そのマンガの中で主人公がこんなセリフを口にする場面がある。
海皇紀6巻P95より
『「自分の目で見たものしか信じない」
などと言ったり思うのはよしなさい…と
おふくろに言われて育ったんだ
見なくとも真実はあるだろうし……
逆に言や…
この目で見たからといって
必ずしもそれが正しいとはかぎらない…とね』
疑似科学ウォッチングをやっていると、ビリーバーの中に
「自分の目で見たものしか信じない」とか
「私は実際に見た/体験した、だから○○は正しい/△△は効く/□□は存在する」
というニュアンスの言葉を口にする人をちょくちょく目にする。
あるいは、これの裏返しで
「お前は見た/試したのか、見も/試しもしないのに否定するな」
というのも結構ある。
もちろん安易な否定者の側にも、「自分の目で見るまで信じない」なんて軽々しく口にする同類はいる。
◆「自分の目で見たものしか信じない」の危うさ
この手の「自分の経験・体験」を絶対視する考え方というのは、ナイーブを通り越して危険ですらある考え方だ。
なんせこの言葉は裏を返せば、それがイカサマだろうが、「一般人の常識」に反する物理化学現象に都合のいい説明をでっち上げただけだろうが、目の前で見せられさえすれば相手の言うままに信じてしまうということと同義なのだから。
私は多少マジックをかじっている人間だから、人の意識の陥穽を突く方法についてはそれなりに知っているし、疑似科学ウォッチングなんてこともやっているので、詐欺師の手口についてもちょっとやそっとでは騙されないぐらいには詳しい自信がある。
それでも、いや、それだからこそか、
自分の知識、知覚に限界があることが分かりきっている以上、「自分の目で見たものしか信じない」なんていう、「自分は見たもの全ての真偽を見抜くことが出来る」といわんばかりの自信過剰な台詞は口が裂けても言えない。
日常体験から乖離した「○○という体験/現象」を経験させた後で「都合のいい考え」を刷り込むというのは初歩的な洗脳のテクニックである。
オウムが薬物による幻覚を「神秘体験」であると信者に刷り込んだように。
いかに「衝撃的な現象を見せられた/体験させられた」としても、それが「説明」の正しさを保障してくれるわけではない。
しかし「○○という体験/現象」の内容が衝撃的であればあるほど、「都合のいい考え」を否定するのは難しくなる。
たとえ疑問を抱いたとしても、その「体験/現象」を説明する言葉が自分の中に存在しなければ相手の言葉に反論することは出来ず、それを鵜呑みにするしか無いからだ。
そしてカモは疑問を抱くことさえなく、この手であっさり引っ掛かる。
"ウォーターエネルギーシステム"や"超発電機"のようなインチキ発明がよく「展示会」を行うのは、カモを引っ掛けるにはこの方法が最も効率がいいからでもある。
幻影随想: 毎日新聞がフリーエネルギー詐欺に引っ掛かっている件について
幻影随想: ウォーターエネルギーシステムの中身が予想以上にしょぼくて脱力した件
逆に言えば、十分な知識さえ持っていれば、
わざわざ見に行く/体験するまでも無く、公開されている情報のみからインチキを見抜くことだって可能だし、
あるいは知識は無くとも、
「常識を覆すデモンストレーションには眉に唾つけてかかれ」という心構え一つ持つだけで騙される危険は相当減る。
"Only a fool learns from his own mistakes. The wise man learns from the mistakes of others."
"愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ"
この言葉は現代でも十二分に通用する。
◆おまけの練習問題
さて、それでは最後に練習問題と行こうか。
毎日がアレな記事を飛ばしたばかりだというのに、対抗するかのように産経までやらかしている。
さすがトンデモ記事の東西横綱だけのことはある。仲のよろしいことで。
この記事を読み、どこがおかしいのか見抜いてみよう。
特集:生かせ!知財ビジネス/逆説理論で“開発” 宙に浮く飛行艇 - FujiSankei Business i./Bloomberg GLOBAL FINANCE
世界が栃木県の片田舎で生まれた発明に大きな注目を寄せ始めた。驚異の飛行艇が現れた。
その飛行艇は両翼がない。魚のマグロが3本寝たような形状である。ほとんど滑走することなく垂直に近い角度で上昇し、180度旋回や横転を瞬時にこなす。圧巻は、空中停止。そのままゆっくり下降して着陸できるが、上昇や直進を再開することもできる。まるで水中を泳ぐ魚のように自由自在。見た者誰もがUFOの実在を信用するようになる。
ヒントははてブ
はてなブックマーク - 特集:生かせ!知財ビジネス/逆説理論で“開発” 宙に浮く飛行艇 - FujiSankei Business i./Bloomberg GLOBAL FINANCE
はてブに分かりやすい死亡フラグを立てている人がいて気になるが、
ぶっちゃけこれは推力の大きな推進機関さえあれば実現可能なことで、別に航空力学に反するようなものじゃない。既に似たようなものは玩具として製品化もされている。
#ちなみに、推力重量比の関係で、このおもちゃを人の乗れるサイズまで大きくしようものなら、戦闘機のジェットエンジン並の高出力の推進機関が必要になる。
以下の動画をグローバルエナジーの動画と比較すればそれは一目瞭然だろう。
YouTube - Flying Boat(RC)
十分な推力さえ確保できれば、こんなのだって飛ぶぞ?
YouTube - Flying Lawn Mower
昔、小学校の頃だったかな、
"あさりよしとお"の"まんがサイエンス"で「十分な推力があれば下駄だって空を飛ぶ」と書いてあったのを読んで、子供心にも「へえ〜」と感心したもんだが、知財情報担当記者が子供向け雑誌以下のレベルというのは情けない。
記事自体も「インチキ発明記事」のテンプレにできそうな出来栄え。
「世界が注目」「まったく新しい理論」「頭の固い科学者は否定」「外国企業が殺到中」などなど、
ひょっとして狙ってやってんのじゃないかと思ったほどだ。
時間があれば独立したエントリにしても良かったかも知れない。
最後に宣伝
まんがサイエンス: あさり よしとお
まんがサイエンスシリーズは超おすすめ。
天文学、物理学、生物学のような基礎的な内容からコンピューター、ロボット工学、バイオテクノロジーなどの応用的な話題まで幅広く、しかも子供にも分かるように分かりやすく解説しており、子供だけでなく大人でも十分楽しめる。
今でも鮮明に内容を覚えている、私の子供の頃のバイブルの一つだ。
【疑似科学・ニセ科学・オカルト・トンデモの最新記事】
http://www.ecoslim21.jp/index.html
http://www.ecojapan21.com/siteMap/siteMap.html
会長のS氏がエフジェイシーという会社で出してる出願もみなし取下が既にでてるものもあるし、
私も「よく産経が記事にしたなあ」という感想をもってます。
その前後の「人間は自分の望む形に事象を認識してしまう傾向がある」というニュアンスの台詞も考えさせられました。
「都合のいい考え」、多分、安易なものに走る人の傾向なのかなと思いました。
貴殿は以前、常温核融合については少しも信じていないと強く言われていましたが、このことについてはどうお考えでしょうか?
米国化学会で認められたっておっしゃるけど、論文が載ったって話でしょう?
以前の常温核融合フィーバーのときも論文は出ましたけど、たくさんの追試がされて結局再現性がないということになりました。
今回について言えば、常温核融合があまりにも怪しすぎて、誰もリスクをとって追試しないんじゃないかと懸念されている(誰かやれよ、俺は嫌だけど)という論調だったような。
だっけ?
自分の認識範囲外にあるものは、目の前で起こったとしても、気が付かない(目と脳の違い)訳で。
書いてる意味解るかな?
α崩壊の逆を起こさせればいいだけです。
ただこれが起きる確率はプランク定数レベルで小さいので発電などに使えるはずがありません。
と言ってる人は、目の前の人間が喋ってることなら何でも信じるのでしょうか?
そんなわけないですよね。
http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Himawari/4430/aircraft/01/00.html
>りくさん
産経は科学に関してはアホですから。毎日と違う点は変態の替わりに国士がうようよしてる点です。
http://www.youtube.com/watch?v=m8SmclAAGFk
http://www.youtube.com/watch?v=MXqJCeiAKnI
まぁ、頭が良いのと知識があるのは別と言うことで。
"愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ"
という引用は、どこからのものでしょうか?ネット上で調べるとプロイセン王国宰相のビスマルクが言った、と主張する人が多いです。が、裏付けがあまり見当たらないので、もし知っていたらお教えいただきたいと思います。
やっぱ本当にエネルギー関係で大きな発明があったら大もうけが出来るっていうのが容易に想像できるのと、当たり前に使っていて絶対必要な割りに、知識が一般的にないって言うのが肝なんでしょうかね〜
しかし、この飛行艇のインチキぶりを見ると、本業の風力発電の方も眉唾に思えますから、宣伝効果は激しくマイナスですw
あと、産経の中岡浩サンもこんな馬鹿を晒して、このさき生きていくのに支障が出てくるといいのにw
ただ見たものは信じていいと思うけど、そこに恣意恣意を介入させて信じ込む人がいるんだよね。
論理的に考えて、反証性も十分検討しなきゃ
とは言えその知人はやたら怪しげな噂話をまるで見てきたように話す人
ブログ主様や海皇記の著者様が正しいようです。
「自分の目で〜」も含めて、某ライトノベルへの反論っぽく感じました。
先日、『まぐれ-投資家はなぜ運を実力と勘違いするのか-(ナシーム・ニコラス・タレブ)』という本で知ったのですが、哲学者の故カール・ポパー氏は、科学と似非科学との線引き問題について「反証可能性」を用いることで解決したそうです。
大変興味深い本でしたので、まだ読まれていらっしゃいませんでしたら、ぜひお薦めです。
海皇紀はこういうのがあるから私も好きです。
練習問題(^^)については、
パワーボートがよくうっかり空飛んでますが何か?
ってとこでしょうか。
http://www.youtube.com/watch?v=DVsng6n2hzk
翼の形をしていなければ翼とは思わないってのは、風を切って走ったことがない人でしょうかねえ。
真偽や信用とかいったものは人間が作り上げたもの
その漫画は読んだことないけど、その台詞を言ったキャラは何を'信じる’んでしょうか?
別に信じるということを全般的に否定しているセリフじゃありませんよ。
見なくとも真実はあるだろうしって言ってるじゃありませんか。
どうやらベルシオン型からエンゲル型へと呼称がかわったようですね。
みんなが肯定してくれて自分が注目されてうれしい?
結局は、ただのマスコミといっしょだな。乙。
がんばってもうひとひねりしてください。
この論文のような「もともと持っていない能力を獲得した」なんて場合には、Contamination(外部からの別の菌の混入)ではないことをDNA fingerprintingなどを用いて慎重に検討しないといけないはずですが、そういうデータもないし、テキストにもそのような確認をしたと書かれてませんね。
実際に、この数十年の実験の間に、何度もコンタミを経験したようですが(「コンタミした場合にはfrozen stockに戻った」との記述がある)、なぜこの論文のケースがコンタミでないと判断したのか、明確に説明されていません。
要するにイカサマ論文って事だし、こんなものを取り上げて大騒ぎした黒影くんもカスだと言われても仕方ないと思う^^
黒影のようなカスもいるという一つの例
PNASという三流科学誌に掲載された論文?(感想文と言った方が良いだろう)で大騒ぎして墓穴を掘った黒影くん、原菌株とCit+の個体のゲノム配列の比較、その解析結果を知っているのかな^^
進化が現在進行形で行われているって^^いやしくも現役の分子生物学者にこんなお馬鹿な主張をされては、ため息を付くしかないよね。何度このお馬鹿なセンテンスに肩をすくめたことか^^
この論文のような「もともと持っていない能力を獲得した」なんて場合には、Contamination(外部からの別の菌の混入)ではないことをDNA fingerprintingなどを用いて慎重に検討しないといけないはずですが、そういうデータもないし、テキストにもそのような確認をしたと書かれてませんね。
実際に、この数十年の実験の間に、何度もコンタミを経験したようですが(「コンタミした場合にはfrozen stockに戻った」との記述がある)、なぜこの論文のケースがコンタミでないと判断したのか、明確に説明されていません。
要するにイカサマ論文って事だし、こんなものを取り上げて大騒ぎした黒影くんもカスだと言われても仕方ないと思う^^
結局は、自分の経験・体験が元になって、真実と思われる物を判断しているし…
後、記事に突っ込み!
自信過剰な台詞は口が裂けても言えないと言う割には
騙されないぐらいには詳しい自信があるって^^”(汗
結局、自信過剰気味じゃないですか(・・?
結局、超常現象が本当かどうか?なんて、十二分に検討して判断するしかないしな…
わざわざ見に行く/体験するまでも無く、公開されている情報のみからインチキを見抜くことだって可能だし、
それらの知識は自分で見聞きして得たものです。
あなたは「自分の目」という言葉を額面通り受け取りすぎていませんか?
そもそも英語つかえないと情報のなかから真実たどりつけないし死につながるし…英語つかえないと死ぬと思う全て自分のこの目でみて確め体験しないと信用できんので…自分のこの目でみて確めるまで本もうのみできず信用できないから
そもそもこのきじかいた人は世界中の未確認飛行物体おちたとされるとこいって調査し自分の目でみて確かめたのかと思う…宇宙人は存在するのか自分の目で確かめたのだろうか…仮にもう何回もきてたら彼らは何しに宇宙のどこからきたのか…(・ω・)私はまだ自分のこの目で確かめてないが…自分のこの目でみて確めるものしか信用できんから