この機能は何か特定のトピックスの注目ニュースを追いかけるには非常に有用だ。
はてブユーザーには疑似科学ウォッチャーが少なくない数存在するので、私も常日頃から定点観測の場として活用させてもらっている。
・はてなブックマーク - タグ 疑似科学
・はてなブックマーク - タグ ニセ科学
(はてなアンテナに入れるなりRSSリーダーに登録するなりしておくと便利)
さて、今日この定点観測の場を見ていて、こんなネタを発見した。
コップ1杯の水が地球を支えるエネルギーに。 - 株式会社ジェネパックス
コップ一杯の水が、地球を支えるエネルギーに
水が生活エネルギーに変わる。発電時のCO2排出はゼロ。
私達が開発したウォーターエネルギーシステム(WES)は、水から電流を取り出すことを可能にした、新しい発電システムです。
●水から電気と熱を作り出す過程で、化石燃料を一切使用しません。
●CO2の排出が一切ないため、環境への負荷もかけません。
●世界が心から求めていたクリーンな電力で、地球環境保全に貢献します。
なぜか削除されてしまったが、ちょっと前まで発明者の情報がサイトに載っていたのでこれも貼っておく
発明者プロフィール
ウォーターエネルギーシステム発明者
株式会社ジェネパックス取締役会長
末松満(スエマツミツル)
1943年2月13日
1961年04月大分県立安心院高等学校卒業
1961年04月八幡製鉄株式会社入社
1973年12月八幡製鉄株式会社退社
1976年05月遠赤外線の研究開発に着手
1980年04月ウォーターエネルギーシステムの研究開始
1985年04月埼玉県工業技術研究所と遠赤外線の共同研究開始
1987年08月家庭用循環温浴器開発
1993年04月株式会社ゼクセルと蓄熱マットを共同開発
日産ディーゼル、いすず自動車、日野自動車に販売開始
1994年04月ガスタービン発電機の開発開始
1995年05月省エネルギーモーターの開発開始
1996年02月水循環式汚物処理装置の開発
1996年06月廃棄食品の包装材分離装置の開発
1996年07月低温乾燥機の開発
1996年10月包装食品の包装材分別車の開発
1997年08月電気トラックの開発
2004年06月ウォーターエネルギーシステム(WES)による発電に成功
発明者「末松満」ねえ、まるで聞いたことないな。
昔は(有)新エネルギー研究所という会社の社長だったらしいが。
「水をエネルギーに変える」というネタは昔から世界各地で何度も繰り返し持ち出されては消えている、疑似科学をネタにした出資詐欺の一つの定番である。
類似品としてフリーエネルギーだとか、少し前だとこんなのもあったか。
幻影随想: トンデモ業界の次のトレンドは中国進出?
廃棄プラスチックや水から軽油を作れると主張する倉田式油化還元装置に20億も突っ込んだ関西アーバン銀行は、果たして今頃どうしているんだろうか?
あんなのどう見てもバッドサイエンスの定番なんだけどなあ。
とりあえずそっちはおいておいて、今回のネタに話を戻す。
この会社、実は今日大阪で公開デモをやっていた。
社長がそれなりに有名人*1なせいか、それとも政治家が後援についていた*2ためか、これに合わせてマスコミがかなり来ていたらしく、工業新聞系統のニュースサイトで何件かまともにこれを取り上げているところがある。まったく困ったもんだ。
GIGAZINEで詳細に取り上げているし、会社のサイトにもWESの詳細が出たから見に行ったんだが、まるで話にならない内容だった。
・水から電流を取り出すことを可能にした新しい発電システム「ウォーターエネルギーシステム」を見に行ってきました - GIGAZINE
・水から電流を取り出す「ウォーターエネルギーシステム」デモムービーいろいろ - GIGAZINE
・真偽判断に役立つ「ウォーターエネルギーシステム」に対する各報道陣からの質疑応答いろいろ、そして現時点での結論 - GIGAZINE
関連特許の番号も一応押さえておくか
特許検索
特開2007-157405 発電モジュール、発電器、発電システム
特開2006-244714 ウォーターエネルギーシステム
特開2005-281847 ウォターエネルギーシステム
この技術の駄目さ加減は、ジェネパックスサイトのこのページに遺憾なく発揮されている。
“WES”の発電の仕組み - 株式会社ジェネパックス
いまどき永久機関もどきを主張するとはねえ。
水を分解してまた水にして、というサイクルじゃ、エネルギーを取り出すどころか消費する一方だろうが。
平澤氏も末松氏も、エネルギー保存則とエントロピーの法則を知らんのだろうか?
大体水の分解は吸エネルギー反応だから、たとえ触媒があったところで外部からエネルギーを加えてやらんと反応は進行せんぞ。
この系で一体どうやって電気エネルギーを取り出そうってんだ?
こんなもんは高校の物理化学で習うレベルの話なのに。
水分解触媒ってのはこういうのを言うんだよ。
>プレス・リリース 可視光で水を水素と酸素に分解
それにしても、GIGAZINEの記事にもあるが熱力学の第一第二法則をそろってぶち破るような記者会見を行うとは大した強心臓だ。
少し前のLTTバイオファーマの件と似たような臭いがする。
>幻影随想: LTTバイオファーマの件
今時こういうのに引っかかる人間は早々いないと思うが、倉田式油化還元装置の例もあるので、関連情報込みで晒しておく。
続編
幻影随想: ウォーターエネルギーシステムの中身が予想以上にしょぼくて脱力した件
◆関連情報
*1
平沢潔 ソーテック【社長data】
【肩書き】ソーテック元社長
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【生年月日】昭和35年5月17日
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【年齢】47歳
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【学歴】昭和60年3月東京大学法学部卒業
平成2年4月弁護士登録
平成6年6月米国スタンフォード大学ビジネススクール卒業(MBA)
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【経歴】
昭和35年5月17日生
昭和60年3月東京大学法学部卒業
昭和60年3月鞄結梛竝s(現且O菱東京UFJ銀行)入行
平成2年4月弁護士登録長島・大野法律事務所(現長島・大野・常松法律事務所)入所
平成6年6月米国スタンフォード大学ビジネススクール卒業(MBA)
平成8年8月ロスチャイルド・ジャパン潟Vニア・ヴァイスプレジデント
平成11年11月アクティブ・インベストメント・パートナーズ代表パートナー
平成14年3月潟jッセン取締役
平成14年6月ソーテック且謦役
平成15年7月アクティブ・インベストメント・パートナーズ椛纒\取締役
平成16年2月潟jッセン取締役退任
平成16年4月ソーテック椛纒\取締役社長
平成16年4月東急観光且謦役
平成17年6月ソーテック椛纒\取締役社長退任
平成17年11月アクティブ・インベストメント・パートナーズ代表退任
平成17年11月アセット・インベスターズ褐レ問
平成18年2月Doran Capital Partners Managing Director(Japan)
平成18年5月潟tァイナンシア・CI代表取締役
平成18年6月アセット・インベスターズ且謦役
平成19年6月アセット・インベスターズ且謦役退任
中々そうそうたる経歴。
これだけコロコロ変わっていると、ろくに経営にタッチすることはできないとは思うけど。
一体なんでトンデモベンチャーの社長なんかやっているのかかなり謎だ。
字が違うが同一人物であることは、GIGAZINEの顔写真やこちら↓の経歴なんかを照らし合わせることで確認済み。
メンバー:在籍弁護士 - 野田総合法律事務所
弁護士資格持ってんだね。
*2
ジェネパックス 水から発電する新エネルギー=ウォーターエネルギーシステム(WES)の開発に成功/ベンチャー企業の無料プレスリリース ベンチャープレス
■新エネルギー技術説明会について
開催日 :2008年6月12日(木) 10:00開場(受付開始)
会場 :大阪府庁 議会会館2階
会場住所:大阪市中央区大手前2丁目
交通 :地下鉄谷町線・京阪天満橋駅3番出口から徒歩約10分
地下鉄谷町線・中央線谷町四丁目駅1A番出口から徒歩約10分
定員 :50名
参加費 :無料
応募締切:2008年6月10日(火)
到着分をもって締切とさせて頂きます。
主催:「環境保全と災害対策を考えた新エネルギー」をテーマとした、
民主党・無所属ネット議員団のまちづくり部会長 中川 隆弘様、
環境農林部会長 森 みどり様
講演:平澤 潔(株式会社ジェネパックス 代表取締役社長)
末松 満(株式会社ジェネパックス 取締役会長・研究者)
【疑似科学・ニセ科学・オカルト・トンデモの最新記事】
>水分解触媒ってのはこういうのを言うんだよ。
おお、いつの間にか可視光での水の完全分解技術が…
もっと効率を上げて活用して欲しいです
水からエネルギーを取り出しているとまでは言っていない、水電池(使う際に水を注入する電池、災害に備えて長期保存が可能だとか)の商品化の例まで引き合いに出していた局もあった。
まるで、水からエネルギーが取り出す技術自体はすでに実用化していると、視聴者が誤解しかねない構成だった。
「水を電気分解して水素を得て、これを核融合に使う」とか、
「トライリチウム結晶により物質=反物質変換して、得た反物質を対消滅させる」
とか言うところなんだが、いかんせん夢の技術の域を出ない。実用化されるとしても数百年後かな。
常温核融合?
北のアサヒから
こういうものがありますが、どうなのでしょう。
【アルミニウム合金を使って水素を発生させる】http://gould.goga.co.jp/article/62227877.html
しかし、スタジオのバカ面連中はともかく、テレ東や日経の記者といえども、まともな人間はいるでしょう?
これは、日経が一枚噛んだ投資詐欺or株価吊上げ詐欺じゃないか?と勘ぐりたくなりますw
と思ってたら、GIGAZINEの追記によると、読売テレビ「ニューススクランブル」でも放送してるようですから、テレビの中の連中はとことんバカ揃いということでよいのかな?w
水+金属→金属酸化物(or水酸化物)+水素
これなら普通の反応です。典型的には苛性ソーダの生成とか。
そのリンク先のも、水+アルミ→酸化アルミ+水素 です。
今回ネタになってるトンデモは、水→酸素+水素 という反応で、これは全然質が違います。というか触媒があっても熱の変化自体は変わりません、触媒は反応に必要な障壁を下げるだけなので……。
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20080613/153278/
常温で水と反応する金属を使っているということになりました。
出だしがアレだったので、軌道修正なのかもしれませんが。
こんばんは。
[トンデモ]タグもたまにですが見に行きますよ。
ただ私のメインは生物化学系のトなので、どうしても守備範囲がずれますけど。
>lolさん
民主党ってこういうのに強いブレーンがいないんですかねえ。
なんか最近911とか新潟地震のトとか続いている気がします。
>たろ吉さん
>もっと効率を上げて活用して欲しいです
結局それがネックなんですよね。単位面積当たりのエネルギー変換効率もコストでも太陽電池のほうが上ですし。
>富月さん
YouTubeに動画が上がっていたのですが、そりゃひどいもんでした。
YouTube - ちょッwwwスゴい!水で走る車を発表!究極のエコカー
http://jp.youtube.com/watch?v=I5pREZd8KHk
YouTube - 水だけで走る電気自動車?・・・
http://jp.youtube.com/watch?v=qkmqjAl6d3s&feature=related
>とおりすがりさん
核エネルギーや質量エネルギーを個人レベルで扱える日なんて、私らの寿命が尽きるまでには到底実用化しそうにありませんね。
SFフリークとしては残念ですが。
>wktkさん
そのネタも現在エントリを準備中ですのでもう23日お待ちください。
このエントリみたいにサックリ切るものにはなりませんけどね。
>tentさん
zero さんのおっしゃるとおりです。
リンク先は金属を還元剤として用いて水素を得ている、普通の化学プロセスです。
>SMさん
いやまったく。YouTubeの動画を見て脱力しました。
>zeroさん
代わりに返答ありがとうございます。
>あああああさん
記事紹介ありがとうございます。
やはり軽金属か何かを還元剤として使うわけですか。
はっきり言ってサイトに上がっている説明やGIGAZINEのレポートの動画での説明は詐欺ですね。
>……水酸化した金属どうするんだろう。
軽金属じゃ再充電もできないから捨てるしかないかと。
バッテリーとしては鉛蓄電池以下の代物ですね。
……水酸化した金属どうするんだろう。
Posted by あああああ at 2008年06月13日 22:27
環境にやさしい天然素材酢で溶かしてエコロジーに回収するんじゃないですか?この会社に水じゃなく酢を使った方がいいよと誰か教えてあげればいいと思います(笑)
なるほどありがとう。
調子に乗ってもう少し聞かせてください。
触媒が反応に必要な障壁を下げるということは、
必要なエネルギーは変わらないということでしょうか。
水+触媒+エネルギー小→酸素+水素
酸素+水素→水+エネルギー大
このエネルギーの差分を得る、ということにはならないのですよね?
なるほどありがとう。
もしよければもうちょっとだけ教えてください。
触媒が反応に必要な障壁を下げるということは、
必要なエネルギーは変わらないということでしょうか。
水+触媒+エネルギー小→酸素+水素
酸素+水素→水+エネルギー大
このエネルギーの差分を得る、というのはできないのですか?
http://oxyride.jp/2007/top.html
私もこの話を聞いた時、一次電池を疑いました。
皆さん、考えることは同じようで。
#だって、簡単すぎるでしょ。
(本気で考えると奥が深かったりするけど、むしろ「考えが浅い」レベルでは自明じゃないのかなぁ)
水+触媒+エネルギーA→酸素+水素
酸素+水素→水+エネルギーB
とした時、エネルギーA>エネルギーBです。
あまり正確な例えとはいえないのですが、電気を使ってダムに水をくみ上げても、その水でモーターを回したときに得られる電気は最初に使った電気よりも必ず小さくなるようなものです。
>ぽ さん
>環境にやさしい天然素材酢で溶かしてエコロジーに回収するんじゃないですか?
リサイクル費用はかなり高そうです(笑)
>att460さん
>皆さん、考えることは同じようで。
ですね。
まあ他に考えようがなかったというのもありますが。
>Cruさん
下手すると理系の大学生ですら、エネルギー保存則のことを忘れている人間がそれなりにいますからね。
松浦さんが書いていたことですが、理系文系以前に「世界の理」に対する認識が甘いんじゃないかと。
>松浦晋也のL/D: 人の世の理とこの世の理
>http://smatsu.air-nifty.com/lbyd/2008/06/post_ca3c.html
> 理系文系をことさらに峻別するのは無意味なことだが、大きく分ければ理系とは「世界の理を知る」知識体系であり、文系は「人の世の理を知る」知識体系だ。人は社会を形成して生きているので、人の世を動かすのは文系の知識である。法学であったり経済学であったり会計学であったり——みな政治に密接に関係している。
>
> だから、かどうかは断言できないが、どうも政治や行政の関係者は「世界の理」を軽く見ているのではないか、と感じられることがある。実際には、世界の理は、人の世の理より強い。今日中に仕事が片づかないから太陽が沈むのを呼び戻す、平清盛のようなことはまず間違いなくできない。
>スパイラルドラゴンさん
過去の経験が伝承されていないんでしょう。
歴史に学ばぬ者は何度でも同じ歴史を繰り返します。
【続報】ジェネパックスが水素生成のメカニズムを明らかに。ポイントは金属または金属化合物の反応制御
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20080613/153278/
これって、。。。
ボルタ電池?
>●水から電気と熱を作り出す過程で、化石燃料を一切使用しません。
>●CO2の排出が一切ないため、環境への負荷もかけません。
>●世界が心から求めていたクリーンな電力で、地球環境保全に貢献します。
そういう技術はすでにあります:「水力発電」
っていうのはどうでしょう?(笑)
「水」に流れがないとはどこにも書いていないので,コップ一杯の水を水車にかけて水力発電すれば,この3つのどの条件にも当てはまっているように思います.「CO2の排出が一切ない」あたりが,それでも,厳密には微妙ですが.
完全に詐欺だけれど。しかし、エネルギーといえば太陽電池も少々胡散臭い。政府もエネルギー戦略等しっかり策定せず太陽電池に傾けばCO2や再生可能エネルギーは解決と鼓吹しているが太陽電池の効率の低さとコストパフォーマンスの悪さは特筆ぶり。具体的に効率の向上やコスト引き下げの道筋を示さなければ、太陽電池のドンという政治家を育てるだけで国民は何のメリットもない。いずれ太陽エネルギーだけで人類は生活しなければならないが、その道筋は未だ示されていない。そういう点では突然エネルギーが誕生する詐欺と五十歩歩か!
「ネットの世界では規制がきかないので水で走る自動車が開発されたことが知られている。
こんな大事なことをマスコミは伝えない」
とか言ってましたなぁ・・・
真に受けて「水で走る自動車」をネット検索した人がいたら、この作家さんは完全に信用を失うような気がします。
まぁ、真に受ける人はそもそも検索すらしないかもしれませんな(笑)
次のような反応を、常温に近い温度のもとで、
水 + 光エネルギー → 水素 + 酸素
このようなことを、もし実現すれば、これは世紀の大発明になるのだが。。。。
まあ、怪しい科学論(インターネットをみるといろいろありますね)の餌食にならないようにお互い注意しましょう。
水 + 光エネルギー → 水素 + 酸素
このようなことを、もし実現すれば、これは世紀の大発明になるのだが。。。。
太陽電池による水の電気分解?