ウイルス感染による遺伝子の変異がガンを引き起こすでもなく、
胃がんのように微生物が細胞にダメージを与えるせいで引き起こされるわけでもなく、
個体から個体に感染していくガン細胞が存在するのです。
…とちょっぴり恐怖を煽る書き出しにしてみましたが、幸いにしてこれは人間の話ではありません。
現在のところ感染性のがん細胞の存在が知られているのは、犬とタスマニアデビルという有袋類の動物だけです。
タスマニアデビル - Wikipedia
犬の感染性ガンの場合は性感染で致死率もそう高くないのですが、タスマニアデビルの間に蔓延しているガンは致死性が高い凶悪なものです。
なんせ感染するとこんなやばいことになってしまうほどですから。
Image:Tasmanian Devil Facial Tumour Disease.png - Wikimedia Commons
#グロ注意。リンクのみにしておきます。
この病気の蔓延のせいで現在タスマニアデビルは絶滅の危機に瀕しており、様々な保護政策が取られているのですが、タスマニアデビルもやられるばかりではなく、この病気に対抗するすべを進化させつつあります。
死ぬ前に子孫を残すという壮絶な方法ですが。
"Teen Sex" Rising for Cancer-Affected Tasmanian Devils
Dying Tasmanian devils turn to teen pregnancies - life - 16 July 2008 - New Scientist
CNN.co.jp:タスマニアデビル、悪性腫瘍蔓延に種の進化で対抗か
ワシントン(AP) オーストラリア南部タスマニア州に生息する有袋類タスマニアデビルの間に悪性腫瘍が広がり、絶滅が危惧されているが、これに対抗するかのようにデビルの繁殖年齢が下がっていることが分かった。タスマニア大学の研究チームが米科学アカデミー紀要に発表した。
<中略>
タスマニア大学でデビルの生態を研究していた動物学者メナ・ジョーンズ氏は、がんの発生後、デビルが1歳で繁殖する確率が16倍に増えたことを発見した。繁殖年齢が下がったことで減少に歯止めがかかり、絶滅の危機が遠のくかもしれないという。
アカデミー紀要に掲載された論文によると、哺乳類で感染症により繁殖年齢が下がったのは、研究チームが知る限りこれが初めてのケースだという。
現在、予防のためのワクチン開発研究も同時に進められているが、ジョーンズ氏は「われわれは種の進化を目の当たりにしているのかもしれない」と指摘している。
生物の軍拡競争、特に病原体との戦いは、進化の歴史の中でもかなり重要な位置を占める項目です。
免疫系の進化なんてまさに戦いの歴史ですからね。
公害が癌,人間をタスマニアデビルに置き換えれば,そのまんまの結末。
まさに事実はSFよりも奇なり,ですね。
固体から固体に感染していく
個体から個体に感染していく
タイポのご指摘感謝します。
修正しました。
感染性白血病とか、子宮内射精の性交渉とか母子感染とかで;
人権問題上タブーっぽいけど