2008年09月17日

All Your base are belong to us!

―お前たちのゲノム(塩基)情報はすべて我々のものだ!―

とGoogleが考えているかどうかは知りませんが、Googleが出資しているベンチャーの一つに、23andMeというゲノム解析ベンチャーが存在します。
23andMe - Beyond genetic testing: Personal DNA analysis and research for health, family, ancestry, and genealogy.
23andMe - Wikipedia

この会社は1000ドルで個人のゲノム解析を請け負い、どんな遺伝子を持っているのか―例えば目、肌、髪の色や、身長体重に影響する遺伝子の有無、身体能力や特定の病気のかかりやすさ、家系などを調べてくれます。
解析結果はオンラインでブラウザを用いて見ることが出来、ユーザーがそれを望めば自分の遺伝情報を他の人に対して公開することも可能です。

TechCrunchに体験レポが載っていたのでちょっとリンクを置いておきましょう。
TechCrunch Japanese アーカイブ » 23andme、DNA解析サービスを開始―邪悪か? 未来の生活か?
TechCrunch Japanese アーカイブ » 私の23andMe DNA検査結果

この遺伝子解析サービスは現在ではまだ半分お遊びのようなものですが、今後ゲノム薬理学(PGx:Pharmacogenomics)の研究が進んで、遺伝子と様々な病気のかかりやすさや治療に対する反応との関連が分かってくれば、先端医療を受ける際に個人のゲノム解析は必須の検査項目となってきます。

 
 
このブログでも何度か取り上げていますが、最近のゲノム解析技術の進歩はすさまじく、あと5年もすれば1000ドルで個人のゲノムを完全解読可能な時代が来ると予想されています。そうなれば、遺伝情報に基づく様々な産業が発達するはずです。
幻影随想: ゲノム解析のコストが6万ドルまで下がった
幻影随想: 1時間で1000億塩基解読可能な次世代シーケンサー
幻影随想: 次世代高速シーケンサーの解析コストとか日本の出遅れ具合とか

この解析速度向上と価格破壊の速度はすさまじく、数年前の機械を使っていると、もう最新の機器のコストパフォーマンスには数桁劣るくらいです。
そのようなすさまじい競争の中で生き残るには、潤沢な資金にものを言わせて最新技術に喰らい付いていくしかないわけで、23andMeも最近大幅な解析料金の値下げに踏み切っています。

23andMe slashes price on personal genetics test - Yahoo! News
The decision by 23andMe Inc. to cut the price of its test from $999 to $399 could herald a price war in the small but buzz-heavy marketplace for direct-to-consumer genetic testing. The company's main competitors charge anywhere from just under $1,000 to $2,500 for similar services.

遺伝子解析ビジネスというのはまだマーケットが小さく、しかも解析に必要な機材、人材には多額の投資が必要です。23andMeは資金面ではかなり強いので、ライバル企業がまだ1000〜2500ドルの費用を必要としているのに対し、400ドルと一気にリードを広げて市場の寡占化を狙うつもりだと考えられます。

23andMeの狙いは、5年10年先を見越した医療産業向けのアウトソーシングビジネスです。
残念ながら現在の知見では解読したゲノム情報を十分に生かす事ができないのですが、恐らく10年後には、部分的ではあってもゲノム情報を拠り所とした治療が実際に行われだすはずです。そしてゲノム解析の設備を病院毎に用意するのは膨大なコストがかかり、またゲノムデータから有用な情報を引き出すためにも巨大なデータベースが必要となるため、これを病院毎に用意するのは賢くありません。受託産業の成立に必要な条件は整っています。
このビジネスモデルが成功すれば、文字通り"All Your base are belong to us"を地で行く企業が誕生します。しかし黒字が出るまでは膨大な赤字を垂れ流すことになるのが必至なビジネスモデルで、ベンチャーではない通常のバイオインフォ企業には容易に手を出せないビジネスモデルですが。

こういうビジネスは日本では資金が集まらず無理なので、ベンチャーが成立するアメリカがちょっとうらやましいです。
posted by 黒影 at 22:44 | Comment(2) | TrackBack(1) | バイオインフォマティクス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
  1. 一時のシリコン業界のように、体力勝負でメーカーふるい落としの時代、ということなのでしょうか?

    ただ、昨今のアメリカ金融危機を見ているとVCからのファイナンスも細りそうな感じもしていて、それがちょっと心配ではあるのですが。
  2. Posted by とむけん at 2008年09月18日 03:51
  3. >とむけんさん
    ども
    >一時のシリコン業界のように、体力勝負でメーカーふるい落としの時代、ということなのでしょうか?
    そうですね。
    最初から赤字な分、チキンレースといった方が近いですが。
    本格的にマーケットが出来るまで、赤字に耐え切ったほうが勝ちですけど、確かに景気が悪くなるとどっちも残らないという目もありますね。
  4. Posted by 黒影 at 2008年09月23日 01:41
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