発覚によりタイトル差し替え。
「ファン教授の周囲がいよいよ焦げ臭くなってきた」⇒「黄教授による論文データ捏造確定」
とうとう捏造が確定したという話について。(後半部分)
このエントリは以下2つのエントリの続き。
はじめてこの問題に触れる人はまずこちらからどうぞ。
・10分で分かる韓国の生命倫理問題 問題発生〜倫理問題に関するまとめ
・韓国の生命倫理問題に関する急展開について 12月に入ってからのデータ捏造疑惑の発覚
◆逃げ出すメディア
韓国の生命倫理問題に関してだが、ちょっと面白い話がある。
先日のエントリで例に出した風刺絵に象徴されるように、
朝鮮日報は韓国マスコミの中でも特にファン(黄)教授の肩を持ち続けているメディアだ。
これまでにもファン教授の業績は常に大体的に紹介し、特集コーナーさえ作っている。
「クローン研究における第一人者 黄禹錫教授」
疑惑発覚後も徹底的に擁護に回り、ファン教授に否定的な内容はほとんど流さないという念の入り様。
以前永井氏が言っていた御用ジャーナリズムってこんなのなんだろうなあと遠い目で眺めていたんだが、
ここに来てどうも朝鮮日報がファン教授擁護の立場からフェードアウトしようとしているフシがうかがえる。
上記リンクの特集コーナーを良く見てもらいたい。
記事の日付が12/7までしかないだろう。
ホーム > ニュース特集 > クローン研究における第一人者 黄禹錫教授
加熱する黄教授取材
7日午前ソウル大病院で、黄禹錫(ファン・ウソク)教授の健康状態を取材するため、数多くの取材陣が殺到し、熾烈な取材合戦を繰り広げている。 朝鮮日報 ........記事全文
2005/12/07 19:40
検察、「PD手帳告発事件」捜査チーム編成 2005/12/07 17:18
MBC『ニュースデスク』番組スポンサー3社、不買懸念しCM中断 2005/12/07 15:33
MBC『PD手帳』、放送中断が決定 2005/12/07 12:45
大統領府は「PD手帳」のMBCの脅迫取材にどう対応したのか 2005/12/07 12:01
8日以降も関連記事は止まることなく出続けているのだが、このコーナーにはその記事が反映されない。
ファン教授にとって都合が悪い疑惑関連のものだけならともかく、通常の幹細胞関連ニュースまでリストに掲載されなくなっている。
7日は細胞写真の疑惑やDNAフィンガープリントなど様々な疑惑が一挙に持ち上がった日だ。(前エントリ参照)
ひょっとすると朝鮮日報は事態を悟って身の引きどころを探っているのかも。
<追記>捏造確定。さあこれまでファン教授を庇っていたメディアはどうする?
◆細胞写真捏造疑惑の暫定まとめ
ちなみに捏造疑惑は既に疑惑の段階を突破して、どこまでが捏造なのかを追及する段階に入っている。
まず細胞写真については韓国の学術系ニュースサイトで取り上げられた5組の同じ写真に加えて、
さらにもう一枚同一写真が見つかったし(これを見つけたのは私だ、えっへん)
それだけではなく2ちゃんねるでさらに、同じ細胞切片を別々の物として扱っている例が3例追加された。
(発見者の暇人氏は私とは別人だよ。念のため)
これまでに一致が発見されたものをリストにまとめるとこうなる。
◆既知のFig一致リスト
韓国の研究者が発見した分
NT-hESC-9/SSEA-4 NT-hESC-11/TRA-1-60(同一細胞)
NT-hESC-3/SSEA-3 NT-hESC-8/SSEA-3(同一細胞)
NT-hESC-5/SSEA-1 NT-hESC-6/SSEA-1(同一細胞)
NT-hESC-7/SSEA-1 NT-hESC-11/SSEA-1(同一細胞)
NT-hESC-7/SSEA-3 NT-hESC-8/SSEA-4(写真の分割)
2ch発覚分(同一スライド)
NT-hESC-5/SSEA-4 NT-hESC-10/SSEA-3(写真の分割)
NT-hESC-11/SSEA-3 NT-hESC-11/SSEA-4(写真の分割)
NT-hESC-4/SSEA-4 NT-hESC-7/SSEA-4(写真の分割)
私の発見分
(NT-hESC-7/SSEA-1 NT-hESC-11/SSEA-1)NT-hESC-8/TRA-1-81(同一細胞)
(別々の細胞の別々のマーカー染色なのにトーンを変えて同じFig使っているという明らかな捏造(前2つは韓国で既に指摘があった分))
まとめると下の図のようになる。
(韓国の掲示板で使われている写真を少しいじって使わせていただいた)
問題の論文のSupporting Online Material(PDF)にある細胞写真のかなりの部分が捏造なのだ。
これだけではなくDNAフィンガープリントの問題は更に大きな疑問を呈している。
ことここに至ってとうとうサイエンス誌もファン教授をかばい切れなくなったようだ。
サイエンス誌、黄教授に論文結果の再検討を要求
フィンホルスター局長はまた、韓国日報あてに「サイエンス誌は論文の著者らへ、DNA指紋について最近挙がっている問題に答えるよう求めている。彼らが自身の資料を再検討し返答するまでこれ以上言及しない」という内容の電子メールを送っている。
微妙にまだ庇うそぶりを見せているが、一緒に炎上したいのだろうか。
少なくとも大言を吐いていた編集長はかなり首が危ないし(前エントリ参照)、
これだけ大規模なFigの捏造を見逃したとなると編集姿勢も問われると思うのだが。
いよいよあちこちに王手がかかったな。
<追記>
…とかなんとか書いてたら捏造をげろった研究員が出てきたよ。
はいチェックメイト。
来週の欧米メディアは荒れるぞ、こりゃ。
'金禅宗研究員が幹細胞写真操作 YTNに隠して'
ファン・ウソク教授の幹細胞疑惑を調査しているアメリカピッツバーグ医大の韓国人教授は金禅宗研究員が
YTNとのインタビューで自分が幹細胞写真 2枚を 11枚でふやしたという事実を明らかにしなかったと主張しました.
<中略>
金禅宗研究員がファン・ウソク教授の指示や要請によって幹細胞写真 2枚を 11枚でふやしたことで分かると明らかにしました
代わりに朝鮮日報の日本語記事にリンク。こちらの方が分かりやすい。
「キム・ソンジョン研究員がES細胞写真捏造」
米ピッツバーグ大在職中の韓国人教授が証言(朝鮮日報 Chosunilbo (Japanese Edition))
キム・ソンジョン研究員がヒト胚性幹細胞(ES細胞)の写真2枚を11枚に増やした事実を偽ったという主張が米ピッツバーグ大から出された。
米ピッツバーグ大で黄禹錫(ファン・ウソク)教授のヒト胚性幹細胞研究疑惑について独自調査を行っているある韓国人教授は「キム・ソンジョン研究員が黄禹錫教授の支持・要請によりヒト胚性幹細胞の写真2枚を11枚に増やしたものと聞いている」と述べたとニュース専門チャンネルのYTNが10日報道した。
結局最初のエントリの懸念どおりに全てが進んでしまったようだ。
韓国社会もろともご臨終です。
それにしてもこれが世界の「まともな」幹細胞研究に与える悪影響を考えると…頭が痛くなってくる。
◆関連エントリ(Related Entries)
・10分で分かる韓国の生命倫理問題(Summary of South Korean Researcher's Bioethical violation.)
・韓国の生命倫理問題に関する急展開について(Bioethics scandal of South Korean Cloner Developed into the Suspicion of Fabrication.)
・黄教授による論文データ捏造確定(Looking into the Duplication of ES Cell Photos.)
・DNAフィンガープリントを眺める(Weird accordance of DNA finger print patterns.)
やはりと言うか、捏造が確定したのですね。
しかし、ここまで見事に、予想通りの展開というのも・・・。
今回のは写真の発見も含めてかなりの力作ですね。
私も化学者の端くれ(分野は違うけれど)ですけど、Supportファイルであんな写真載せられてもどれがどれやらさっぱり。
専門の人が見れば「これはすごい!」とでもなるのでしょうが、それだと捏造が今まで発覚しなかったのはなんででしょうね?
倫理疑惑から偽造問題が芋ずる式に出てきたとはいえ、もしも倫理疑惑の方が無かったとしたら不斉は発覚しなかったのでしょうか?そう思うと怖い世の中になったものです。
しかしこの結果に驚かない俺がいる。
なにしろあの国のことですから。
記事の中では聯合ニュース側が「妥当性と信憑性をもうちょっと綿密に計算して見た後記事再掲載可否を決める」という釈明をしていますが、この聯合側だ配信した独自スクープ記事の入手方法や報道手法もどうだったかという、余計な労力がかかりそうだと考えます。
またその一方で、証言をしたとされる教授側が発信した釈明というのも、実際に水増しされた画像が存在することが濃厚な以上、何だか眉唾ものにも聞こえます。
何だか、混乱がさらに混乱を呼び、事実関係の追撃記事が配信されて冷静になるどころか、穴のある記事や記事が巻き起こす騒動によって、感情の鬱積をさらに呼び起こしているような状況を考えると、何だか頭が痛くなります。
欧州はサイエンスのスキャンダルに発展して大々的に報道するでしょうが、日本は報じないのかな。
それにしても、韓国のメディアはどうする気なんでしょう。批判メディアを潰しちゃったし…
海外から自浄能力がないと見られたら後々大変なことになりかねないでしょう。
P.S.2ちゃんねるからトラックバックを送りました。不都合でしたら消して置いてください。
「今日から正常な食事をし、明日からは実験室で研究を再開する」と話した。
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2005/12/11/20051211000038.html
復帰だそうですよ。。。
↑だと、この人のBSE耐性牛も怪しいみたいですね。
えらい勢いで検証が進んだので付いて行くのが大変でしたが、
ここまで来ればもう確定と見ていいでしょうね。
>はりぼでさん
毎度どうもです。
>捏造が今まで発覚しなかったのはなんででしょうね?
細胞写真はマーカーの発現だけ確認できたらOKなので、
さらっと流して終わりという人が多かったのでしょう。
DNAフィンガープリントの方はちょっと分かりませんけど。
>おみごとです さん
私はあごが外れそうになりました…
>e_r_i_c_t さん
現状では韓国メディアの情報はどれも眉に唾をつけて聞かざるを得ませんね。
私は週明けに欧米メディアが出すであろう追求記事を待つことにします。
>2chニュース系住民さん
日本のメディアは科学に弱いところが多いので、こういうフォローアップが大変なニュースは欧米のニュースが出てからその後追いだけで終わるんじゃないかと思います。
韓国のメディアは今後どうするんでしょうね?
少なくとも外からの信用はがた落ちになってますが…
>ぴんさん
週末に一気に深まった疑惑に対してどう釈明するのかが見物ですね。
>ななしさん
それは研究データに対する疑問ではなくスポークスマンに対する批判だと思いますが。
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2005/12/13/20051213000003.html
>黄教授の入院期間がどれ位になるかは分かっていないが、ソウル大学病院・広報室の関係者は「入院期間は予想より長くなる見込み」と話した。
恥ずかしくて顔向け出来ないようですね。
自分の国だの民族だのに都合のいいことはろくに検証もせずに信じたがるのは、どの国も変わらないんじゃない?
この事件も、そういった情けない人間心理を利用した詐欺師の起こした事件のひとつ。
但し、例えば石器捏造事件でスクープをものにした毎日新聞に対して不買運動が起きたとは聞かない。望遠レンズで捏造現場を押さえた取材手法に対する非難はあったと思うけど。
今回のES細胞論文偽造では、最初に疑惑を報じたTVマスコミへの取材手法が同じように非難された直後、TV局を国民こぞって吊し上げるような異常事態が起こりましたね。ネットで製作スタッフ及び家族の個人情報まで晒されたと言います。韓国に反省すべき点があるとしたら、ここをこそ反省するべきだろうと私は思ってます。
どこの国でもそんなもんなんでしょうかね?
にしても、韓国の国民性は怖いですね…。