2008年10月12日

ミヤネ屋が校長会の水伝騒動の一件を取り上げたようです

先日のエントリ「 関東地区女性校長会が激しくやばい件」で取り上げた、女性校長会の関東支部集会で水からの伝言が取り上げられ、各地の学校で配布された問題が先日ミヤネ屋で取り上げられたようだ。
既にkikulog他各所で話題になっているので、遅ればせながら私も取り上げておくことにする。

 
 
 
◆問題の経緯
まずは軽く問題の経緯のおさらいから。
この問題の発端は、全国公立小・中学校女性校長会の関東支部が、今年の7月4日に埼玉で開かれた研修会の講師として江本勝を呼んだことである。
江本らはこの一件を彼らの広報誌「Hado」に掲載し、それを読んだ「ほたるいかの書きつけ」のFSMさんがエントリで問題を取り上げたことで、Web上に問題認識が広がった。

江本勝が「関東地区女性校長会」で講演!?(追記あり)|ほたるいかの書きつけ
 今現在も出張中なわけですが。
 例によって新宿紀伊国屋本店で『Hado』9月号を購入してパラパラめくっていたら、目を疑うような記事に出っくわした。
 「関東地区女性校長会」で、江本勝が招かれて講演したというのだ。

『教育現場に水のメッセージを』(『Hado』9月号)(追記あり)|ほたるいかの書きつけ
 本エントリの表題は、そのままこの記事の表題である。2ページ見開きの記事で、「OFFICE MASARU EMOTO」の甲斐富紀子氏によるレポート、という体裁になっている。
 本記事は次のような文章で始まる。
今年3月初め「EMOTO PEACE PROJECT」の事務局であるOFFICE MASARU EMOTOに、1本の電話がありました。
電話の主は、埼玉県所沢市にある小学校の校長先生からで、その内容とは、
「7月に予定されている関東地区女性校長会の総会に『水からの伝言』の著者である江本勝氏の講演をお願いできないでしょうか」というものでした。(以下略)

もしもFSMさんがブログでこの件を取り上げていなければ、この一件は誰の目にも止まらないまま放置された可能性もある。
今回ミヤネ屋でこの問題が取り上げられたのも、もとをただせばこのエントリを起点にWebに情報が広がったためなので、本当にファインプレーだと思う。

幸いこの件については、うち以外にもあちこちのブログや個人ニュースサイトで取り上げられたため、かなりの注目を集めることが出来た。
おそらく今回ミヤネ屋で扱われたのも、この辺からネタを拾ったのだろう。
kikulog:関東地区公立小・中学校女性校長会(追記あり9/24)
【水伝警報発令】女性校長会で水伝 :: Archives
PSJ渋谷研究所X: 校長先生たちに「水からの伝言」講演会【末尾に追記】
これはひどい―関東地区女性校長会の総会で水伝の講演 - alice日記
水からの伝言がなぜ問題なのかは前エントリとそのコメント欄のやり取りの中でほぼ示されたと考えているので、そっちを読んでもらう事にする。


◆水伝批判@ミヤネ屋
私は出張中だったのでミヤネ屋の番組を直接見たわけではないのだが、見た人の感想を読む限りでは結構いい出来だったようだ。
番組の概要を知りたい方は、ここらへんなんかが参考になるかと。
#Youtubeの動画は既に削除された模様。読売テレビはさすがに仕事が速い。

痛いテレビ: ミヤネ屋でニセ科学「水からの伝言」問題
画面キャプチャを並べながら番組の概要を紹介している。
どうでもいいことだが、きくちさんの風貌が怪しすぎる。

水は答えを知っている - Skeptic's Wiki:校長が教える仰天科学
2008年10月8日放送のミヤネ屋で、「校長達が教える仰天科学“水は言葉がわかる”の波紋」として「水伝」が取り上げられた。同年7月に埼玉県内のある小学校の校長が、児童の家庭に配る「学校便り」で、「水伝」を根拠に言葉の大切さを教えようとしたことがまず紹介された。さらに、番組スタッフがネット検索してみると、全国のあちこちの小学校の道徳の授業や朝会で「水伝」が引用されていることがわかった。


kikulog:水伝@ミヤネ屋(明日)
コメント欄でいろいろと情報が。

今回ミヤネ屋がGood Jobなのは、Web発のニセ科学の問題提起を、それほど時間的に遅れることなく旧メディアにちゃんと持ち込んだこと。
こういうのに引っ掛かる人というのは基本的にWeb上で情報を探したりはあまり(もしくはまったく)しない層なので、そこに情報を届けたいと思ったらテレビという媒体はそれなりに効果がある。
あとは「ふーん」で終わらなければいいんだが。

逆にBad Jobなのが女性校長会で、ミヤネ屋の取材を拒否し、教育委員会ともどもノーコメント。
この番組構成でこの対応というのはかなり悪印象になってしまうだろう。
こういうときこそ見識が問われるんだがな。
先日女性校長会に問い合わせをしていた人がいたが、これも校長会が今後どうする方針なのかとか、現状どうなっているのかといった情報がなく、7000冊がその後どうなったのかもまるで分からずじまい。
「関東地区女性校長会」研修会における江本勝氏の講演会に関連して

女性校長会といってもその内実はただの互助会で、会員に対して強制力を持つような性格のものじゃないというのは分かる。多分誰が水伝を発注したのかすら把握していないだろうし。それでも会の名前で講演を行った以上何らかの対応を求められるわけで。
私としては、自分達が片棒を担いで生徒に布教する形になった水伝にどう対応していくつもりなのかを知りたい。



◆おまけ
多分今回の女性校長会の問題は、ちょっと前にクリップした「月の哲学者」と同じ根を持つ問題だと思う。
「月の哲学者」ってのはこんな話。via mieki256's diary - 「月の哲学者」の記事が消えてるな…
Action Potentials:月の哲学者
たぶん6,7年くらい前のことかな、ぼくはウィスコンシン大学(理系の大学としてはなかなかいいところだ)で哲学のクラスを受けていた。そこではティーチング・アシスタントがデカルトについて説明をしていたのだけど、彼はものごとが必ずしも思った通りにはいかないということを示そうとして、次のように言ったのだ。「ペンを放せば地球ではいつもそれは下へ落ちるけれど、月では漂いだしてしまうだけだ」と。

ぼくは顎を落として、つい「なんだって?」と叫んでしまった。教室を見渡してみると、どうやらTAのその発言に驚いているのは友人のマークともう1人ほかの学生だけらしい。その他の17人はみんなぼくを「どうしたんだ、お前は」っていう顔で見ている。

「でも月でもペンは下に落ちるでしょ、ゆっくりとだけど。」ぼくは言ってみた。
「いーや、違うね」TAは落ち着き払って言う。「だって地球の重力からは離れすぎてるから。」

万有引力の法則"law of universal gravitation"という言葉の意味を百回考え直せと。
私もこれと同じ情況におかれたら、ツッコミを入れずにはいられないだろう。
このTAのコメントはあまりにも素敵すぎる。

えーと、えーと...あっ、そうだ!「でも月でアポロの宇宙飛行士たちが歩き回るのは見たことあるでしょ? どうして彼らは漂いだしてしまわないのさ。」これにTAが答えて、「そりゃー、重いブーツを履いていたからだよ。」まったく理にかなっているかのようにそんなことを言う。(これが論理学のクラスをたくさん取ったはずの哲学のTAが言うことなんだから!)

どうやら彼とぼくとはまったく違った世界に住んでいるらしい。そして決してお互いの言葉がわかることはないのだ。初めてそう気づいたぼくは、そこで諦めることにした。教室を出るとき、マークは憤慨していた。「なんてこった! どうしたらあんなに大馬鹿になれるんだ?」

ぼくは努めて理解的にふるまった。「マーク、彼らもかつてはわかっていたんだよ。ただそれは彼らの世界の見方の一部ではなくなって、忘れてしまったのさ。たぶん多くの人間はおなじような間違いをしてしまうんだと思う。」

科学が「世界の理(ことわり)」を研究し記述する学問だということを理解していない、もしくは忘れてしまった人間は、こんな風に現実世界の物理法則や化学、生物的法則に鈍感になり、自分の脳内の世界観やこうあってほしいという願望との区別が出来なくなるのだろう。

この記事へのコメント
  1. > そりゃー、重いブーツを履いていたからだよ

    TA最高。特はなれた日本まで笑いの引力を
    及ぼして頂いてありがとうございます。

    ところで、
    科学や論理は私たちの直感に反する答えをよく導きますよね。
    直感に反する思考方法は、よほど好きな人でない限り
    相当我慢して勉強しないと身に付かないと思うのです。

    そう考えると、今の日本は比較的多くの人がこういった
    思考方法を身につけており(視聴率が大切な民放でも
    水伝に批判的な番組が組まれている!)、
    仮にそういう見方をするのであれば、日本の科学教育は
    むしろものすごい成功を収めているような気もするのですが、
    いかがでしょうか。

    1.成功していると考える事の是非
    2.これを肯定する場合、成功の要因
      そうでないならば、失敗の要因
    について、お考えをお聞かせ頂けないでしょうか。
  2. Posted by shumei at 2008年10月12日 11:05
  3. 横レスですが…

    shumeiさん、「ものすごい成功を収めているような気もする」という「直感」に反しているかどうかを「直感」で答えてもらおうというのは、「科学や論理」的に、ちと問題がある気がしますけど…。

    しいて設問を考えるなら、
    2.の設問の前に

    1'. これを肯定ないし否定する論拠

    を聞くべきでは?

    コメント中でおっしゃられている「エピソード(視聴率が大切な民放でも水伝に批判的な番組が組まれている!)」を論拠とするなら「論理学のクラスをたくさん取った哲学のTA」にやりこめられてしまいそうですよ。
  4. Posted by Cru at 2008年10月12日 13:24
  5. >shumei さん
    現実には批判番組よりも批判されるような番組のほうが圧倒的に多いんですけど。
    ミヤネ屋の放送はGood Jobだけど、これをもって「ものすごい成功」なんていうのは暴論もいいところでしょう。

    少なくとも私は日本の科学教育は、基礎教育レベルではそれほど成功していないと思います。
    日本の大人がどの程度科学的思考を身につけているかについては、数年前に国際調査が行われており、このブログでも取り上げたことがあります。
    そこに色々と資料をまとめてあるので、紹介しておきますね。

    幻影随想: あんまり科学的じゃない文科省の「科学常識チェック」
    http://blackshadow.seesaa.net/article/3258566.html

    科学技術に関する意識調査 - 2001年 2〜 3月調査 -
    http://www.nistep.go.jp/achiev/abs/jpn/rep072j/rep072aj.html

    200年前後に行われた先進国15カ国の共同調査で、日本人の科学技術の理解度は13位。
    科学技術に対する関心度もかなり低いほうで、科学技術ニュースの入手ソースはテレビ9割、新聞7割。
    これらの調査結果は、大部分の人間はマスメディアから受動的に情報を受け取るのみということを示しています。

    テレビや新聞の科学リテラシーは、このトンデモカテゴリでよく取り上げるレベルなので、受動的に情報を受け取るだけの層がどうなるかは、推して知るべしですね。
  6. Posted by 黒影 at 2008年10月12日 13:59
  7. > Cruさん
    おっしゃるとおりですね。
    ありがとうございます。


    > 黒影さん
    > 現実には批判番組よりも批判されるような番組のほうが圧倒的に多いんですけど。

    こちらもご指摘ありがとうございます。
    数は分かりませんが、クリティカルに科学的に物事を考えられる層は多分相当な少数派だろうと思います。

    ところで、最初のコメントをさせて頂いた趣旨は以下の理由からです。

    100年前、あるいは1000年前と比較して、私たちの遺伝情報はあんまり変わっていないのに、
    科学的思考はずいぶんと進んでいる。これは随分と驚くべき事なんじゃないか、
    これだけの前進を生み出せた理由は何だったんだろうか、もしそれが分かれば、
    もう少し私たちの暮らす社会がトンデモ科学に振り回されない社会になれるんじゃないかと思ったためです。
  8. Posted by shumei at 2008年10月12日 21:36
  9. 「重いブーツ履いて歩ける」のは、
    引力があるからじゃないのかな?
  10. Posted by IRIAC at 2008年10月13日 16:00
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