2004年12月22日

クジラ保護のためには捕鯨が必要?

矛盾した話のようにも見えるが、保護の対象と捕鯨の対象とで種が違う。
保護の対象となるはシロナガスクジラ、捕鯨の対象とするのはミンククジラである。

なぜミンククジラの捕鯨がシロナガスクジラの保護につながるかというと
南氷洋で増えすぎたミンククジラがシロナガスクジラの生息域を奪っている可能性があるからだ。

ミンク増えシロナガス増えぬ謎解きの旅 水産庁、本格生態系調査

この海域では捕鯨禁止以降ミンククジラは大幅に増加したものの、
かつてこの海域で繁栄していたシロナガスクジラの姿は見られず、なぜ戻ってこないのか謎とされている。

あるエリアの食物連鎖の頂点に立つ動物が急激にその数を減らした時、別の動物がその地位を奪うことは
陸上の生態系では普通に見られる現象である。
海洋の生態系は陸上ほど研究が進んでいないが、同じ事が起こっている可能性は十分ありえる。
ましてシロナガスクジラとミンククジラでは共にオキアミを餌にしており、生息域も重なっている。
同じエサと生息エリアを二種類の捕食者が取り合う、初歩の生態学のモデルである。
乱獲でシロナガスクジラがいなくなった海域をミンククジラが占領してしまい
シロナガスクジラが戻って来れない可能性が十分に考えられるのだ。

 一九〇〇年ごろは南氷洋だけで二十万頭いたと推定されるシロナガスクジラは、巨体のために最も効率的に鯨油が取れるクジラとして捕獲対象となった。一九六四年の捕獲禁止にもかかわらず、現在千二百−二千頭で最盛期の1%以下。対照的に体形が小さいため無視されたミンククジラは百年前には八万頭が七十六万頭に。IWC科学委員会では年間二千−五千頭のミンククジラを捕鯨しても問題はないと試算している。
《オキアミ争奪》
 南氷洋は魚がほとんど生息しない生態系で、シロナガスクジラとミンククジラは、オキアミを食べている。
 水産庁によると、シロナガスクジラの激減で、繁殖の早いミンククジラの栄養が良くなり、増えて海の空間を占有、シロナガスクジラの成長を妨げているという。このため、水産庁では「ミンククジラが増え、シロナガスクジラ回復の芽を奪っているならば、ある程度ミンククジラを間引きして、シロナガスクジラがエサを自由に食べる環境が必要。調査を通じ南氷洋の生態系回復に国際貢献が可能だ」(小松正之漁場資源課長)


この仮説が正しいかどうかを調べるため、水産庁はクジラの種族間の本格的な生態調査を開始する。
調査結果次第では、捕鯨の部分的解禁に向けた決定的な一打になるのではないだろうか?生態学的な視点から見ても
1.シロナガスクジラが減った分を補うようにミンククジラが増えている点
2.ミンククジラが生息エリアを占有してしまっている事実
から今回提起されたシロナガスクジラが増えないメカニズムが事実である可能性はかなり高いように見える。
少なくとも生態学の競争モデルは、均衡状態から急激に片方の数が減ったという設定を導入するとこの仮説を支持する結果を出す。

となるとシロナガスクジラの個体数回復のためには
1.他の競合種との競争が起きない十分な広さの生息エリアの確保
2.ミンククジラの間引きによる生存競争の緩和
のどちらかが必要となる。
人類が実行可能なのは2の間引きだけだろう。

グリーンピースみたいな「シロナガスクジラは保護しなくてはいけない。ミンククジラも捕鯨はダメ」
といっている連中は、もしこの仮説が証明されてしまった場合どうするんだろうか?


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◆関連リンク
南極海のシロナガスクジラ資源はなぜ回復しないのか


posted by 黒影 at 15:42 | Comment(7) | TrackBack(3) | サイエンスニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
  1. 初めまして☆

    史上最大の動物
    シロナガスクジラを絶滅させない為にも、
    2番の案が妥当かも知れませんね。

  2. Posted by coelacanth0707 at 2005年01月09日 03:14
  3. >coelacanth0707さん
    はじめまして。コメント、TBありがとうございます。
    >シロナガスクジラを絶滅させない為にも、
    >2番の案が妥当かも知れませんね。
    そうですね、今分かっている事からはシロナガスクジラの個体数回復のためにはミンククジラの適度な間引きがもっとも効果的だろうと思われます。
    今のところグリーンピースなんかはこのモデル自体を否定していて
    有効な対案も出せていませんけどね(笑)
  4. Posted by 黒影 at 2005年01月09日 09:14
  5.  根本的な問題が考えられていませんね.長い間捕鯨において不正を行なってきた日本のお墨付き団体が出した結果がどこまで信用できるかという問題です.陸上でもありませんか?自然環境影響調査ってものが.あれのどこが信頼性があるっていうのでしょうか?結果ありきの信頼性がまるでないレポートがでてきても全然おかしくありません.モデルなんてものは,自然科学において仮説程度のもので,現実は様々な複合要因が絡み合い判断が困難なものです.いい加減,皆さんは科学的調査の「科学」のトリックに気づかないのでしょうか?
  6. Posted by 月夜 at 2005年02月14日 15:57
  7. >月夜さん
    このレポートはIWCがお墨付きを出したデータを元に書かれています。
    IWCはどちらかと言うと捕鯨再開反対派のほうが強い国際委員会です
    前提条件を間違えておられませんか?
    >モデルなんてものは,自然科学において仮説程度のもので,現実は様々な複合要因が絡み合い判断が困難なものです.
    これはごもっともです。私も本文に書いた通り仮説として扱っていますし、
    仮説が正しいかどうかを調べるために調査が始まったのだと考えています。
    データを集め、これを元に仮説を立てる。仮説を確かめるためにさらにデータを集める。
    データに不備があるというならともかく、これは科学の常道でなんら問題がない方法だと思います。
    >いい加減,皆さんは科学的調査の「科学」のトリックに気づかないのでしょうか?
    捕鯨再開派が出したデータは信用できないということでしょうか?
    残念ながらデータの信頼性の議論にデータを集めた目的は無関係です。
    データが信頼できないというのであれば、具体的にデータの穴を指摘するか
    彼等の持ち出してきたデータを否定する別のデータを持ってこないと
    議論にすらならないのではないでしょうか?
  8. Posted by 黒影 at 2005年02月14日 18:41
  9. はじめまして、ブログ「玄洋日誌」筆頭者の水産大国です。

    そもそも、利用資源として問題となり、禁漁となっているクジラはシロナガスクジラをはじめ、幾種かありますが、絶滅の危機にまで生息数が少なくなっているのは支那(中国)の揚子江に生息するヨウスコウカワイルカの身です。

    シロナガスクジラやセミクジラは資源として利用する上でいまだに規定値以上に回復していないというのが正確で、絶滅危惧種と同列には並べるべきではないわけです。

    ちなみに米国はイヌイットの「文科保護」を名目にセミクジラの漁を認めていますが、この漁によってそのクジラから取れる肉の漁は現在日本が調査捕鯨によって生産している鯨肉の量とほぼ同じということです。

    なお、セミクジラをはじめ、クジラの生息数が減ったのはもともとは欧米の効率が悪い、鯨油大量生産によるものであって、日本は9000年にかけて近海でクジラを捕ってきましたが、生息数について問題になったというとこは一度もありません。

    日本こそが一番、クジラをはじめとする海洋にやさしい、国であったということですね。
  10. Posted by 水産大国 at 2005年02月14日 23:30
  11. シロナガス/ミンク競合論は極めていかがわしい議論だと思います。 素人でも問題点はたちまち幾つか思いつきますが、とにかく列挙してみましょう。

    1)この2種の鯨の生体重量は、引用しておられる大隈の記事によっても、初期1559万トン(ミンク59万、シロ1500万) 現在567万トン(560万、シロ7万)となっており、ミンクの増加にも拘らずまだまだオキアミは余っている勘定になる。

    2)競合が2種の鯨のみに限定されているが、オキアミをめぐる競合者として極めて重要なカニクイアザラシについても考慮する必要がある。

    3)鯨研の最近の見解ではザトウやナガスなどの大型鯨の回復が顕著で、ミンクが押しやられていると言う。 だとすれば鯨は大きいほど強いとも考えられる。 何故シロに限ってミンクに押されるのかの説明が必要である。

    4)シロの減少は余りにも激しかった。 シロが既に種の維持に必要な遺伝子の多様性を失っている可能性が排除できない筈だ。

    5)シロは繁殖の為南極の冬に、赤道方面に大きく回遊する。 これほど減少すると、配偶相手との遭遇に困難が生じている可能性もある。

    などなど餌となるオキアミの取り合いは全体としても問題のたった一つでしかありません。

    一方、明るいニュースとして当の鯨研の研究者による試算として、シロナガスが7.8%と言う大変高い率で増加しているとの説が発表されました。 この通りであればこの大隈による競合論自身が根拠を失った訳で、他の問題を論ずるまでも無い事になります。
    それかあらぬか今度鯨研が開始する第二期計画のリサーチプランを読むと彼等がこの競合論をもう棄てているような印象を受けます。
  12. Posted by げんた at 2006年01月26日 12:48
  13. >日本は9000年にかけて近海でクジラを捕ってきましたが、生息数について問題になったというとこは一度もありません。

    >日本こそが一番、クジラをはじめとする海洋にやさしい、国であったということですね。
    Posted by 水産大国 at 2005年02月14日 23:30


    本当にそうでしょうか。 サハリン沖を餌場とし底棲動物を濾して食べるコククジラは不幸にも旧日本領土の沖合いを通って回遊することから乱獲され、現在100頭ほどを残すのみ。 絶滅寸前です。 これの保存対策は米国と韓国が取り組んでいますが、日本は頬被りで知らん顔です。

    南極と北洋のイワシ鯨は、商業捕鯨の末期に日本とソ連が徹底的に減らしIWCが介入して捕鯨禁止にしました。

    貴方のご意見には賛成しかねます。


  14. Posted by げんた at 2006年01月29日 05:19
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