2008年09月13日

クジラの進化系統図に新たな一枚が追加された

クジラの先祖は構造生物学やゲノム比較の研究から、偶蹄類のシカやカバに近い動物であると考えられている。
(現存する動物のうちもっとも近縁なのはカバ)
化石やゲノムの研究からクジラ類と他の偶蹄類は約6000〜6500万年前頃に分岐し、約5000万年前に海洋進出を始めたと見られている。

大まかな系統図と登場年代を図にするとこんな感じになる。
cf.原クジラ亜目 - Wikipedia

|鯨偶蹄目Cetartiodactyla
├クジラ目 約6,500万年前〜
| ├パキケトゥス科 Pakicetidae (陸生クジラ類)約5,300万- 約5,000万年前
| └真鯨類
|   ├アンブロケトゥス科 Ambulocetidae 約5,000万- 約4,900万年前
|   └┬レミングトノケトゥス科 Remingtonocetidae  約4,900万- 約4,300万年前
|    └プロトケトゥス科 Protocetidae
|      ├ゲオルギアケトゥス(ジョージアケタス) Georgiacetus
|      ├プロトケトゥス Protocetus
|      └─バシロサウルス科 Basilosauridae 約4,100万- 約3,300万年前
|          └─現鯨類 Autoceta 約3,000万年前〜
|             ├ハクジラ亜目 Odontoceti
|             └ヒゲクジラ亜目 Mysticeti
└他の偶蹄目

例えば最近発見された化石の中では、4800万年前の地層から昨年発見されたIndohyusという半水棲の哺乳類などが昨年注目を集めた。
Whales Evolved From Tiny Deerlike Mammals, Study Says
BBC NEWS | Science/Nature | Whale 'missing link' discovered
クジラ達の先祖が見つかった(生態学と進化) / 科学ニュースあらかると - Indonyus,クジラの先祖

化石骨格からの予想図では、Indohyusはおそらくこんな姿をしていたと思われる。
071219-whales-evolved_big.jpg_44308972_indohyus_swim_203.jpg
 
 
◆新たなミッシングリンクの発見
さて、クジラの進化を考える上でこれまでよく分からなかったのが、クジラ類がいつあの特徴的な三角形の尾びれを獲得し現在の形態に進化したかという問題だった。
上の図の姿を見て分かるとおり、Indohyusは現在のクジラとはかなりかけはなれた形態的特長を持っている。
同時代に存在したアンブロケトゥスやレミングトノケトゥスのグループも大体同じで、まだ半陸生の特徴を備えており、現在のクジラにつながると考えられている完全な海洋性のバシロサウルス科がいつ頃進化したかはまだ良く分かっていない。
三角の尾ひれを持つ最古の化石は、Indohyusの時代から約1000万年後、3800万年前のプロトケトゥス Protocetus (プロトケトゥス科)の化石であり、3500万年前頃には既に現在のクジラと同様の形態のヒレを持つバシロサウルスグループの化石が数多く発見されている。
そしてその間1000万年がどう埋まるのかというのが難問だったわけだ。
Protocetus_BW.jpg
プロトケトゥス想像図

で、ようやく今回見つかったクジラの化石の話になる。
最近発見された化石によってそのミッシングリンクが少し埋まったかもというのが今回の話。

Whales Had Legs, Wiggled Hips, Study Says
Early Whales Had Legs | LiveScience
080911-whale-legs-ff.jpg
約4000万年前のこのクジラは、プロトケトゥスの近縁であるジョージアケタス(Georgiacetus)に分類されたが、ご覧のとおり三角形の尾びれを持ってはおらず、その代わりに水かきの付いた大きな足を持っている。
そして重要なことに、このクジラの後足の骨は水を掻くことが出来る構造を持っておらず、つまり足で水をかいて進むのではなく、現在のクジラと同様に体を上下にくねらせることで推進力を得ていたと考えられた。
一旦後足がただのフィンと化した後は、その機能がもっと効率の良い尾びれで置換される方向に進化するのは必然だったのだろう。
ジョージアケタスの200万年後には既に後足が完全に退化し、尾びれを獲得したプロトケトゥスやバシロサウルス科が出現し、さらに数百万年後の現鯨類出現につながっている。
080911-whale-legs_big.jpg


論文はどうもWebに公開されてはいないようだが、タイトルだけは判明したので一応載せておく。
どうやらGeorgiacetusから新たな属、Pelagicetiという名前で分類しなおすようだ。

Uhlen, M: New protocetid whales from alabama and mississippi, and a new cetacean Clade, pelagiceti. In: Journal of Vertebrate Paleontology 28, S. 589–593, 2008.

学会からのプレスリリースは出ているようなので、これもついでに貼っておこう。
PRESS RELEASE - It’s All In The Hips! Early Fossil Whales Used Well Developed Back Legs For Swimming

posted by 黒影 at 23:40 | Comment(2) | TrackBack(1) | バイオニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
  1. こういう「もう今はいない(でかい)哺乳類」って面白いですよね。地元にはけっこう有名な恐竜博物館があるんですけど、恐竜よりタイムスケールが近くて似た動物もいるからか親近感があってむしろメインよりサブのこっちの方が面白いな〜と思ってました。
    原クジラってのはしかし外見からすると爬虫類そっくりですね、魚じゃなくて哺乳類だとわかったギリシャ人はえらかったんですね。
  2. Posted by SLEEP at 2008年09月16日 13:10
  3. クジラの祖先、鹿か猪のようにも見えますね。
    (多分毛の色の再現は出来ないのでもっと違うかも知れませんが)

    遺伝学者と形態学者の対立を、ダーウィンが
    「な、分けることのできないものを分けようとするからこんなことになるんだ」
    空の彼方から見ているような気もします。
  4. Posted by キバヤシMK3 at 2008年09月20日 01:09
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