2006年10月21日

進化論とID論QandA

今日というか昨日「進化のアルゴリズム」のエントリに来たお客さんがとてもいい質問をしてくれたので、回答に補足を入れつつ別エントリとして仕立てる事に。
ID論の関連エントリはどれもコメント欄が長くなりすぎて、いちいち引用するのも大変だしね。 
 
 
インテリジェントデザイン(ID)で検索していたらたどり着きました。
すごい掲示板ですね。私も書き込ませていただきます。

すごく疑問なのですが、進化とIDって相反するものなんですか?

医療では、ある病気を引き起こす悪性ウイルスに対してワクチンを投与してもいずれはワクチンが効かない新種のウイルスが登場する場面がある事は周知の事実だと思います。
単なる突然変異だという風に片付きますが、生命力の成せる業なのではないでしょうか。
どうしてか形の違うタンパク質を作り出せるようになったという事で・・・
DNAが変わった?そう考えると生命体が進化するのもありえると思います。

ここはブログであって掲示板ではないのですが、そんな事はどうでもいいので脇に置くとして、のっけから核心を付いたいい質問です。

答えはYESでもありNOでもあります。
何故ならID論を唱えている人達の中には、「全ての生命は神の計画通りに作られた」というバリバリの聖書原理主義者から、「2001年宇宙の旅よろしく人類の進化には地球外知的生命体の介入があったのだ」というSF大好きな人まで多様な人達が存在するからです。
中でも多いのが、生の無目的性に耐え切れず、それゆえに「人間なんてたまたま生まれてきただけに過ぎない存在なんだよ」と彼らには聞こえるらしい進化論を敵視する人達です。
本当の意味で進化論を否定する人達は少数で、進化論が否応無しに考えさせる内容を受け入れられないからこそ否定している人が多いというのが私の理解です。
典型例は下の記事を見ていただくのが分かりやすいかと思います。
参考:インテリジェントデザイン理論(ID理論)にはまっちゃった産経新聞


なお、ID論者達は決して一枚岩でなどなく、それどころか呉越同舟と言ったほうがいい状態です。ID論を政治力で理科教育に押し込み、そしてあわよくば進化生物学を亡きものにするという大目的のために渋々一つにまとまってはいますが、内実は所詮そんなもんなので度々内輪揉めをしたり、仲間内でお互いに矛盾する論を唱えていたりと中々笑える状態になっています。
日本じゃ絶対数が少ないのであまり人の目に触れる事はありませんが、アメリカではキリスト教右派をバックにそれなりの力を持っており、度々ニュースを騒がせています。
海外のID論者の動向やID論者同士の内輪揉めについては「Kumicitさん@忘却からの帰還」が詳しいです。

この辺の関係はこちらの記事もあわせてご覧ください。
参考:ID論の創造論内における分類学的位置付け
参考:創造論とID論の分類フローチャート


ちなみに科学に抵触しないID論というのは成立可能です。
つまり進化論を全面的に認めたID論。
全面的に認めた上で、誰かこっそり生命の歴史に介入している者がいるとする説。
まあ今のところ証明は不可能なので所詮はSF止まりですけどね。
裏でどう考えているかはともかく表向きこの立場をとる人間はそれなりにいるのですが、馬脚を出して叩かれたり、進化論を認めない立場のID論者に足を引っ張られたり、鞭毛や免疫のような藁にすがって流されていったりと、大抵ろくな目に遭っていません。
個人的にはID論みたいなけちの付いた論はとっとと捨てて、新しい立場に移りかえればいいのにといつも思うのですが、やはり大樹の下はそれなりに魅力的なようです。
私はあきらめの悪い彼らのことがそれなりに気に入っているので、個人的に介錯のお手伝いをする事にしています。
参考:ID論者が犯した3つの過ち


次の質問です。
でも一個だけどうしても理解できないのです。
一番初めの原生生物ってDNAを持っているんでしょうか?

まずはお約束のツッコミから。

原生生物なら間違いなくDNA持ってますよ。なぜなら単細胞とはいえ真核生物ですから(笑)
核を持つ生物の前には当然核を持たない生物の存在があります。
参考:原生生物の進化: index


wikiで生命の起源を読んだのですが(生命の起源 化学進化説の欄を抜粋)
>4.こうした原始海洋の中で、脂質が水中でミセル化した高分子集合体『コアセルベート』が誕生する。
>5.『コアセルベート』は互いにくっついたり離れたり分裂したりして、アメーバのように振る舞う。
>6.このようなコアセルベートが有機物を取り込んでいく中で、最初の生命が誕生し、優れた代謝系を有するものだけが生残していった
↑この6.で有機物を取り込み中に生命が誕生したことになっていますが、ずいぶん飛躍しています。
この説明ではDNAが存在し得ない生命と思えます。
さらにwikiを読み進めていたら単純な単細胞生物にも核があるようなので、そうするとDNAを持っている事になりそうです。

だから核のない生物だっているというのにw
それにわざわざオパーリンの頃、1920年代の骨董ものの説明を持ち出さなくとも、Wikipediaの生命の起源の項目にはもっと最近の情報だって載っていますよ。
そりゃ当時はその程度しか分かっていませんでしたが、今はもっと理解が進んでいます。

おそらくおっしゃりたいのは「最初の生命」という意味だと思いますが、最初の生命がDNAを持っていたかどうかは分かりません。タイムマシンでもあれば別ですが、現在の我々には当時を知る手段がないからです。現在分かっている事から推測するなら多分持っていなかっただろう、という意見が主流です。
生命をどう定義するかによっても変わってきますが、生命の原型は自己複製子であっただろうという事で大抵の科学者の意見は一致しています。自己複製子とは自分自身のコピーを作る分子の事で、RNAワールドと呼ばれる仮説なんかがこれにあたります。
参考:RNAワールド - Wikipedia

ちなみに「細胞」は分かりやすい生命の単位ですが、必ずしも生命の成立要件ではありません。RNAかDNAか、はたまた他の何かかも知れませんが自己複製系がまず存在し、それが殻に包まれる事で「細胞」が誕生したというのが現在の生化学の理解です。
参考:生命 - Wikipedia


なお、Wikipediaは確かに便利なものですが、こういう科学の最先端の部分の知識を得るためならば、きちんとした教科書を読む事をお勧めします。
Wikipediaではどうしても限られた断片的な情報しか得られませんから。
ちょっとボリュームはありますが「シリーズ進化学」などがお勧めです。
国内の進化生物学の教科書の中では、質量共に一番だと思います。
ちなみにこのエントリでの話に対応するのは3巻になります。

シリーズ進化学〈3〉化学進化・細胞進化(Amazon)

進化生物学のBookListもちょっと拡充しておきました。


この記事へのコメント
  1. いつも楽しく拝見しております。
    重箱の隅つつきで恐縮なのですが、WikipediaはWikiというソフトウェアを使用して作られた百科事典で、wikiとは別のものです。
    WikipediaをWikiと略すのは、その問題を扱う専用のWikiが存在するかのような誤解を招きますので、略さずにWikipediaと読んでいただいた方が良いかと存じます。

    Wikiとは 【ウィキ】 ─ 意味・解説 : IT用語辞典 e-Words
    http://e-words.jp/w/Wiki.html
  2. Posted by at 2006年10月23日 02:59
  3. ご指摘ありがとうございます>上の人
    早速直しておく事にします。
  4. Posted by 黒影 at 2006年10月25日 05:17
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