数年前に人気になったパトリシア・コーンウェルの検屍官シリーズをご存知の方ならピンと来るだろう。
死体農場とは、人間の死体が様々な環境中に置かれた時にどのような経緯で腐敗していくかを観察する為の実験施設で、現在のところ世界で唯一アメリカのテネシー州にだけ存在する。
どうかグロテスクだとか狂気の沙汰だとは思わないで欲しい。
こういったデータは犯罪捜査のためには必要不可欠なのだ。
法医学という学問がある。
法医学は、「異状死」の死因を解剖等により決定することを主務としています。異状死とは、医師が診療経過中に確実に診断した死以外の全ての死です。具体的には、殺人・事故死に留まらず、死因不詳の死、予期できない死、突然死、死亡状況が異常ないし不詳の死、管理責任が問題となる死などを含みます。社会的存在である人の死に関して、解剖や検査(→法医実務検査)をして、公正に死因を決め、人権と法の正義を守るのが私たちの使命です。そして、犯罪・過失による可能性がある異状死体については、司法解剖や検査(鑑定)が行われます。
「法医学とは」
病死、突然死はともかくとして、犯罪・過失による可能性がある異状死体については、法医学者による司法解剖が行われる。
解剖して死因を探り、不審な点が無いかどうか探すのである。
どうも殺人らしいとなると、犯罪捜査の為に死亡時刻を知る必要が出て来る。
法医学の専門家は死後24時間以内に発見された死体であれば数時間以内の誤差範囲で死亡時刻を特定できる。
問題は死後一日以上経過した死体の場合である。
発見までに日数の経った死体では、簡単には死亡時刻が分からない。
死体の腐敗度はその死体の置かれていた環境によって大きく変わるからである。
死体農場で様々な条件下での死体の腐敗データを集める必要があるのはこのためだ。
・遺体を放置して経過を観察する、世界唯一の「腐乱死体の研究施設」
・米国第2の「死体農場」計画が進行中
例えば死体に湧く虫は死後の経過時間によって種類や成長の段階が変わってくる。
温度や湿度などの環境条件は地域によっても全然違うので、その差も考慮しなくてはならない。
今回第二死体農場の建設計画が持ち上がったのもそのためである。
日本にはこの手の施設は無いが、日本の犯罪捜査にもこの死体農場で得られたデータは生かされている。
そういった背景知識があれば、サスペンスドラマも少し違った視点で眺められるのではないだろうか。
P.S.
現在スペリオールで連載している「昆虫鑑識官ファーブル」というマンガが珍しく法医学を扱っていて面白いので最近よく読んでいる。
そういえば死体農場もこの前出て来たな。
リアリティはコーンウェルの検屍官シリーズに較べるべくもないが、軽く読むにはこちらの方が向いているかも。
私はクルマ業界に身を置く者ですが、この世界でも死体を使ったデータは非常に重要です。よくTVではダミー人形を乗せて衝突実験を行う映像が流されますが、やはり「生身」のデータも欠かせないということで、遺体を座らせてぶつける実験データも主にアメリカで取られています。(日本ではやれないので、あちらの研究機関に出ばっていきます)そのために遺体(死刑囚や身元不明者が中心で壮年男性に偏っているのが悩みのタネ)を集めて保管し、必要に応じて実験用として供する施設があるわけです。
他にも頭蓋骨損傷のデータを取る為に、「切り取った頭部を大理石のプレート上に落として高さと損傷の相関を取る」なんちゅうデータもあって、こういうエグいデータを基にして市販のシートベルトやエアバッグの設計基礎データができているわけです。
(ちなみに頭蓋骨の損傷の有無は非常にばらつきが大きく、ここから安全とか危険とか簡単に仕分けることはできません。それが人体っていうものの現実です)
どんな分野でも明るい面の裏側には、そういった「日蔭な」研究があるのかもしれないですね。
その他に,人間の肉体構造に近い豚を用いた実験もやっているようです。そんなこんなで,ダミー人形は結構高価なんですよ。
ところで,昔,ケネディー大統領が暗殺された時,車上で前のめりに倒れました。前方から打たれたのに前のめりになるのはおかしいという意見を否定するために,人間の頭蓋骨に豚の脳味噌を詰め込み,ライフルで撃つ実験をしました。入射口は小さいのですが,出射口は大きく,そこから脳味噌が勢いよく飛び出すので,その反動で前のめりになることが証明されました。徹底した実証主義ですね。これが自然科学を発達させる精神構造なのでしょう。
すごく興味深い。
進化が現在進行形で行われているって^^いやしくも現役の分子生物学者にこんなお馬鹿な主張をされては、ため息を付くしかないよね。何度このお馬鹿なセンテンスに肩をすくめたことか^^