2009年11月20日

コンプリート・ゲノミクス社が1000ドルゲノムに王手をかけた件

ようやく手が空いたので、今のうちにたまったニュースを片づけてしまおう。
まずはゲノム解読ビジネスの覇者候補、コンプリート・ゲノミクス社の動きから。

Complete Genomics maps human genome for as low as $1,700
Complete Genomics said it deciphered the whole genomes of three individuals, one for as low as $1,700. "This high-quality, cost-effective approach to genome sequencing will allow researchers to study complete genomes from hundreds of patients with a disease to advance the understanding of the genetic causes of that disease, with an end to preventing and treating common human ailments," said Cliff Reid, the company's CEO. The company expects to decode genomes of 10,000 people in 2010.
コンプリート・ゲノミクス社が一人当たり1700ドルの安さで三人の全ゲノム解読に成功したと発表した。
CG社のCEO、クリフ・レイド氏はこう語る。
「この高品質で費用効率の高いゲノム配列に対するアプローチは、研究者達が数百人もの疾患を持つ患者の全ゲノム配列を研究し、その病気の遺伝的な原因への理解を深めることを可能とするだろう。そして人間の一般的な病気の予防と治療の終結をもたらすだろう。」
同社は、2010年度に10000人のゲノムを解読すると予想されている。

コンプリート・ゲノミクス社は今年の9月にも、一人頭4000ドルで14人のゲノムを解読したと発表している。
Complete Genomics decodes full genome of 14 individuals

ライバル企業が驚異的なスパートを発揮するのでもない限り、遅くとも来年の春には、1000ドルゲノムへの一番乗りを果たすだろう。
一人のゲノムを読むのに数億ドルかかっていた2000年頃や、ワトソンのゲノムを読むのに100万ドルかかっていた2006年頃がまるで大昔のようだ。
それにしても来年一年間で1万人のゲノム解読とは、その情報がそろったららどれだけ遺伝性疾患の研究が進むかと思うと興奮を禁じ得ない。


会社から出ているニュースリリースを読むと、この解析結果は11月5日のオンライン版Science紙に発表された模様。
http://www.completegenomics.com/
http://www.completegenomics.com/pages/materials/SciencepublicationPR.pdf
Complete Genomics Publishes in Science on Low-Cost Sequencing of Three
Human Genomes Using Its Proprietary Sequencing Platform

MOUNTAIN VIEW, Calif. ― Nov. 5, 2009 ― Complete Genomics, a third-generation human genome sequencing company, today announced publication of a report in the journal Science describing its proprietary DNA sequencing platform, including analysis of sequence data from three complete human genomes. The consumables cost for these three genomes sequenced on the proof-of-principle genomic DNA nanoarrays ranged from $8,005 for 87x coverage to $1,726 for 45x coverage for the samples described in this report.

二段階の精度でゲノムを解読したようで、87xで8000ドル、45xで1726ドル。

一般ピープル向けに少し解説を入れると、この倍率は同じ場所を何度読んだかを示す指標で、この数字が高いほどゲノムの精度は高まる。
ゲノム解読は遺伝子を短い配列で何度も読んでそれをつなぎ合わせる形で行われるので、何度も繰り返し読んでエラーレートを下げないといけない。
当然何度も繰り返して読む方が正しい配列を得られる可能性が高まるが、そこはコストとの兼ね合い。
しかしこの会社なら、解析精度を下げてもいいなら今すぐにでも1000ドルゲノムを実行できそうだな。

ついでに論文へのリンクを貼っておく。
はてブで見知った面々が既にブクマしているのはさすがだ。
Human Genome Sequencing Using Unchained Base Reads on Self-Assembling DNA Nanoarrays -- Drmanac et al., 10.1126/science.1181498 -- Science Human Genome Sequencing Using Unchained Base Reads on Self-Assembling DNA Nanoarrays -- Drmanac et al., 10.1126/science.1181498 -- Science

そういやこの会社はヒトゲノム解析コンテストに参加しないのだろうか?
Archon X PRIZE for Genomics
参加者リストに名前が載っていなかったが、十分優勝を狙えそうに思えるのだが。
posted by 黒影 at 22:29 | Comment(2) | TrackBack(0) | バイオインフォマティクス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
  1. うわー、とうとうそこまで来ましたか。
    原著みたいなぁ(泣)。
    20年近く前にX線フィルムを肉眼で読んでいた身としては、隔世の感がありますね。
    10年後には、遺伝子解析の世界が劇的に変わっているんでしょうね。
    それこそ学生実習で新規バクテリアの全ゲノム解析と近縁種との比較とか普通にやってそうだ。
  2. Posted by modoki at 2009年11月23日 21:25
  3. >modokiさん

    私が学生の頃ですら既に、完全にダイデオキシ法に置き換わっていたので、今の学生なら多分「X線フィルム?そんなもの何に使うの?」ですよ。
    マキサム・ギルバート法なんて教科書でちょろっと出てくるだけですし、下手したら方法自体知らなかったりするんじゃないですかね。

    ちなみに、次世代シーケンサを授業で使うようなところはさすがに国内ではまだ無いでしょうが、バイオインフォ系の学科なら、公共DBからデータ取ってきて実習でゲノムのアセンブリを行うようなところも既にあります。
    海外の進んでるところなら、454あたりのデータ使ってハイブリッドアセンブリなんかを教えるところも既にあるとか。

    10年と言わず3年後でも既にゲノム解析の様相は完全に様変わりしているでしょうが、おかげで今は教員も皆必死で勉強していますよ。
  4. Posted by 黒影 at 2009年11月25日 21:59
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