-MUS LD50:25 GM/KG MIVRA6 8,320,74
REVIEWS, STANDARDS, AND REGULATIONS
NOHS 1974: HZD M1000; NIS 561; TNF 436805; NOS 294; TNE 7313166
NOES 1983: HZD M1000; NIS 500; TNF 313467; NOS 324; TNE 8785413; TFE
3032116
EPA GENETOX PROGRAM 1988, INCONCLUSIVE: B SUBTILIS REC ASSAY
EPA TSCA CHEMICAL INVENTORY, JUNE 1990
EPA TSCA TEST SUBMISSION (TSCATS) DATA BASE, JANUARY 1993
ADDITIONAL INFORMATION
LD50
4180 MG/KG ( ) ( )
> 99999 MG/KG (IPR-MUS)
Erowid Psychoactive Humor Vaults : Water FAQ
RECとかIPRとか、医学用語に通じていないと意味が分からない単語が結構出てくるので、そういう部分が無視されてLDLo、LD50が一人歩きし、さらにきりのいい10リットルという数字に落ち着いたというのが真相じゃないかと思う。海外から日本に入ってくる時点で経口とそれ以外の摂取がごっちゃになり、さらに情報量の圧縮が起こって歪んでいた(私も情報の歪みに気付かずそのまま流していた)というところかな。
私も今回きちんと調べなおすまで、ちゃんと細部まで見ずに数字に踊らされていたわけだからまだまだだね。
数字を扱うときは気を付けなきゃいかんなぁ。
<追記>
どうも勘違いしている人がいるようなので追記。
今回調べた結論は、人の具体的な致死データで文献付きのものは直腸のくらいで、経口投与のデータは見つからなかったという内容。
多分直腸のデータがどこかで経口のものと勘違いされたんだろうと。
しかし動物実験の結果やらと合わせて考えると、やはり成人男性でも10〜20リットルでアウトになる可能性が高いので、決して「ようするに10L飲んでも死なないて事みたい。」なんて勘違いはしないで下さい。数リットルで水中毒を起こすという事もお忘れなく。念のため。
<再追記>
コメント欄にもポストしていますが、記事を書いた後に水の経口致死データが載っている論文を色々と探してみました。
uneyamaさんのご協力もあって結構な数が見つかったので、文献リストとして掲載しておきます。
論文に出てくるデータとしては、水の経口摂取致死量は成人男性で通常10〜20リットル。最小では5リットルというものでした。
女性でも同様に6〜8リットル程度の摂取量で死亡事例があります。
子供ではさらに少ない量で命の危険に晒されています。
欧米でのデータの広がり方から見て、おそらく日本で広がっていた「水の致死量10リットル」も元々はラットの腹腔内投与や女性の直腸吸収のデータから来たものだったと考えられますが、結果的にはヒト経口投与の致死量としても外していなかったようです。
文献。
Mil Med. 2002 May;167(5):432-4
Death by water intoxication
大人で、数時間以内に5L以上(普通は10-20L)のんで死亡
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?db=pubmed&cmd=Retrieve&dopt=AbstractPlus&list_uids=12053855&itool=pubmed_AbstractPlus
日本の症例ですが、水3Lで、死んではいませ
んが昏迷と横紋筋融解症ということです。
Water intoxication and rhabdomyolysis.
Jpn J Med. 1990 Jan-Feb;29(1):52-5.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?db=pubmed&cmd=Retrieve&dopt=AbstractPlus&list_uids=2214346&query_hl=28&itool=pubmed_DocSum
↑この人は短時間で飲んだようですが
↓こんな人もいます
Water intoxication due to excessive water intake: observation of initiation stage.
http://www.journalarchive.jst.go.jp/jnlpdf.php?cdjournal=internalmedicine1962&cdvol=26&noissue=2&startpage=249&lang=en&from=jnlabstract
これは痛々しい
PEDIATRICS Vol. 103 No. 6 June 1999, pp. 1292-1295 Fatal Child Abuse by Forced Water Intoxication
http://pediatrics.aappublications.org/cgi/content/abstract/103/6/1292
子どもですが、6L以上飲ませて死亡とありますね。直接の死因は低ナトリウム血症による脳浮腫でしょうか。
ミルクが足りなくて薄いミルクを飲ませたり水を代わりに与えたりして赤ちゃんが水中毒になる事例は世界中でよくあるようです。
ミルクは濃くても薄くても赤ちゃんの命に関わります。きちんと計って作りましょう。
Oral water intoxication in infants. An American epidemic.
Am J Dis Child. 1991 Sep;145(9):985-90
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?db=pubmed&cmd=Retrieve&dopt=AbstractPlus&list_uids=1877579&query_hl=12&itool=pubmed_docsum
他にも摂食障害などの病気による行動異常で水中毒になった人の症例はたくさんあります。症状は意識障害などなので治療しなかったら危険でしょう。
なので体の大きさにもよりますが、一度に飲む量としては3Lでも命に関わる、という印象です。
データとしては、他の食品に比べれば、ある方だと思います。
Posted by uneyama at 2006年11月08日 19:47
>uneyamaさん
具体的なデータの紹介どうもありがとうございます。
私もあれから論文を調べてみたので、追加です。
体格にもよるのでしょうが、最低致死量は10リットルを割ってますね。
大人でも5リットルを超えたら危険域と見たほうが良さそうです。
Autopsy case report of a rare acute iatrogenic water intoxication with a review of the literature.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/utils/fref.fcgi?itool=AbstractPlus-def&PrId=3048&uid=8591833&db=pubmed&url=http://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/0379073895017968
自殺しようとマッチ17本分の粉を飲み、燐成分を飲んだと誤解されて胃洗浄を受け、2時間で8.4リットルの水を飲まされて死亡した21歳の女性。
Fatal water intoxication -- Farrell and Bower 56 (10): 803 -- Journal of Clinical Pathology
http://jcp.bmj.com/cgi/content/full/56/10/803-a
64才の女性がグラス30〜40杯という大量の水を飲んで死亡。
グラス1杯200ml程度でしょうから、6〜8リットルというところでしょう。
Fatal water intoxication of an Army trainee during urine drug testing.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?db=pubmed&cmd=Retrieve&dopt=AbstractPlus&list_uids=12053856&query_hl=11&itool=pubmed_docsum
ドラッグの尿検査で、反応を消そうと水を飲みすぎて死亡。量は不明。
Child abuse: acute water intoxication in a hyperactive child.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?itool=abstractplus&db=pubmed&cmd=Retrieve&dopt=abstractplus&list_uids=16302577
児童虐待で4リットルの水を飲まされ中毒症状。
Posted by 黒影 at 2006年11月08日 21:11
◆関連記事
・幻影随想: 毒の話1 ―毒性学―
・幻影随想: 毒の話2 ―食物の中の毒―
Mil Med. 2002 May;167(5):432-4
Death by water intoxication
大人で、数時間以内に5L以上(普通は10-20L)のんで死亡
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?db=pubmed&cmd=Retrieve&dopt=AbstractPlus&list_uids=12053855&itool=pubmed_AbstractPlus
日本の症例ですが、水3Lで、死んではいませ
んが昏迷と横紋筋融解症ということです。
Water intoxication and rhabdomyolysis.
Jpn J Med. 1990 Jan-Feb;29(1):52-5.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?db=pubmed&cmd=Retrieve&dopt=AbstractPlus&list_uids=2214346&query_hl=28&itool=pubmed_DocSum
↑この人は短時間で飲んだようですが
↓こんな人もいます
Water intoxication due to excessive water intake: observation of initiation stage.
http://www.journalarchive.jst.go.jp/jnlpdf.php?cdjournal=internalmedicine1962&cdvol=26&noissue=2&startpage=249&lang=en&from=jnlabstract
これは痛々しい
PEDIATRICS Vol. 103 No. 6 June 1999, pp. 1292-1295 Fatal Child Abuse by Forced Water Intoxication
http://pediatrics.aappublications.org/cgi/content/abstract/103/6/1292
子どもですが、6L以上飲ませて死亡とありますね。直接の死因は低ナトリウム血症による脳浮腫でしょうか。
ミルクが足りなくて薄いミルクを飲ませたり水を代わりに与えたりして赤ちゃんが水中毒になる事例は世界中でよくあるようです。
ミルクは濃くても薄くても赤ちゃんの命に関わります。きちんと計って作りましょう。
Oral water intoxication in infants. An American epidemic.
Am J Dis Child. 1991 Sep;145(9):985-90
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?db=pubmed&cmd=Retrieve&dopt=AbstractPlus&list_uids=1877579&query_hl=12&itool=pubmed_docsum
他にも摂食障害などの病気による行動異常で水中毒になった人の症例はたくさんあります。症状は意識障害などなので治療しなかったら危険でしょう。
なので体の大きさにもよりますが、一度に飲む量としては3Lでも命に関わる、という印象です。
データとしては、他の食品に比べれば、ある方だと思います。
具体的なデータの紹介どうもありがとうございます。
私もあれから論文を調べてみたので、追加です。
体格にもよるのでしょうが、最低致死量は10リットルを割ってますね。
大人でも5リットルを超えたら危険域と見たほうが良さそうです。
Autopsy case report of a rare acute iatrogenic water intoxication with a review of the literature.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/utils/fref.fcgi?itool=AbstractPlus-def&PrId=3048&uid=8591833&db=pubmed&url=http://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/0379073895017968
自殺しようとマッチ17本分の粉を飲み、燐成分を飲んだと誤解されて胃洗浄を受け、2時間で8.4リットルの水を飲まされて死亡した21歳の女性。
Fatal water intoxication -- Farrell and Bower 56 (10): 803 -- Journal of Clinical Pathology
http://jcp.bmj.com/cgi/content/full/56/10/803-a
64才の女性がグラス30〜40杯という大量の水を飲んで死亡。
グラス1杯200ml程度でしょうから、6〜8リットルというところでしょう。
Fatal water intoxication of an Army trainee during urine drug testing.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?db=pubmed&cmd=Retrieve&dopt=AbstractPlus&list_uids=12053856&query_hl=11&itool=pubmed_docsum
ドラッグの尿検査で、反応を消そうと水を飲みすぎて死亡。量は不明。
Child abuse: acute water intoxication in a hyperactive child.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?itool=abstractplus&db=pubmed&cmd=Retrieve&dopt=abstractplus&list_uids=16302577
児童虐待で4リットルの水を飲まされ中毒症状。
身近な食品の致死量を調べるという記事、大変興味深く読ませて頂きました。
私も課題で食品に含まれるいろいろな成分の致死量を調べているのですが、MSDSで検索しても思うように結果が出てきません。
(例えば、フィロキノンとかです。)
専門知識が全くないに等しいので英語サイトを見てもチンプンカンプンで…。
記事で水やショ糖についてお調べになっていたのはどこのHPでしょうか?
何か当たりやすい文献や調べ方等ありましたら、ご教授願いたいです。
いきなり失礼致しました。
お時間があれば、よろしく御願い致します。
はじめまして。
食品に含まれる成分の安全性データを調べたいのであれば、こちらのサイトがお勧めです。
>「健康食品」の安全性・有効性情報〔独立行政法人 国立健康・栄養研究所〕
>http://hfnet.nih.go.jp/
フィロキノンの致死量も検索すればすぐに引っ掛かりますよ。
http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail604.html
>・急性毒性:1)ビタミンK1をラットおよびマウスに経口投与したときの50%致死量(LD50)はそれぞれ33487 mg/kg以上、25g/kgである(91)。
英語サイトでもいいのであれば、こちらのサイトも情報量が多くお勧めです。
SIRI MSDS Index
http://hazard.com/msds/
とっても助かりました。
これからも更新楽しみにしております^^
最近なくなった、wii を得ようとして水を飲みつつ(トイレにも行っていない?)亡くなった女性は、こういう内容を多分知らなかったんですね。
なお、私もストレスたまると、結構水を飲むスピードが速くなるので、注意することにします。
と言っても、短時間で 1L も行きませんが...。
ちなみに、ゼロカロリー飲料でも、なぜかナトリウムが入っていることが多いのは、低ナトリウム症予防なのでしょうか。
そうでもないのかな?
まあ、塩をかじる訳にもいかないのですけどね。
どのくらいとればいいんでしょうね。Na は。
170mg/l くらいなのでしょうか?
(商品の表示だとそれくらい? 記載したのは Pepsi NEX Zero)
注目しだすと、みんなナトリウムとビタミンC(こっちは保存料的かな)が入っていますね。
良い知識をありがとうございました。
精神科看護や、自閉症者のケアの分野では「水中毒」や「低ナトリウム血中症」は注意すべき点として認知されています。最近、医学書院から『多飲症・水中毒 ケアと治療の新機軸』という本がでましたので、おしらせします。
http://www.igaku-shoin.co.jp/bookDetail.do?book=59507
わたしの同僚も以前つとめていた施設で水中毒の発作で利用者さんが亡くなったそうです。ケア労働者には「身近な事故」だと おもいます。