2004年12月05日

幹細胞研究の話をしたスクールバス運転手解雇

アメリカでは政治に関わる話はうかつにすることも出来ないようだ。
幹細胞研究について、選挙直前に通学中のバス内で生徒と議論した運転手がクビになったらしい。

生徒に幹細胞研究の話しをして、スクールバスの運転手が解雇される

今回の選挙では幹細胞研究も重要な政策の一つとして議論を呼んでいただけに
これに関わる発言は政治的なものと受け止められるようだ。

バスの運ちゃんは、メルギブソンのES細胞に関するインタビューを読み
「成人の幹細胞を使った治療法は既に実用化されているにも関わらず、
ES細胞(肺性幹細胞)は20年も続けられ、多額の研究費を使っているにもかかわらず
病気の治療に役立っていない」というメルギブソンの意見をそのまま生徒に伝えたのだ。

この意見の正否はともかく
なんでも、バス運転手は政治的な議論を生徒と交わす事が許されていないそうな。
親からクレームがきてクビになってしまったらしい。
日本じゃ例えクレームが来ても注意止まりでクビなど考えられないが、
さすがアメリカと言うべきか。自由と平等は建前だけの階層社会は一味違う。


メルギブソンの言う、ES細胞は病気の治療に役立っていないという意見は実は正しい。
しかしそれは現実の一側面のみを見た意見だ。
ES細胞を用いた治療法も成人の幹細胞(骨髄性幹細胞?)と同じくほぼ実用化段階にある。
成人の幹細胞と違うのは倫理的な反発が強く実用化に踏み切れない点だけだ。

胚性幹細胞(ES細胞)というのは文字通り人間の胚、すなわち受精卵から作られる。
受精卵は命かそうでないか、人間か否か、利用が許されるか否かで倫理的、宗教的な激論が続いている。
アメリカは原理主義的なキリスト教の力が非常に強い国だ。
それゆえに簡単にはES細胞を用いた治療を実用化する事が出来ないのだ。

倫理に関わる問題は議論が起こって当然だし
双方納得するまでとことんやればいいと思うのは私が宗教的背景を持たない日本人だからだろうか。
この考えが浮かぶ背景にあるのは、正しい論理は必ず受け入れられる
話し合えば必ず相互理解できるという考えだ。
一見もっともな考えに見えるのだが、これは話し合い万能主義という幻想に過ぎない。
残念ながら世の中には話し合いなど通用しない人間がいくらでもいる。
特に原理主義者というのはその最たる者だ。
原理主義者には自らの信じる物が絶対。それに反する意見は全否定するだけだ。
そこには理屈も論理もない。最初から話し合いにならないのである。
キリスト教原理主義者に関しては、また機会を改めてきちんと書こうと思う。

それにしても、自分達で猛反対して実用化を控えさせておきながら
役に立っていないから研究を止めろとは、もう何といってよいやら。
自分達の倫理観に反するから止めろというのならまだ理解できるが
こういうマッチポンプ的なことをやられると実に不愉快だ。


ブログランキングに投票

12/6誤字修正
posted by 黒影 at 14:18 | Comment(2) | TrackBack(0) | バイオニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
  1. TBありがとうございます。
    自分が書いたものよりも鋭い切り口の内容で、
    興味深く読ませていただきました。

    また遊びにこさせていただきます。
  2. Posted by DIY at 2004年12月05日 18:39
  3. >>DIYさん
    記事を読んで頂いてありがとうございます。
    このテーマは根が深い問題だから、本気で書こうと思うととんでもない長さになりますね。
    何回かに分けて、少しずつ問題を書いていこうと思いますので
    今後ともよろしくお願いします。
  4. Posted by 黒影 at 2004年12月05日 21:59
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。